2024-02-01から1ヶ月間の記事一覧
十三の物語 スティーヴン・ミルハウザー 柴田元幸訳 白水社 図書館本 読み逃していたミスハウザーの2008年の短編集。ミルハウザーを読むたびに、その濃密な世界に驚き、沼に足を取られて引きずり込まれる。奇想天外な幻想の世界を描き続けるという意味では“…
超動く家にて 宮内悠介 創元SF文庫 電子書籍 バカSFが好きな者にはたまらなく面白い。シリアスな作風の著者が、真面目に「超くだらない話」を書いたらしく、あとがきで盛んに言い訳をしているのが、またまた面白い。16編のバカ話・シリアス・癒し系がある…
何があってもおかしくない エリザベス・ストラウト 小川高義訳 早川書房 図書館本 『私の名前はルーシー・バートン』で、ルーシーと母親の会話の中に断片的に出てきた人々が、たくさん登場する。本作の導入として『ルーシー・バートン』が書かれたのかと思う…
水車小屋のネネ 津村記久子 毎日新聞出版 図書館本 一年間の毎日新聞連載だそうだ。でも、毎日毎日、新聞で読むなんて耐えられない。この先どうなるのだろうと知りたくて、待ちきれなくて、我慢しきれないだろうから。あまりの面白さに二日で読み、真夜中に…
コロナと潜水服 奥田英朗 光文社 図書館本 少しばかり癒されたいと奥田さんの短編五編を読んだ。ちょっとだけ不思議なことが起きて、心が上向きになり、日常が好転する。ふふっと笑えて、優しい気持ちになれたようだ。 家族との暮らしから逃げ出して、葉山に…
無名亭の夜 宮下遼 講談社 図書館本 トルコ文学の研究者であり、オルハン・パムクの翻訳者である宮下遼氏の小説2編。翻訳文の読みやすさに惹かれていたので、小説にも興味がわいた。 「無名亭の夜」 《現代の日本、薄暗い路地にある名もない酒場と、はるか昔…
桜ほうさら 宮部みゆき PHP研究所 図書館本 『きたきた捕物帖』の舞台となった富勘長屋には、以前に若いお侍さんが住んでいた…というのがこの話。順番が逆になってしまったが、それほど支障は無かった。居心地のいい長屋なのか、みんな長く住んでいる様子で…
無人島のふたり: 120日以上生きなくちゃ日記 山本文緒 新潮社 図書館本 読もうか読むまいか、長い間迷っていた本だが、移動図書館の棚で見つけてしまったのは、本読みの業か。山本文緒さんと同じ病で、15年前に夫を亡くしているので最期の様子は想像がつくが…
潜水鐘に乗って ルーシー・ウッド 木下淳子訳 東京創元社 図書館本 コーンウォールは神話や民間伝承の豊かなケルトの土地だそうだ。古代から棲む精霊や巨人、人魚などが、現代のコーンウォールの人々の日常生活と交差している。人々の物語は現実のリアルな感…
大仏ホテルの幽霊 カン・ファギル 小山内園子訳 白水社エクス・リブリス 図書館本 《韓国社会の〝恨〟を描くゴシックスリラー》だという。出版されたばかりだからネタバレなしでいきたい。 三部構成の枠部分(第一部)は、怨恨のようなものにとり憑かれて小…
本売る日々 青山文平 文藝春秋 図書館本 江戸時代、農村が豊かな時代なのだろう、村々を行商する平助が扱うのは、主に物之本と呼ばれる学術書や専門書だ。名主や在郷の商人や医家が得意先である。書物そのものが好きなのはもちろんだが、書物に知識を求めて…
ある行旅死亡人の物語 武田惇志, 伊藤亜衣 Audible 自宅アパートで亡くなったのに身元が分からない高齢女性は、3400万の現金とわずかばかりの身の回りのものを残していた。社会から身を隠しているような生活を40年も送っていたらしい。二人の記者が、印鑑の…
無花果の実のなるころに (お蔦さんの神楽坂日記) 西條奈加 Audible 西條さんの人気シリーズの一冊目をオーディオブックで楽しく聴きました。ナレーションが巧みでセリフの区別がつきやすく、アニメや吹替えドラマを見ているみたいです。ベテランの声優さんの…
田舎のポルシェ 篠田節子 文藝春秋 図書館本 田舎には住んでいるが軽トラをもっていないので、「田舎のポルシェ」の事は知らなかった。『ハヤブサ消防団』でスバル製の軽トラの型式をそう呼ぶのだと聞いた直後に、移動図書館の本棚で本書を見つけた。何かの…