壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

後悔するイヌ、嘘をつくニワトリ ペーター・ヴォールレーベン

後悔するイヌ、嘘をつくニワトリ 動物たちは何を考えているのか?  ペーター・ヴォールレーベン

本田雅也訳 ハヤカワ文庫NF 電子書籍 

動物は好きだけれど自分では飼えないから,動物の写真や動画で癒されています。叱られてバツが悪そうな表情のイヌ,ガッカリして落ち込んでいるイヌの後ろ姿が,SNSなどに上がっています。あの表情や姿を見て,人間が犬たちの感情に共感するというのは,単に擬人化なのでしょうか。それとも動物たちも人間と同じような感情をもっているのでしょうか。

 

著者であるペーター・ヴォールレーベンはドイツの森林管理官で,20年以上ドイツ南西部の森林での経験をもとにした『樹木たちの知られざる生活』はベストセラーになったそうです。本書は,森で出会う野生動物,飼育している動物たちとの交流をもとに,動物たちの感情や意識,もっと踏み込んで精神性や心について綴ったエッセイです。自分自身の体験だけでなくネットの記事も引用しながら,学問的な考察を交えています。たくさんの生き物たちの,興味深い行動を楽しみながら,学問的な知見も学べる本です。

 

動物行動学や行動生態学のような学問の方法では,過度な擬人化(人間が持っている意図や感情を動物に投影すること)が戒められています。また,商業的に動物を利用する人たちにとっては,動物の感情の存在を拒否するのも仕方のないことかもしれません。

しかし私たち読者は学者ではないので,動物が私たち人間と同じような感情を持っていると考えても,不都合ではありません。また,地球上の生物は食物連鎖で繋がっているという事実は否定のしようもありません。

地球という大きな生態系の中で共に生きる植物も動物も,互いに過剰に搾取することなく,節度と敬意をもって付き合っていきたいと思いました。