壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

読書

コリーニ事件  フェルディナント・フォン・シーラッハ

コリーニ事件 フェルディナント・フォン・シーラッハ 創元推理文庫 電子書籍 短編集を二冊読んで,やっとシーラッハの第三作『コリーニ事件』にたどり着いた。長さから言えば長編というより中編だが,中身がずっしりと重い大作だった。 新米弁護士のライネン…

居場所もなかった  笙野頼子

居場所もなかった 笙野頼子 講談社文庫 電子書籍 10年以上も前に笙野頼子の作品を何冊かまとめて読んだことがある。自分自身の居場所のなさ・寄る辺なさを私小説風の妄想を駆使して描く『なにもしていない』(1991年),『東京妖怪浮遊』(1998年),『S倉迷…

椿宿の辺りに  梨木果歩

椿宿の辺りに 梨木果歩 朝日新聞出版 電子書籍 未読である『f植物園の巣穴』の後日譚だという事は承知していたが,とりあえず読んだ。 現代人の異界の冒険譚といえばいいだろうか。冒険とはいっても大冒険ではなく,ちょっとした旅なのだが。化粧品会社の研…

罪悪  フェルディナント・フォン・シーラッハ

罪悪 フェルディナント・フォン・シーラッハ 酒寄進一訳 創元推理文庫 電子書籍 第一短編集『犯罪』に続く短編集。『犯罪』は罪を犯さざるを得なかった被告人たちの哀しみが描かれた感動作が多かったが,同じようなものを求めていた第二短編集への予想は見事…

コンビニ人間  村田沙耶香

コンビニ人間 村田沙耶香 文春文庫 大活字本(埼玉福祉会)図書館本 もう何年も読もうと思っていた本をやっと読んだ。受賞後の図書館予約の長い列に並ぶ気になれずに忘れていたが,読みやすい大活字本を見つけ一晩で読み終えた。予想以上に面白かった。面白…

日曜日たち  吉田修一

日曜日たち 吉田修一 講談社文庫 大活字本(埼玉福祉会)図書館本 図書館で「大活字本」を借りた。なかなか快適。老眼が進んで文庫本を読むのがつらくなったが,電子書籍は図書館で借りられないので書籍費がかさむし,活字は大きくできるがKindle端末は画面…

グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行  高野 史緒

グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行 高野 史緒 Kindle Single 紙の本に換算すると50頁ぐらいの短い電子書籍です。正味30分くらいで読める。 女子高生の夏紀が,子供の頃に母の故郷土浦で巨大な飛行船を見たというかすかな記憶をたどって,物理学者の卵になって…

夜来たる  アイザック・アシモフ

夜来たる アイザック・アシモフ グーテンベルク21 電子書籍 アシモフの初期短編集で3編の短い作品が入っていました。長編を読む気力の無い時には100頁ばかりの300円弱の本だと読み始める気になります。でも,読み終わってちょっと短すぎて物足りないという我…

愛の探偵たち アガサ・クリスティー

愛の探偵たち アガサ・クリスティー 宇佐川晶子訳 ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 電子書籍 最近の長いミステリ小説を持て余して,古めかしいミステリ短編を読み始めました。マープル,ポアロ,クィンたちの8つの短編集です。未読の短編のはずでしたが,クリ…

テムズ川の娘  ダイアン・セッターフィールド

テムズ川の娘 ダイアン・セッターフィールド 高橋尚子訳 小学館文庫 電子書籍 19世紀のイギリス,テムズ川で仮死状態で見つかった少女の身元をめぐる人々の物語。その少女は裕福な実業家の行方不明の娘なのか,複雑な出自の黒人農園主の孫なのか,牧師館の家…

夜の声  スティーヴン・ミルハウザー

夜の声 スティーヴン・ミルハウザー 柴田元幸 訳 白水社 図書館本 『ホーム・ラン』に続く短編集。8つの作品はどれも「ミルハウザー」としか言いようがない。図書館の返却期限が今日までなので急いで読んだことが残念。メモだけ取っておこう。 「ラプンツェ…

憂鬱な10か月  イアン・マキューアン

憂鬱な10か月 イアン・マキューアン 新潮クレストブックス 電子書籍 妊婦さんにはお勧めできません(笑)。胎児が饒舌に語り尽くす,母親と愛人による父親殺し。 扉のエピグラフにハムレットからの引用があるので,なるほどとは思う。母親の愛人が父親の弟,…

メイドの手帖 ステファニー・ランド

メイドの手帖 ステファニー・ランド 村井理子訳 双葉社 図書館本 シングルマザーとして貧困の中で幼い娘を育てたステファニー・ランドの手記。高等教育を受けられないままシングルマザーになり,28歳で母娘はホームレスシェルターで暮らした。そこから抜け出…

原野の館  ダフネ・デュ・モーリア

原野の館 ダフネ・デュ・モーリア 務台夏子訳 創元推理文庫 電子書籍 デュ・モーリアの初期の長編で今年,新訳版がでました。かつては『埋もれた青春』という題で邦訳され,ヒッチコックの『巌窟の野獣』として映画化された作品だそうです。 母を亡くして身…

たまさか人形堂それから  津原泰水

たまさか人形堂それから 津原泰水 文春文庫 電子書籍 前作『たまさか人形堂物語』はバラエティに富んだ連作短編でしたが,本作は長編ともいえるような短編集です。前作にあった毒は消されてすっかりほのぼのしてしまいました。現実を踏み越えるのかという筋…

そして私は一人になった  山本文緒

そして私は一人になった 山本文緒 角川文庫 電子書籍 『自転しながら公転する』は図書館の予約が満杯でしたので,文庫本になったら購入しようかと思っていたところで先月に訃報に接し,昨年NHKの朝の番組での元気なお姿を思い出しながら,いつか読もうと気に…

火星の砂  アーサー・C・クラーク

火星の砂 アーサー・C・クラーク 平井イサク訳 早川書房 電子書籍 『火星○○』三冊目です。火星から戻ってこられません。昨今は火星探査で米中が競争していて,どこの国が一番早く火星の岩石サンプルを持ちかえるのでしょうか。かつてはSFでのみ到達可能であ…

火星人ゴーホーム  フレドリック・ブラウン

火星人ゴーホーム フレドリック・ブラウン 稲葉 明雄訳 グーテンベルク21 電子書籍 火星のプリンセスを読んだついでに,もう一つ火星物。70年前に書かれたドタバタブラックコメディ風のSFですから古めかしい所はあるのですが,現代的な解釈をするとコロナで…

火星のプリンセス  エドガー・ライス・バローズ

火星のプリンセス エドガー・ライス・バローズ 厚木淳 訳 創元SF文庫 電子書籍 100年以上も前に書かれたスペース・オペラの原点といわれるSF小説です。初版が1917年ですが,日本で翻訳出版されたのは1965年でした。その時中学生だった私はこのシリーズの文庫…

ベイカー街の女たち ミセス・ハドスンとメアリー・ワトスンの事件簿1  ミシェル・バークビイ

ベイカー街の女たち ミセス・ハドスンとメアリー・ワトスンの事件簿1 ミシェル・バークビイ 駒月雅子 訳 角川文庫 電子書籍 世の中にシャーロック・ホームズのパスティーシュはたくさんあります。小説に限らず,映画やドラマも数多く見ました。その中でも本…

くらしのための料理学  土井正晴

くらしのための料理学 土井正晴 学びのきほん NHK出版 電子書籍 家族のための料理を何十年も作ってきたが,人生の最後に自分のためだけの料理をすることになった。いつまで作れるかどうかはわからないが,ひとりの食事は気楽でいい。しかし,毎日毎日自分1人…

恐怖  筒井康隆

恐怖 筒井康隆 文春文庫 電子書籍 2001年頃の作品で,未読かと思い読み始めたが残念ながら既読だった。文化人たちが住んでいる閑静な住宅街の連続殺人事件。殺人事件の第一発見者の小説家村田勘市は相当なビビリらしく,自分が狙われているのではと妄想が妄…

犯罪  フェルディナント・フォン・シーラッハ

犯罪 フェルディナント・フォン・シーラッハ 酒寄進一訳 創元推理文庫 電子書籍 現役の刑事弁護士が書いたミステリとして話題になったときに読み逃していた以来。物語の語りと筋運びが独特で,事実を淡々と報告しているように見えるが,罪を犯した,いや犯さ…

じじばばのるつぼ  群ようこ

じじばばのるつぼ 群ようこ 新潮社 図書館本 還暦を過ぎもう少しで高齢者の仲間入りをするという筆者が,自戒を込めて,街中の老人たちの困った生態を描く爆笑エッセイらしい。笑えなかったのは,私が70の老人だからなのだろう。たしかに迷惑行為をする老人…

恥ずかしい料理  梶谷いこ

恥ずかしい料理 梶谷いこ 平野愛 写真 誠光社 図書館本 吉本ばななの『キッチン』に自己流の料理とプロの料理はどこが違うのかという話が出てきて,料理の本を探していてこの本に行き当たった。元祖「恥ずかしい料理」といえば美味しんぼだけど,ああいう貧…

キッチン  吉本ばなな

キッチン 吉本ばなな 幻冬舎 電子書籍 30年以上前の作品を初めて読みました。時代を超えて読まれている作品だという事がよくわかります。大切な人を失った時の気持ちと,それが少しずつ癒されていく過程には,個人的な体験としては人それぞれだけれど,万人…

マン島の黄金  アガサ・クリスティー

マン島の黄金 アガサ・クリスティー 中村妙子 他 訳 ハヤカワ クリスティー文庫 電子書籍 未読のクリスティ作品を拾って読んでいるつもりですが,ドラマで見たのもあって,どれが既読なのか自分でも不明です。この短編集は,単行本に収められなかった短編を…

鹿の王 水底の橋 上橋菜穂子

鹿の王 水底の橋 上橋菜穂子 角川文庫 電子書籍 鹿の王の上下巻を読んだのは,読書メーターの記録によればもう6年以上前でした。内容をすっかり忘れていました。読書メーターにしか記録していませんでした。 それによれば, 「ファンタジーというより、重厚…

世界が終わるわけではなく ケイト・アトキンソン

世界が終わるわけではなく ケイト・アトキンソン 東京創元社 海外文学セレクション 電子書籍 ケイト・アトキンソンの短編集は,12編が独立した短編かというと,そうではない。でも連作短編かというと,どうなんだろう,テイストのかなり異なる作品が詰め込ま…

およね平吉時穴道行  半村良

およね平吉時穴道行 半村良 角川文庫 電子書籍 半村良の『産霊山秘録』を再読するつもりだったが,伝奇長編小説に向かう体力がなくてこの短編集にしてみた。半村良の初期短編集だそうだ。表題作の「およね平吉時穴道行」は,たぶん,50年くらい前の当時の「S…