2007-01-01から1年間の記事一覧
最後のウィネベーゴ コニー・ウィリス 大森望訳 河出書房新社奇想コレクション 2006年 1900円 コニー・ウィリスというアメリカのSF作家を最近まで知りませんでした。 「女王様でも」:女性の<解放>って、まあたしかにフェミニズム問題ですけれど、こんなに…
聖遺の天使 三雲岳斗 双葉社 2003年 1500円 短編集「旧宮殿にて」の前に書かれた長編です。 15世紀、北イタリア湖水地方に建つ城砦”沼の館”で、外壁に磔にされて死んだ館主。聖遺物と称される香炉は行方不明となった。聖遺物を手に入れようとするのはローマ…
M.G.H 楽園の鏡像 三雲岳斗 徳間書店 2000年 1600円 「旧宮殿にて」でミクモ熱に軽く感染したようです。宇宙ステーションという無重力空間で起こった墜落死ってなんて魅力的。まわりは真空という密室で、巨大回廊のような館もので、落下でmghというからには…
その名にちなんで ジョンパ・ラヒリ 小川高義訳 新潮クレストブックス 2004年 2200円 ラヒリの第二作目は、短編集「停電の夜に」最後の「三度目で最後の大陸」と同じようなテイストをもった長編です。 ゴーゴリという変わった名前を持つ男の子は、カルカッタ…
インドの衝撃 NHKスペシャル取材班 文藝春秋社 2007年 1800円 少し前にインドを旅行してきた友人が、インドのすごさを話してくれたことがあります。また最近になってゴーシュやラヒリというインド系作家たちの作品を読み、インドに興味をもちました。そうい…
クラバート プロイスラー 中村浩三訳 偕成社文庫1985年 上下各620円 年末掃除で外の物置に行って見つけてしまいました、子供たちがお気に入りだった、埃だらけの「クラバート」。埃を払ったついでに読みました。再読(再々読か)ですが、文句なく素晴らしい…
停電の夜に ジュンパ・ラヒリ 小川高義訳 新潮クレストブックス 2000年 1900円 歯で噛み砕いたキャラウェーシードの香りがずっと口中に残るような、豊かな味わいの余韻が残る九つの短編集です。素晴らしい作品ばかりで、感想が書けないので思い出すためのメ…
旧宮殿にて 15世紀末、ミラノ、レオナルドの愉悦 三雲岳斗 光文社 2005年 1500円 自分ではもう忘れてしまって年間ベストを作れないので、他力本願でブロガーさんたちの2007年ベストを拾い読みしようかと思いまして^^;)・。図書館で手に入る限りですが。 ま…
移動都市 フィリップ・リーヴ 安野玲訳 創元SF文庫 2006年 940円 少し新しいSFをと思い立ちました。移動する都市とギルドの見習いなんて、プリーストの「逆転世界」を想像したのですが、雰囲気は全く異なりました。スチームパンク(でいいのかな?)冒険ファ…
晩年のスタイル エドワード・W・サイード 大橋洋一訳 岩波書店 2007年 2200円 サイードの「オリエンタリズム」については、これまでに読んだ本の中で何度も引用されていましたので、図書館の新刊コーナーに並んでいた本書を読もうと、気軽に借りてきました。…
白夜行 東野圭吾 集英社文庫 2002年 1000円 1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂―暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、…
スカイラー通り19番地 E. L. カニグズバーグ 金原瑞人訳 岩波書店 2004年 2100円 久しぶりに帰ってきた娘と一緒に図書館に行きました。彼女が“懐かしい~”と借りてきたのがカニグズバーグの新しい訳本です。慌ただしく帰ってしまった娘に代わって私が読むこ…
シャドウ・ラインズ 語られなかったインド アミタヴ・ゴーシュ 井坂理穂訳 而立書房 2004年 2500円 カルカッタ、ロンドン、ダッカ。3つの都市・世代を引き裂き、結びあわせる歴史、暴力、沈黙、そして記憶…。印パ分離独立が残した南アジアの特殊な社会・政治…
万物理論 グレッグ・イーガン 山岸真訳 創元SF文庫 2004年(原作1995年)1200円 本が読めない状況が続き、持ち歩いた「万物理論」がすっかり手摺れてしまいました。図書館の本なのにゴメンナサイ。たぶん読めないとわかっていても、つい本を持ち歩いてしま…
誰のためのデザイン? 認知科学者のデザイン原論 D.A.ノーマン 野島久雄訳 新曜社 1990年 3300円 MITの博士でさえ戸惑う悪しきデザインの例,例,例…。日常の道具から巨大装置まで,使いにくく,ミスを生みやすいデザインが満ちあふれているのはなぜか。…
ガラスの宮殿 アミダヴ・ゴーシュ 小沢自然 小野正嗣 訳 新潮クレストブックス 2007年 3000円 図書館の新刊コーナーに並んでいたのを借りてきました。 「カルカッタ染色体」では、呪術も技術も両立するインドの懐の深さを書きたかったのかもしれませんが、ゴ…
武蔵野倶楽部 村松 友視 文藝春秋 2007年 1750円 図書館の新刊コーナーで見つけた本です。「時代屋の女房」くらいしか読んだ事がありませんが、長いこと住んでいた「武蔵野」にひっかかって読むことにしました。 吉祥寺、神楽坂、金沢、神戸、一ノ関、札幌――…
ナツメグの味 ジョン・コリア 垂野 創一郎 他 訳 河出書房新社 KAWADE MYSTERY 2007年 2000円 ナツメグの和名はニクズク。子どもの頃に読んだ「二人のロッテ」で、ルイーゼが母親のキッチンで料理をする場面に出てきた“ニクズク”が印象的でした。ずいぶんた…
ガリレオの指 現代科学を動かす10大理論 ピーター・アトキンス 斉藤 隆央訳、早川書房 2004年 2800円 本書の扉には、ガリレオの本物の指の写真があります。遺体から切り取られ現在 フィレンツェの科学史博物館に展示されているというその指は、科学研究が新…
水晶内制度 笙野頼子 新潮社 2003年 1700円 『原発を国家の中枢として、日本政府に黙殺された女達の、闇から生まれた女人国ウラミズモ。亡命作家は新国家のために出雲神話を書き変える』 今まで読んだ笙野作品は何だったのでしょうか。この強烈な物語は、女…
カルカッタ染色体 アミタヴ・ゴーシュ 伊藤真訳 DHC 2003年 1800円 「新刊を読みたい」という衝動がたまにやってきます。クレストブックスの最新刊アミタヴ・ゴーシュの「ガラスの宮殿」を探しに図書館に行きましたが未入荷のようで、「カルカッタ染色体」を…
ブランディングズ城の夏の稲妻 P.G.ウッドハウス 森村 たまき訳 国書刊行会2007年 2200円 去年のお正月にまとめて読んだジーヴスシリーズのウッドハウスには、ブランディングズ城シリーズがあって『ゆっくりした脳内にはブタとバラのことしかない、第9代エ…
ケンブリッジ・クインテット ジョン・L. キャスティ 藤原正彦・美子訳 新潮クレストブックス 1998年 1900円 「素数の音楽」に味をしめて、新潮クレストブックスのノンフィクションを探していて、それらしい本を図書館で見つけたものの、この本はフィクション…
アルネの遺品 ジークフリート・レンツ 松永美穂訳 新潮クレストブックス 2003年 1700円 「両親はぼくに、アルネの遺品を箱に詰めてくれないかと頼んだ。」 ハンスは、12歳のときにこの家に引き取られてきたアルネの遺品を整理しながら、一家心中のたった一…
笙野頼子三冠小説集 笙野頼子 河出文庫 2007年 680円 1994年 『タイムスリップ・コンビナート』 第111回芥川賞。 1994年 『二百回忌』 第7回三島由紀夫賞。 1991年 『なにもしてない』 第13回野間文芸新人賞。 この三つを詰め込んだ三色特盛弁当みたいな文庫…
七人のおば パット・マガー 大村美根子訳 創元推理文庫 1986年 800円 結婚し渡英したサリーの許へ届いた友人の手紙で、おばが夫を毒殺して自殺したことを知らされた。が、彼女にはおばが七人いるのに、肝心の名前が書いてなかった。サリーと夫のピーターは、…
記憶は嘘をつく ジョン・コートル 石山 鈴子訳 講談社 1997年 記憶や記憶喪失は、小説や映像作品の大きなテーマです。記憶に関する面白い本を探していましたが、大半は記憶術に関する本ですし、脳科学関連もちょっと違う。その中で見つけたのがこの本です。1…
言の葉の樹 アーシュラ・K・ル=グィン 小尾芙佐訳 ハヤカワ文庫SF 2002年 700円 ハイニッシュ・ユニバースの長編(最近刊)です。 遥かな昔、高度の文明を持った惑星ハインの人々は、銀河宇宙に進出しさまざまな惑星に植民地を形成しました。しかし、惑…
ロカノンの世界 アーシュラ・K・ル=グィン 小尾芙佐訳 ハヤカワ文庫SF 1989年 380円 1966年に書かれたハイニッシュ・ユニバーズシリーズの初長編、正統派古典的SFファンタジーです。それも萩尾望都の表紙ではないですか! 民俗学者G・ロカノンは、銀…
素数の音楽 マーカス・デュ・ソートイ 冨永 星訳 新潮クレストブックス 2005年 2400円 クレストブックスには珍しくノンフィクションでした。それも数学の数論史なのに、この分野に深い理解をもつ著者だからこそなのでしょう、非常に面白い本でした。 1900年…