壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

読書

おいしいご飯が食べられますように 高瀬隼子

おいしいご飯が食べられますように 高瀬隼子 講談社 Audible 二回目のお試し期間で聴いたオーディオブックです。ありふれて見えた人間関係が実にスリリングでした。小さな営業所の会社員たちの食事事情は「サラメシ」風ですが、お仕事小説ともグルメ小説とも…

シャーロック・ホームズの建築 北原尚彦

シャーロック・ホームズの建築 北原尚彦 文 村山隆司 絵・図 エクスナレッジ 図書館本 シャーロック・ホームズの正典に登場する建築の間取り図が17載っている。ホームズのミステリに出てきた密室で覚えているのは、『まだらの紐』と『恐怖の谷』くらいだと思…

対岸の彼女  角田光代

対岸の彼女 角田光代 文藝春秋 電子書籍&オーディオブック 先月、角田光代氏の講演会を聴きに行った。著書を一冊しか読んでいないことに思い至り、講演の前にと、とりあえず直木賞受賞作を選んだ。お試しのAudibleで聴いていたが、ナレーターの読みが上手で…

香子(三) 帚木蓬生

香子(三) 帚木蓬生 PHP研究所 図書館本 香子(二)に続けて、500頁にまた一週間かかった。 香子(紫式部)の物語は、中宮彰子への御進講を依頼され、彰子が皇子を出産して道長が権勢を振るい始めるころまでが描かれている。紫式部日記の内容も盛り込まれて…

わたしの美しい庭   凪良ゆう

わたしの美しい庭 凪良ゆう ポプラ社 図書館電子書籍 図書館の電子書籍は未だコンテンツが少ないので、とりあえず借りられる小説を予約しておいたのが、回ってきた。初読みの作家。 マンションの屋上にある「御太刀神社」には、悪縁を断ち切るという御利益が…

香子(二) 帚木蓬生

香子(二) 帚木蓬生 PHP研究所 図書館本 香子(一)に続けて、内容の濃い500頁に一週間かかった。 香子(紫式部)の結婚と出産、父母の帰京、祖母の死、夫宣孝の死、中宮への出仕と変化していく時に、源氏物語のどの部分が書かれていったのかがわかるように…

わたしはイモムシ  桃山鈴子

わたしはイモムシ 桃山鈴子 工作舎 図鑑カフェの本 いつも行く博物館の図鑑カフェで見つけた! イモムシの体表の展開図が素晴らしい。解剖図ではない。写真や写生では同時に見る事の出来ない背側の模様と腹側の腹脚が続けて一枚に、精密な点描で描かれている…

香子(一) 紫式部物語  帚木蓬生

香子 紫式部物語 帚木蓬生 PHP研究所 図書館本 香子(かおるこ:紫式部)の『源氏物語』のメイキングともいえる作品だった。式部は如何にして源氏物語を書き上げていったのか。香子の視線で語られる紫式部の生い立ちと、香子が書く『源氏物語』が作中作のよ…

図書館に通う 当世「公立無料貸本屋」事情  宮田昇

図書館に通う 当世「公立無料貸本屋」事情 宮田昇 みすず書房 図書館本 月二回の移動図書館の日を何よりの楽しみにしている高齢者には、耳の痛い副題です。 著者の宮田氏は編集者・翻訳権エージェントとして長く働いていた方です。出版界の裏表の事情と、リ…

ナウシカ考  赤坂憲雄

ナウシカ考 風の谷の黙示録 赤坂憲雄 岩波書店 図書館本 『ナウシカ考』という「ナウシカ愛」がたっぷり詰まっていた。歌舞伎『風の谷のナウシカ』が上演されたころだったか、民俗学者の赤坂氏の力作として本書も評判になっていたのは覚えている。思い立って…

舟を編む   三浦しおん

舟を編む 三浦しおん 光文社 電子書籍 再読。NHKBSで放送中のドラマを見て、こんなエピソードあったかな?と、10年以上前の記憶を確かめた。出版社の辞書編纂部門の話だが、ドラマは原作の後半部分から始まっていた。そういえば映画もあった。原作は読みやす…

この本を盗む者は  深緑野分

この本を盗む者は 深緑野分 角川文庫 図書館電子書籍 出来たばかりの電子図書館で見つけて慌てて借りた本。『ベルリンは晴れているか』とは、作風が全く違うので読み始めは戸惑った。二十万冊を超える個人図書館を所有する一族に生まれたゆえに、本が嫌いな…

マーロー殺人クラブ  ロバート・ソログッド

マーロー殺人クラブ ロバート・ソログッド 高山祥子訳 アストラハウス 図書館本 英国コージーミステリでは、探偵が老婦人であることが定番なのだ。テムズ河畔のマーローに住む77歳のジュディスは、頭脳も体力もなかなかのもの。ある夜、自宅前のテムズ川で泳…

わたしはわたしで  東山彰良

わたしはわたしで 東山彰良 書肆侃侃房 図書館本 6編の短編集です。辛い人生とどう向き合うのか、重い選択を迫られる話も、巧みな語りに乗せられて面白く読みました。『流』の後日談があるというので、『流』を先に読んでおきました。 「I love you Debby」…

流  東山彰良

流 東山彰良 講談社文庫 電子書籍 著者の最新刊を図書館で借りたのだが、本書『流』を購入したまま読んでいないことに思い当たった。10年近く前の直木賞受賞作で評判になった当時から、読みたいと思っていた本なのに、Kindleの中に隠れていてすっかり忘れて…

片をつける   越智月子

片をつける 越智月子 ポプラ社 図書館本 隣に住む老婆の部屋の片付けをすることになったアラフォー女性の話。図書館でずいぶん前に予約した本だが、なぜ読みたかったのか覚えていない。たぶん、「老婆/片付け」が気になったのだろう。ライトなので、一日で…

隠居おてだま  西條奈加

隠居おてだま 西條奈加 角川書店 図書館電子書籍 図書館で初めて借りた電子書籍は、『隠居すごろく』の続編です。『すごろく』では、還暦を期に隠居したはずの徳兵衛の第二の人生は、充実したものになりました。徳兵衛が手助けした子供たちやその家族の幸せ…

十三の物語 スティーヴン・ミルハウザー

十三の物語 スティーヴン・ミルハウザー 柴田元幸訳 白水社 図書館本 読み逃していたミスハウザーの2008年の短編集。ミルハウザーを読むたびに、その濃密な世界に驚き、沼に足を取られて引きずり込まれる。奇想天外な幻想の世界を描き続けるという意味では“…

超動く家にて   宮内悠介

超動く家にて 宮内悠介 創元SF文庫 電子書籍 バカSFが好きな者にはたまらなく面白い。シリアスな作風の著者が、真面目に「超くだらない話」を書いたらしく、あとがきで盛んに言い訳をしているのが、またまた面白い。16編のバカ話・シリアス・癒し系がある…

何があってもおかしくない  エリザベス・ストラウト

何があってもおかしくない エリザベス・ストラウト 小川高義訳 早川書房 図書館本 『私の名前はルーシー・バートン』で、ルーシーと母親の会話の中に断片的に出てきた人々が、たくさん登場する。本作の導入として『ルーシー・バートン』が書かれたのかと思う…

水車小屋のネネ  津村記久子

水車小屋のネネ 津村記久子 毎日新聞出版 図書館本 一年間の毎日新聞連載だそうだ。でも、毎日毎日、新聞で読むなんて耐えられない。この先どうなるのだろうと知りたくて、待ちきれなくて、我慢しきれないだろうから。あまりの面白さに二日で読み、真夜中に…

コロナと潜水服  奥田英朗

コロナと潜水服 奥田英朗 光文社 図書館本 少しばかり癒されたいと奥田さんの短編五編を読んだ。ちょっとだけ不思議なことが起きて、心が上向きになり、日常が好転する。ふふっと笑えて、優しい気持ちになれたようだ。 家族との暮らしから逃げ出して、葉山に…

無名亭の夜  宮下遼

無名亭の夜 宮下遼 講談社 図書館本 トルコ文学の研究者であり、オルハン・パムクの翻訳者である宮下遼氏の小説2編。翻訳文の読みやすさに惹かれていたので、小説にも興味がわいた。 「無名亭の夜」 《現代の日本、薄暗い路地にある名もない酒場と、はるか昔…

桜ほうさら  宮部みゆき

桜ほうさら 宮部みゆき PHP研究所 図書館本 『きたきた捕物帖』の舞台となった富勘長屋には、以前に若いお侍さんが住んでいた…というのがこの話。順番が逆になってしまったが、それほど支障は無かった。居心地のいい長屋なのか、みんな長く住んでいる様子で…

無人島のふたり  山本文緒

無人島のふたり: 120日以上生きなくちゃ日記 山本文緒 新潮社 図書館本 読もうか読むまいか、長い間迷っていた本だが、移動図書館の棚で見つけてしまったのは、本読みの業か。山本文緒さんと同じ病で、15年前に夫を亡くしているので最期の様子は想像がつくが…

潜水鐘に乗って  ルーシー・ウッド

潜水鐘に乗って ルーシー・ウッド 木下淳子訳 東京創元社 図書館本 コーンウォールは神話や民間伝承の豊かなケルトの土地だそうだ。古代から棲む精霊や巨人、人魚などが、現代のコーンウォールの人々の日常生活と交差している。人々の物語は現実のリアルな感…

大仏ホテルの幽霊  カン・ファギル

大仏ホテルの幽霊 カン・ファギル 小山内園子訳 白水社エクス・リブリス 図書館本 《韓国社会の〝恨〟を描くゴシックスリラー》だという。出版されたばかりだからネタバレなしでいきたい。 三部構成の枠部分(第一部)は、怨恨のようなものにとり憑かれて小…

本売る日々   青山文平

本売る日々 青山文平 文藝春秋 図書館本 江戸時代、農村が豊かな時代なのだろう、村々を行商する平助が扱うのは、主に物之本と呼ばれる学術書や専門書だ。名主や在郷の商人や医家が得意先である。書物そのものが好きなのはもちろんだが、書物に知識を求めて…

ある行旅死亡人の物語  武田惇志, 伊藤亜衣

ある行旅死亡人の物語 武田惇志, 伊藤亜衣 Audible 自宅アパートで亡くなったのに身元が分からない高齢女性は、3400万の現金とわずかばかりの身の回りのものを残していた。社会から身を隠しているような生活を40年も送っていたらしい。二人の記者が、印鑑の…

無花果の実のなるころに 西條奈加

無花果の実のなるころに (お蔦さんの神楽坂日記) 西條奈加 Audible 西條さんの人気シリーズの一冊目をオーディオブックで楽しく聴きました。ナレーションが巧みでセリフの区別がつきやすく、アニメや吹替えドラマを見ているみたいです。ベテランの声優さんの…