壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

2023-01-01から1年間の記事一覧

明治日本散策  エミール・ギメ

明治日本散策 東京・日光 エミール・ギメ フェリックス・レガメ(挿絵) 岡村嘉子訳 角川ソフィア文庫 Kindle unlimited パリ国立東洋美術館(前身はギメ宗教博物館)の創始者であったエミール・ギメが、明治9年に日本を旅した際の紀行文の新訳が、手に入り…

ヘーゼルの密書  上田早夕里

ヘーゼルの密書 上田早夕里 光文社 電子書籍 著者の上海シリーズは、『夢みる葦笛』の中の「上海フランス租界祁斉路三二〇」、『破滅の王』に続く三作目です。SF的な要素はすっかり消えて、骨太の歴史小説になっています。満州事変、上海事変を経て日中戦争…

帝都一の下宿屋   三木笙子

帝都一の下宿屋 三木笙子 東京創元社 Kindle unlimited 初めての作家の見知らぬ本でしたが、表紙の雰囲気がいいので、読み放題でゲット。 明治時代後期なのだろうか、京橋川沿いの下宿屋〈静修館〉の大家は、年若いのに料理上手で世話好きの梨木桃介だ。桃介…

死体は笑みを招く   ネレ・ノイハウス

死体は笑みを招く ネレ・ノイハウス 酒寄進一訳 創元推理文庫 オリヴァー&ピア・シリーズの二作目。動物園で見つかった切断死体。被害者は高校教師で過激な環境活動家。彼は周囲の大人たちには疎まれていましたが、若者には人気がありました。相変わらず、…

エリザベスの友達  村田喜代子

エリザベスの友達 村田喜代子 新潮文庫 電子書籍 『蕨野行』が衝撃的でしたので、同作家の高齢者小説をもう一冊、続けて読みました。『蕨野行』とはうって変わって、老人ホームに暮らす現代の認知症の老人たちを描いた、ごく普通の小説ですが、やはり感動的…

蕨野行  村田喜代子

蕨野行 村田喜代子 文春文庫 電子書籍 読み終えて呆然とするほどのインパクトがありました。こういうすぐれた作品が電子書籍で読めるようになって、ありがたいことです。姥捨(棄老)伝承を題材にしていますが、倫理的に善悪を問うようなものではありません…

浮世女房洒落日記  木内昇

浮世女房洒落日記 木内昇 中公文庫 電子書籍 江戸の小間物屋のおかみさんが綴ったという日記を通して、庶民の生活が描かれています。四季折々の風物、行事しきたり、祭りなど、貧しいけれど楽しそうな長屋の暮らし。子育ての悩み、亭主への愚痴、近所の付き…

嘘と正典  小川哲

嘘と正典 小川哲 ハヤカワ文庫JA 電子書籍 作者の直木賞受賞作『地図と拳』が面白そうだけれど、まだ高いので、半額になっていた短編集を読んだ。いくつかはSF風ではあるが、それにとどまらない、バラエティのある六つの短編。父との関係を描いた家族小説と…

悪女は自殺しない  ネレ・ノイハウス

悪女は自殺しない ネレ・ノイハウス 酒寄進一訳 創元推理文庫 刑事オリヴァー&ピア・シリーズの第一作。気になっていたドイツミステリですが、読む順番が分からず手を出せないでいた9冊のシリーズでした。日本では第三作『深い疵』から翻訳出版されたために…

老ヴォールの惑星  小川一水

老ヴォールの惑星 小川一水 早川書房 Kindle unlimited 読み放題につられて初読みの作家のSFを読みました。ハードSFなのにわかりやすくて面白く、深みもありました。「ギャルナフカの迷宮」「老ヴォールの惑星」「幸せになる箱庭」「漂った男」の4編です。中…

少年/単独飛行  ロアルド・ダール

少年/単独飛行 ロアルド・ダール 永井淳 訳 早川書房 電子書籍 ロアルド・ダールの自伝を二冊。『少年』は長い間本棚にあったのだが、蔵書処分で手放している。『単独飛行』は未読だった。電子書籍がお手頃価格になっていたので、懐かしさで二冊とも手に入…

海洋プラスチック汚染  中嶋 亮太

海洋プラスチック汚染 中嶋 亮太 岩波科学ライブラリー Kindle unlimited プラスチックによる海洋汚染の問題については、断片的な知識しかなかった。深刻な環境問題だとは聞いていたが、その問題点と解決策について、改めて考えさせられた。著者はJAMSTECの…

キュレーターの殺人  M・W・クレイヴン

キュレーターの殺人 M・W・クレイヴン 東野 さやか訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 『ストーンサークルの殺人』『ブラックサマーの殺人』に続く三作目。二本の指が切断された事件が連続三件、前半は犯人の意図も何も分からず、右往左往してどこへ行くのか予想が…

歌うカタツムリ 千葉聡

歌うカタツムリ 進化とらせんの物語 千葉聡 岩波科学ライブラリー262 Kindle unlimited カタツムリを題材にした進化生物学の歴史がテーマですが,不思議なカタツムリの生態,進化学を推し進めてきた研究者たちの歴史という視点でまとめられた,面白い本です…

星の子  今村夏子

星の子 今村夏子 朝日文庫 Kindle unlimited ドーキンスの若い人向けの啓蒙書『神のいない世界の歩き方』で気になっていた宗教二世の問題。今村作品三冊目『星の子』は,両親が怪しげな宗教にはまってしまった女の子の物語です。語り手は終始この女の子,現…

月まで三キロ  伊予原 新

月まで三キロ 伊予原 新 新潮文庫 Kindle unlimited 静岡書店大賞受賞作だそうだ。コロナ前にリアル書店に平積みされていた本なので気になっていたが,いわゆる「いい話」らしく手を出しかねていた。読み放題で見つけたので読んだ。 「月まで三キロ」「星六…

どぶどろ  半村 良

どぶどろ 半村 良 扶桑社BOOKS文庫 Kindle unlimited 1970年代に書かれた時代小説ですが,宮部みゆきに「いつかこんな小説を書いてみたいと思いました」と言わしめ、また彼女の長編時代小説『ぼんくら』のヒントになったそうです。7編の連作短編と長編1編か…

後悔するイヌ、嘘をつくニワトリ ペーター・ヴォールレーベン

後悔するイヌ、嘘をつくニワトリ 動物たちは何を考えているのか? ペーター・ヴォールレーベン 本田雅也訳 ハヤカワ文庫NF 電子書籍 動物は好きだけれど自分では飼えないから,動物の写真や動画で癒されています。叱られてバツが悪そうな表情のイヌ,ガッカ…

宇宙衞生博覽會  筒井康隆

宇宙衞生博覽會 筒井康隆 新潮文庫 電子書籍 異星人とのファースト・コンタクトで思い出した筒井康隆の短編「最悪の接触(ワースト・コンタクト)」が含まれる8編からなる短編集『宇宙衞生博覽會』は,40年以上前に刊行されたとき,横井忠則のド派手なカバー…

プロジェクト・ヘイル・メアリー   アンディ・ウィアー

プロジェクト・ヘイル・メアリー(上・下) アンディ・ウィアー 小野田和子訳 早川書房 電子書籍 アンディ・ウィアーの三作目。面白かったので,映画化されたらぜひ見たい。 太陽エネルギーが指数関数的に減少して,地球があっという間に氷河期になるという…

春の庭  柴崎友香

春の庭 柴崎友香 文春文庫 電子書籍 『かわうそ堀怪談見習い』に惹かれて,著者の受賞作を読みました。恋愛でもなければ,ミステリでもホラーでもなく,ただただ日常の出来事を描写した物語ですが,話の推進力は写真集にある「水色の洋館風の建物」にあるの…

天災から日本史を読みなおす  磯田道史

天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災 磯田道史 中公新書 電子書籍 先日の台風は直撃を免れたけれど,大型で強いため日本の広い範囲に影響があった。台風の通り道であり,地震の巣の上に存在する日本は,この先どうなっていくのだろうと不安になる。個…

悔恨の日  コリン・デクスター

悔恨の日 コリン・デクスター 大庭忠夫訳 ハヤカワミステリ文庫 電子書籍 モース警部(Inspector Morse)シリーズの最終巻です。まさにモースの悔恨の日(The Remorseful Day)でした。 一年前のイヴォンヌ・ハリスン殺人事件は未解決のままでしたが,テムズ…

アルテミス  アンディ・ウィアー

アルテミス(上・下) アンディ・ウィアー 小野田和子訳 ハヤカワ文庫SF 電子書籍 『火星の人』の面白さにつられて、アンディ・ウィアーの第二作『アルテミス』を読んだ。(半額セールにもつられた。) 舞台は月面の都市アルテミスは、建設されて間もない。…

かかし長屋  半村良

かかし長屋 半村良 集英社文庫 電子書籍 善人長屋で思い出した本書。未読でした。 大川端にある「かかし長屋」は、証源寺の先代の住職が貧しい人を救済するために建てたものでした。「かかし」のように、毎日同じ着物を着ているというような貧乏人の吹き溜ま…

娘は娘  アガサ・クリスティー

娘は娘 アガサ・クリスティー 中村妙子訳 クリスティー文庫 電子書籍 メアリ・ウェストマコット名義の六冊のロマンス小説のうち、三冊目です。未読だと思っていたのにKindleのマイライブラリーに入っていて、読了となっていました。誰が読んだの? 私? 読み…

善人長屋  西條奈加

善人長屋 西條奈加 新潮文庫 Kindle unlimited 人情時代物は、疲れた頭を癒してくれます。読み放題なので、お財布も癒してくれます。 住人がみな裏稼業を持つ悪党たちという善人長屋に、根っからの善人である加助が住みつきました。困っている人を見ると助け…

恐怖の哲学  戸山田和久

恐怖の哲学 ホラーで人間を読む 戸田山 和久 NHK出版新書 Kindle unlimited 前回、怪談を読んでいて薦められた読み放題本なので、気楽に読み始めたのだが、迷路のように迷いに迷った。紙の本だと新書なのに異様に厚いという事が分かるので、読み始めに身…

中央線怪談  吉田悠軌

中央線怪談 吉田悠軌 竹書房怪談文庫 kindle unlimited 中央線階段じゃない中央線怪談。高齢者にとっては駅の階段もこわいけど。 実話系怪談を読んで以来、ホラー小説を電子本屋に薦められている。こちらに引っ越す前は中央線沿線住民だったので、読み放題だ…

未完の肖像  アガサ・クリスティー

未完の肖像 アガサ・クリスティー 中村妙子訳 クリスティー文庫 電子書籍 クリスティーの作品には、メアリ・ウェストマコット名義のロマンス小説が六冊あります。以前読んだ『春にして君を離れ』がとても面白かったので、半額セールで買っておいた本です。長…