壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

2023-01-01から1年間の記事一覧

月と日の后  沖方 丁

月と日の后 沖方 丁 PHP研究所 図書館本 移動図書館の棚で見つけた本。平安時代、藤原道長の娘として12歳で入内した彰子の、史実に沿った成長物語です。紫式部の登場はわずかですが、来年の大河ドラマの予習にピッタリじゃないですか。 父・道長に云われるま…

ラストマイル  デイヴィッド・バルダッチ

完全記憶探偵 エイモス・デッカー ラストマイル 上/下 デイヴィッド・バルダッチ 関麻衣子訳 竹書房文庫 Kindle unlimited 完全記憶探偵エイモス・デッカーの二作目。脳障害により完全記憶を持ったエイモス・デッカーは、第一作目で自身の家族を殺害された…

自転しながら公転する  山本文緒

自転しながら公転する 山本文緒 新潮文庫 Kindle unlimited 三十代前後の女性にとって、人生の選択の時期でもあり、仕事/恋愛/結婚/家事/育児と目の回るような時期です。それを「自転しながら公転する」というのは、言い得て妙です。私にとってはもう大…

穢れた風  ネレ・ノイハウス

穢れた風 ネレ・ノイハウス 酒寄進一訳 創元推理文庫 月一回、オリヴァー&ピア・シリーズの5冊目は、風力発電に絡んだ利権争いを背景に起きた殺人事件。ドイツでは、海岸地方や洋上の風力発電が主力なのでしょう、本書の舞台のような内陸の山地にタービンを…

クララとお日さま  カズオ・イシグロ

クララとお日さま カズオ・イシグロ 土屋政雄訳 早川書房 図書館本 移動図書館の本棚で見つけた。出版から二年近くたって、ようやく読むチャンスができた。その間、《ノーベル文学賞 受賞第一作 カズオ・イシグロ最新作、2021年3月2日(火)世界同時発売! AIロ…

さよならの儀式  宮部みゆき

さよならの儀式 宮部みゆき 河出書房新社 図書館本 表紙に8 Science Fictions Stories とあります。宮部みゆきのSF短編集。SFとはいえハードなものではなく、どこかで出会った懐かしい感じの、(S)少し(F)不思議な物語でした。人の心の奥底を書いているの…

四人組がいた。  髙村 薫

四人組がいた。 髙村 薫 文藝春秋 図書館本 髙村さんの本を久しく読んでいなかった。寡作で、図書館の予約でいっぱいの人気の新刊は借りる気になれず電子化もされていない。この頃は、遠い図書館に行くのが億劫になっている。だから今世紀に入ってからは全く…

無貌の神   恒川光太郎

無貌の神 恒川光太郎 角川文庫 Kindle unlimited 読み放題で見つけた、バラエティに富んだ六編の短編集。恒川さんの短編は、確かな語り口が読者を一気にその世界に引き込みます。映像が湧き上がってくるような筆致です。〈捕われたもの〉という一貫したテー…

青い壷  有吉佐和子

青い壷 有吉佐和子 文春文庫 電子書籍 50年近く前に書かれた小説なのに、なぜかとても面白い。ドラマ「大奥」→「皇女和宮」→「有吉佐和子」という連想でセール中の本書を読み始めたのだが、復刊後にベストセラー本になったというネット記事が出ていた。さも…

地下鉄道  コルソン・ホワイトヘッド

地下鉄道 コルソン・ホワイトヘッド 谷崎由依訳 ハヤカワepi文庫 電子書籍 南北戦争の少し前、ジョージアの農園で生まれた黒人少女コーラは、北部への逃亡を決めました。サウスカロライナ、ノースカロライナ、テネシー、インディアナを通り、自由州である北…

完全記憶探偵  デイヴィッド・バルダッチ

完全記憶探偵 デイヴィッド・バルダッチ 関麻衣子訳 竹書房文庫 上下合本版 Kindle unlimited 『火星の人類学者』では驚異的な記憶力を持つ人々が取り上げられていました。そのような超記憶症候群の探偵が主人公のアメリカンミステリーです。ドラマを見てい…

火星の人類学者  オリヴァー・サックス

火星の人類学者 --脳神経科医と7人の奇妙な患者-- オリヴァー・サックス 吉田利子訳 ハヤカワ文庫NF 電子書籍 人生の終わりに近づき、何回目かの蔵書整理をしています。残り少ない紙の本に決別し、どうしても捨てられない本だけ電子書籍に買い直そうかとも考…

心淋し川  西條奈加

心淋し川 西條奈加 集英社文庫 電子書籍 連作短編の時代小説。5編の短編と1編の中編という構成だ。読み終えて半村良の『どぶどろ』を連想した。5編の短編では、古びた貧しい長屋に住む人たちの暮らしを描いている。独立した短編としても成立する。最後の中編…

白雪姫には死んでもらう  ネレ・ノイハウス

白雪姫には死んでもらう ネレ・ノイハウス 酒寄進一訳 創元推理文庫 ドイツミステリ、オリヴァー&ピア・シリーズの四作目は、さらに厚くなって文庫本570頁。題名もキャッチ―だが、これは原題Schneewittchen muss sterbenに近い。 11年前の少女連続行方不明…

飛族  村田喜代子

飛族 村田喜代子 文春文庫 電子書籍 『蕨野行』でも『エリザベスの友達』でもそうだったが、村田さんの描く婆さんたちの魅力的なこと! 生死の境を軽々と乗り越えて、身体は動かなくなりつつも、海と空を自由に羽ばたくような精神を持っている。面白くて、わ…

脳はなにを見ているのか   藤田 一郎

脳はなにを見ているのか 藤田 一郎 角川ソフィア文庫 電子書籍 15年ほど前に書かれた本だがわかりやすい(六割引きで安かった)。目で見たものが脳で処理されて、初めて「見えた」と知覚する。カメラに写し取られた映像とは異なり、私たちが「見ている」映像…

百年と一日  柴崎友香

百年と一日 柴崎友香 筑摩書房 電子書籍 不思議なのか、普通なのか、どちらなんだろう・・・という事はやはり不思議なのだろうか、30余りの短編集。すべてのタイトルがとても長い。第一話は「一年一組一番と二組一番は、長雨の夏に渡り廊下のそばの植え込み…

叔母との旅  グレアム・グリーン

叔母との旅 グレアム・グリーン 小倉多加志訳 早川書房 グレアム・グリーン全集22 電子書籍 前回読んだ『ベルリンは晴れているか』からの連想でたどり着いたグレアム・グリーン。前世紀にずいぶん流行ったらしく、全集が出ていた。電子化されていて、気楽に…

ベルリンは晴れているか  深緑野分

ベルリンは晴れているか 深緑野分 ちくま文庫 電子書籍 4国分割統治下のベルリン。ドイツ人の娘17歳のアウグステは、米軍憲兵に突然連行され、ソ連管轄下の警察に連れていかれた。遺体検分させられたのは、アウグステの恩人ともいえる男性だった。歯磨き粉に…

哀惜  アン・クリーヴス

哀惜 アン・クリーヴス ハヤカワ・ミステリ文庫 電子書籍 アン・クリーヴスの新シリーズ第一作。アン・クリーヴスの小説は初読みですが、ドラマ化された作品「ヴェラ・スタンポープ」シリーズを現在視聴中です。荒野の続くノーサンバーランドを舞台にしたド…

薬屋のひとりごと  日向夏

薬屋のひとりごと 1/2/3 日向夏 ヒーロー文庫 Kindle unlimited 夜中に目が覚めて、眠れないままテレビを付けた。半分寝ぼけながら見たアニメが面白そうだったので原作を探した。ヒーロー文庫というレーベルを初めて知った。14巻もある人気のライトノベ…

佇む人  筒井康隆

佇む人 リリカル短篇集 筒井康隆 角川文庫 電子書籍 リリカルと銘打っているだけに、筒井毒が薄目な短編が20。奇妙な設定の中で情感があふれる表題作の「佇む人」、「母子像」は、切ないまでの家族愛を描いている。数十年ぶりに読み返してみると、より一層胸…

みちくさ道中  木内昇

みちくさ道中 木内昇 集英社文庫 電子書籍 初のエッセイ集だそうです。身辺雑記の中にも自分の生き方、小説に対する姿勢などが盛り込まれていて、一本筋の通った人柄が感じられました。若い時は超体育系だったとか、どちらかというとオトコマエな感じで、子…

黄金蝶を追って  相川英輔

黄金蝶を追って 相川英輔 竹書房文庫 kindle unlimited kindle unlimitedで、初読み作家の短編集。日々の暮らしの中に紛れ込んでくる不思議な事に戸惑ううちにいつの間にかそれを受け入れる。そして、自分が抱えていた心の疵をそっと手放して、癒されていく……

人はどう老いるのか  久坂部洋

人はどう老いるのか 久坂部洋 講談社現代新書 電子書籍 老いの真っただ中にいる私。「上手に楽に老いている人」と「下手に苦しく老いている人」がいるといううたい文句を見て、読んでみました。ざっくりまとめると…… ・老人の場合、身体の重症度と心の幸福度…

火星のオデッセイ/夢の谷  スタンリー・G・ワインボウム

火星のオデッセイ スタンリー・G・ワインボウム 大山優訳 グーテンベルグ21 電子書籍 夢の谷 スタンリイ・G・ワインバウム 奥増夫訳 青空文庫 私的火星シリーズでSFを読んでいます。ワインボウムの二作品は1934年に出版された短編SFです。ワインボウム自身…

深い疵  ネレ・ノイハウス

深い疵 ネレ・ノイハウス 酒寄進一訳 創元推理文庫 ドイツミステリ、オリヴァー&ピア・シリーズの三作目は、文庫本500頁越えの大作です。オリヴァーとピアをはじめ警察のメンバーとは顔なじみになったのですが、相変わらず登場人物の多さとなじみのない人名…

家康、江戸を建てる  門井慶喜

家康、江戸を建てる 門井慶喜 祥伝社 電子書籍 「どうする家康」というドラマを見た。史実に忠実でないという批判があるようだが、どうせフィクションなんだから、史実から乖離していてもいいじゃなの。 ドラマの方は、江戸に国替えをされた家康が利根川の治…

火定 澤田瞳子

火定 澤田瞳子 PHP文芸文庫 電子書籍 天平九年の天然痘流行を描いたパンデミック小説。(コロナ禍で話題になり購入したのに、読み忘れていた。) 施薬院と悲田院を舞台に、疫病の蔓延を食い止めようと力を尽くす人々を中心に描かれている。しかし貧しい民を…

火星年代記  レイ・ブラッドベリ

火星年代記〔新版〕 レイ・ブラッドベリ 小笠原豊樹訳 ハヤカワ文庫SF 電子書籍 私的火星シリーズでSFを読むにあたって、欠かせないのが『火星年代記』です。1950年に出版されていますが、私が読んだのは1960年代でした。中学生の頃か……あまりにも大昔の事な…