壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

読書

禁忌 フェルディナント・フォン・シーラッハ

禁忌 フェルディナント・フォン・シーラッハ 酒寄進一 訳 創元推理文庫 電子書籍 シーラッハを『犯罪』『罪悪』『コリーニ事件』と読んできたが,本書は絶対にネタバレしてはいけないタイプの小説だと感じた。でも面白くて一気読みし,とても印象深くて,何…

青い城 モンゴメリ

青い城 モンゴメリ 谷口由美子訳 角川文庫 電子書籍 『赤毛のアン』シリーズを読んだのはもう50年~60年も前ですが,今でもよく覚えています。小中学生の頃にはアン自身の物語に引き付けられましたが,今になって面白く思い出すのはアンの周辺の人々の話です…

かわうそ堀怪談見習い  柴崎友香

かわうそ堀怪談見習い 柴崎友香 角川文庫 電子書籍 力の抜けた,いい感じの怪談。27の短い章からなる「脱力系怪談」(?)。聴き手を怖がらす意図がなく,語り手が淡々と事実を語り,出会った怖さすらそっとやり過ごしてしまう。語り手は恋愛小説家という肩…

はだかの太陽 アイザック・アシモフ

はだかの太陽 アイザック・アシモフ 小尾芙佐 訳 ハヤカワ文庫 『鋼鉄都市』の続編。地球と宇宙国家連合との関係などの世界観は前作で充分に説明されていたので,順序通りに読んだ方が物語のストーリーを楽しむことができる。 地球での宇宙人殺人事件を解決…

ずっとお城で暮らしてる シャーリイ・ジャクスン

ずっとお城で暮らしてる シャーリイ・ジャクスン 市田泉 訳 創元推理文庫 電子書籍 “あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。十八歳。姉さんのコンスタンスと暮らしている。” からはじまる一人称の語りは,美しくも悪意に満ちて歪んだ世界を描き出して…

人形 ダフネ・デュ・モーリア

人形 ダフネ・デュ・モーリア 務台夏子 訳 創元推理文庫 電子書籍 デュ・モーリアの初期短編14編。どれも短い話なので後の作品ほどの完成度はないが,その片鱗をうかがわせるものが多い。それぞれに,幻想,悲劇,喜劇,風刺,サスペンスなどの風味があって…

深追い 横山秀夫

深追い 横山秀夫 実業之日本社 電子書籍 たまに読みたくなる,オジサンミステリ* *)オジサンが書いた,オジサンが出てくる,オジサンのためのミステリという,わたし的定義です。オバサンが書いた,オバサンが出てくる,オバサンのためのミステリもあります…

ザリガニの鳴くところ ディーリア・オーエンズ

ザリガニの鳴くところ ディーリア・オーエンズ 友廣純 訳 早川書房 電子書籍 圧倒的な自然の中で暮らす一人の少女カイヤの物語。評判の本をやっと読みました。長かったけれど面白かった! ノース・カロライナの東部に広がる湿地帯と潟湖,そしてその豊かな生…

私の名前はルーシー・バートン  エリザベス・ストラウト

私の名前はルーシー・バートン エリザベス・ストラウト 小川高義 訳 早川書房 電子書籍 普通の暮らしの中の断片的なエピソードを拾い上げるようにして,オリーヴ・キタリッジの長い人生を浮かび上がらせた『オリーヴ・キタリッジの生活』『オリーヴ・キタリ…

自分で名付ける 松田青子

自分で名付ける 松田青子 集英社 電子書籍 妊婦さん,産婦さん,子育て中の人たちに絶賛お勧めです。 絶妙なジェンダー観で構成された短編『おばちゃんたちのいるところ』で,著者の立ち位置を好きになりました。 自分自身の事としてはすっかり忘れてしまっ…

声 アーナルデュル・インドリダソン

声 アーナルデュル・インドリダソン 柳沢由実子訳 創元推理文庫 電子書籍 『湿地』『緑衣の女』に続く捜査官エーレンデュルの第三作(翻訳で)。前二作はアイスランドという見知らぬ国に対する興味に引っ張られたところがあった。人口三十五万の国とか家系図…

金の仔牛 佐藤亜紀

金の仔牛 佐藤亜紀 電子書籍 18世紀初頭のフランスで起きた金融バブル「ミシシッピ事件」を背景に,追剥,詐欺師,泥棒,胡散臭い貴族など怪しげな人々が繰り広げるマネーゲームだ。ミシシッピというほぼ実体のない会社の株券と,王立銀行が乱発する紙幣を売…

夏を殺す少女 アンドレアス・グルーバー

夏を殺す少女 アンドレアス・グルーバー 酒寄 進一 訳 創元推理文庫 電子書籍 オーストリアミステリだそうです。ほとんどの舞台はドイツ国内ですけどね。各地で起きた不審な事故死に見え隠れする少女を追うオーストリアの若い女弁護士エヴェリーンと,精神病…

とにかく散歩いたしましょう 小川洋子

とにかく散歩いたしましょう 小川洋子 文春文庫 電子書籍 連日の酷暑で,日課の散歩のモチベーションが保てないのです。何か参考になるかと思ったのですが,著者の散歩は愛犬のためとか。でも愛犬を失ってからも散歩の習慣を保っているそうです。犬のいない…

戦争は女の顔をしていない スヴェトラーナ アレクシエーヴィチ

戦争は女の顔をしていない スヴェトラーナ アレクシエーヴィチ 三浦 みどり訳 岩波現代文庫 電子書籍 第二次大戦に従軍したロシアの女性たちの証言録。“証言文学”というそうだ。名もなき女性たちの生の声を紡いでいくことで,その時代を鮮明に描いている。50…

コリーニ事件  フェルディナント・フォン・シーラッハ

コリーニ事件 フェルディナント・フォン・シーラッハ 創元推理文庫 電子書籍 短編集を二冊読んで,やっとシーラッハの第三作『コリーニ事件』にたどり着いた。長さから言えば長編というより中編だが,中身がずっしりと重い大作だった。 新米弁護士のライネン…

居場所もなかった  笙野頼子

居場所もなかった 笙野頼子 講談社文庫 電子書籍 10年以上も前に笙野頼子の作品を何冊かまとめて読んだことがある。自分自身の居場所のなさ・寄る辺なさを私小説風の妄想を駆使して描く『なにもしていない』(1991年),『東京妖怪浮遊』(1998年),『S倉迷…

椿宿の辺りに  梨木果歩

椿宿の辺りに 梨木果歩 朝日新聞出版 電子書籍 未読である『f植物園の巣穴』の後日譚だという事は承知していたが,とりあえず読んだ。 現代人の異界の冒険譚といえばいいだろうか。冒険とはいっても大冒険ではなく,ちょっとした旅なのだが。化粧品会社の研…

罪悪  フェルディナント・フォン・シーラッハ

罪悪 フェルディナント・フォン・シーラッハ 酒寄進一訳 創元推理文庫 電子書籍 第一短編集『犯罪』に続く短編集。『犯罪』は罪を犯さざるを得なかった被告人たちの哀しみが描かれた感動作が多かったが,同じようなものを求めていた第二短編集への予想は見事…

コンビニ人間  村田沙耶香

コンビニ人間 村田沙耶香 文春文庫 大活字本(埼玉福祉会)図書館本 もう何年も読もうと思っていた本をやっと読んだ。受賞後の図書館予約の長い列に並ぶ気になれずに忘れていたが,読みやすい大活字本を見つけ一晩で読み終えた。予想以上に面白かった。面白…

日曜日たち  吉田修一

日曜日たち 吉田修一 講談社文庫 大活字本(埼玉福祉会)図書館本 図書館で「大活字本」を借りた。なかなか快適。老眼が進んで文庫本を読むのがつらくなったが,電子書籍は図書館で借りられないので書籍費がかさむし,活字は大きくできるがKindle端末は画面…

グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行  高野 史緒

グラーフ・ツェッペリン 夏の飛行 高野 史緒 Kindle Single 紙の本に換算すると50頁ぐらいの短い電子書籍です。正味30分くらいで読める。 女子高生の夏紀が,子供の頃に母の故郷土浦で巨大な飛行船を見たというかすかな記憶をたどって,物理学者の卵になって…

夜来たる  アイザック・アシモフ

夜来たる アイザック・アシモフ グーテンベルク21 電子書籍 アシモフの初期短編集で3編の短い作品が入っていました。長編を読む気力の無い時には100頁ばかりの300円弱の本だと読み始める気になります。でも,読み終わってちょっと短すぎて物足りないという我…

愛の探偵たち アガサ・クリスティー

愛の探偵たち アガサ・クリスティー 宇佐川晶子訳 ハヤカワ文庫 クリスティー文庫 電子書籍 最近の長いミステリ小説を持て余して,古めかしいミステリ短編を読み始めました。マープル,ポアロ,クィンたちの8つの短編集です。未読の短編のはずでしたが,クリ…

テムズ川の娘  ダイアン・セッターフィールド

テムズ川の娘 ダイアン・セッターフィールド 高橋尚子訳 小学館文庫 電子書籍 19世紀のイギリス,テムズ川で仮死状態で見つかった少女の身元をめぐる人々の物語。その少女は裕福な実業家の行方不明の娘なのか,複雑な出自の黒人農園主の孫なのか,牧師館の家…

夜の声  スティーヴン・ミルハウザー

夜の声 スティーヴン・ミルハウザー 柴田元幸 訳 白水社 図書館本 『ホーム・ラン』に続く短編集。8つの作品はどれも「ミルハウザー」としか言いようがない。図書館の返却期限が今日までなので急いで読んだことが残念。メモだけ取っておこう。 「ラプンツェ…

憂鬱な10か月  イアン・マキューアン

憂鬱な10か月 イアン・マキューアン 新潮クレストブックス 電子書籍 妊婦さんにはお勧めできません(笑)。胎児が饒舌に語り尽くす,母親と愛人による父親殺し。 扉のエピグラフにハムレットからの引用があるので,なるほどとは思う。母親の愛人が父親の弟,…

メイドの手帖 ステファニー・ランド

メイドの手帖 ステファニー・ランド 村井理子訳 双葉社 図書館本 シングルマザーとして貧困の中で幼い娘を育てたステファニー・ランドの手記。高等教育を受けられないままシングルマザーになり,28歳で母娘はホームレスシェルターで暮らした。そこから抜け出…

原野の館  ダフネ・デュ・モーリア

原野の館 ダフネ・デュ・モーリア 務台夏子訳 創元推理文庫 電子書籍 デュ・モーリアの初期の長編で今年,新訳版がでました。かつては『埋もれた青春』という題で邦訳され,ヒッチコックの『巌窟の野獣』として映画化された作品だそうです。 母を亡くして身…

たまさか人形堂それから  津原泰水

たまさか人形堂それから 津原泰水 文春文庫 電子書籍 前作『たまさか人形堂物語』はバラエティに富んだ連作短編でしたが,本作は長編ともいえるような短編集です。前作にあった毒は消されてすっかりほのぼのしてしまいました。現実を踏み越えるのかという筋…