壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

天災から日本史を読みなおす  磯田道史

天災から日本史を読みなおす 先人に学ぶ防災  磯田道史

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先日の台風は直撃を免れたけれど,大型で強いため日本の広い範囲に影響があった。台風の通り道であり,地震の巣の上に存在する日本は,この先どうなっていくのだろうと不安になる。個人では水や食料の備蓄くらいしかできないし,将来起こりうる災害の想定は科学者たちにゆだねるしかない。それでも,過去の日本人はどのようにして災害と向き合ってきたのかを知りたいと思った。

歴史的な一次資料から読み解くという著者の研究の原点は防災史にあったらしく,研究への情熱が感じられた。地方に残っている個人の日記などから,大胆かつ自由に歴史の流れを論じていくところは楽しいし,学術的な論文ではなく,あくまでも新聞連載のエッセイなので,読みやすかった。

現在放送されているNHK大河ドラマ「どうする家康」は小牧長久手の戦いにさしかかっているが,その後に起きた天正地震と伏見地震の二つの地震が,秀吉と家康の運命に大きくかかわったという話が興味深かった。

巨大津波から逃げるという場面では,江戸時代でも現代でも心痛む場面が多い。言い伝えや規則,マニュアルが役に立たない場面が多いことから,避難の心得を強く説いている。

 

日本各地の災害について書かれてはいますが,特に静岡県の話題が多くて県民として気になるところです。静岡に災害が特に多いというより,磯田さんが浜松の大学に勤務していた時期があったためのようでした。静岡市南部には繰り返し津波や高潮に襲われた地区があって,「塩入田」という地名が残っている話が出てきました。そのあたりを車で走る機会があるのですが,アパートの名前に「汐入」とあって,その前を通るたびに何とも言えない心持ちになります。