壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

2021-01-01から1年間の記事一覧

夜の声  スティーヴン・ミルハウザー

夜の声 スティーヴン・ミルハウザー 柴田元幸 訳 白水社 図書館本 『ホーム・ラン』に続く短編集。8つの作品はどれも「ミルハウザー」としか言いようがない。図書館の返却期限が今日までなので急いで読んだことが残念。メモだけ取っておこう。 「ラプンツェ…

憂鬱な10か月  イアン・マキューアン

憂鬱な10か月 イアン・マキューアン 新潮クレストブックス 電子書籍 妊婦さんにはお勧めできません(笑)。胎児が饒舌に語り尽くす,母親と愛人による父親殺し。 扉のエピグラフにハムレットからの引用があるので,なるほどとは思う。母親の愛人が父親の弟,…

メイドの手帖 ステファニー・ランド

メイドの手帖 ステファニー・ランド 村井理子訳 双葉社 図書館本 シングルマザーとして貧困の中で幼い娘を育てたステファニー・ランドの手記。高等教育を受けられないままシングルマザーになり,28歳で母娘はホームレスシェルターで暮らした。そこから抜け出…

原野の館  ダフネ・デュ・モーリア

原野の館 ダフネ・デュ・モーリア 務台夏子訳 創元推理文庫 電子書籍 デュ・モーリアの初期の長編で今年,新訳版がでました。かつては『埋もれた青春』という題で邦訳され,ヒッチコックの『巌窟の野獣』として映画化された作品だそうです。 母を亡くして身…

たまさか人形堂それから  津原泰水

たまさか人形堂それから 津原泰水 文春文庫 電子書籍 前作『たまさか人形堂物語』はバラエティに富んだ連作短編でしたが,本作は長編ともいえるような短編集です。前作にあった毒は消されてすっかりほのぼのしてしまいました。現実を踏み越えるのかという筋…

そして私は一人になった  山本文緒

そして私は一人になった 山本文緒 角川文庫 電子書籍 『自転しながら公転する』は図書館の予約が満杯でしたので,文庫本になったら購入しようかと思っていたところで先月に訃報に接し,昨年NHKの朝の番組での元気なお姿を思い出しながら,いつか読もうと気に…

火星の砂  アーサー・C・クラーク

火星の砂 アーサー・C・クラーク 平井イサク訳 早川書房 電子書籍 『火星○○』三冊目です。火星から戻ってこられません。昨今は火星探査で米中が競争していて,どこの国が一番早く火星の岩石サンプルを持ちかえるのでしょうか。かつてはSFでのみ到達可能であ…

火星人ゴーホーム  フレドリック・ブラウン

火星人ゴーホーム フレドリック・ブラウン 稲葉 明雄訳 グーテンベルク21 電子書籍 火星のプリンセスを読んだついでに,もう一つ火星物。70年前に書かれたドタバタブラックコメディ風のSFですから古めかしい所はあるのですが,現代的な解釈をするとコロナで…

火星のプリンセス  エドガー・ライス・バローズ

火星のプリンセス エドガー・ライス・バローズ 厚木淳 訳 創元SF文庫 電子書籍 100年以上も前に書かれたスペース・オペラの原点といわれるSF小説です。初版が1917年ですが,日本で翻訳出版されたのは1965年でした。その時中学生だった私はこのシリーズの文庫…

ベイカー街の女たち ミセス・ハドスンとメアリー・ワトスンの事件簿1  ミシェル・バークビイ

ベイカー街の女たち ミセス・ハドスンとメアリー・ワトスンの事件簿1 ミシェル・バークビイ 駒月雅子 訳 角川文庫 電子書籍 世の中にシャーロック・ホームズのパスティーシュはたくさんあります。小説に限らず,映画やドラマも数多く見ました。その中でも本…

くらしのための料理学  土井正晴

くらしのための料理学 土井正晴 学びのきほん NHK出版 電子書籍 家族のための料理を何十年も作ってきたが,人生の最後に自分のためだけの料理をすることになった。いつまで作れるかどうかはわからないが,ひとりの食事は気楽でいい。しかし,毎日毎日自分1人…

恐怖  筒井康隆

恐怖 筒井康隆 文春文庫 電子書籍 2001年頃の作品で,未読かと思い読み始めたが残念ながら既読だった。文化人たちが住んでいる閑静な住宅街の連続殺人事件。殺人事件の第一発見者の小説家村田勘市は相当なビビリらしく,自分が狙われているのではと妄想が妄…

犯罪  フェルディナント・フォン・シーラッハ

犯罪 フェルディナント・フォン・シーラッハ 酒寄進一訳 創元推理文庫 電子書籍 現役の刑事弁護士が書いたミステリとして話題になったときに読み逃していた以来。物語の語りと筋運びが独特で,事実を淡々と報告しているように見えるが,罪を犯した,いや犯さ…

じじばばのるつぼ  群ようこ

じじばばのるつぼ 群ようこ 新潮社 図書館本 還暦を過ぎもう少しで高齢者の仲間入りをするという筆者が,自戒を込めて,街中の老人たちの困った生態を描く爆笑エッセイらしい。笑えなかったのは,私が70の老人だからなのだろう。たしかに迷惑行為をする老人…

恥ずかしい料理  梶谷いこ

恥ずかしい料理 梶谷いこ 平野愛 写真 誠光社 図書館本 吉本ばななの『キッチン』に自己流の料理とプロの料理はどこが違うのかという話が出てきて,料理の本を探していてこの本に行き当たった。元祖「恥ずかしい料理」といえば美味しんぼだけど,ああいう貧…

キッチン  吉本ばなな

キッチン 吉本ばなな 幻冬舎 電子書籍 30年以上前の作品を初めて読みました。時代を超えて読まれている作品だという事がよくわかります。大切な人を失った時の気持ちと,それが少しずつ癒されていく過程には,個人的な体験としては人それぞれだけれど,万人…

マン島の黄金  アガサ・クリスティー

マン島の黄金 アガサ・クリスティー 中村妙子 他 訳 ハヤカワ クリスティー文庫 電子書籍 未読のクリスティ作品を拾って読んでいるつもりですが,ドラマで見たのもあって,どれが既読なのか自分でも不明です。この短編集は,単行本に収められなかった短編を…

鹿の王 水底の橋 上橋菜穂子

鹿の王 水底の橋 上橋菜穂子 角川文庫 電子書籍 鹿の王の上下巻を読んだのは,読書メーターの記録によればもう6年以上前でした。内容をすっかり忘れていました。読書メーターにしか記録していませんでした。 それによれば, 「ファンタジーというより、重厚…

世界が終わるわけではなく ケイト・アトキンソン

世界が終わるわけではなく ケイト・アトキンソン 東京創元社 海外文学セレクション 電子書籍 ケイト・アトキンソンの短編集は,12編が独立した短編かというと,そうではない。でも連作短編かというと,どうなんだろう,テイストのかなり異なる作品が詰め込ま…

およね平吉時穴道行  半村良

およね平吉時穴道行 半村良 角川文庫 電子書籍 半村良の『産霊山秘録』を再読するつもりだったが,伝奇長編小説に向かう体力がなくてこの短編集にしてみた。半村良の初期短編集だそうだ。表題作の「およね平吉時穴道行」は,たぶん,50年くらい前の当時の「S…

真夜中のパーティー  フィリパ・ピアス

真夜中のパーティー フィリパ・ピアス 岩波少年文庫 電子書籍 『トムは真夜中の庭で』がファンタジーだったので,ごく日常の子供たちの小さな出来事ばかりの短編が意外でした。でもこの歳になっても子供の時の気持ちに少しだけ戻ることができるのに,我なが…

七十歳死亡法案、可決  垣谷美雨 / 銀齢の果て 筒井康隆

七十歳死亡法案、可決 垣谷美雨 幻冬舎文庫 電子書籍 銀齢の果て 筒井康隆 新潮文庫 電子書籍 古希の記念に,70歳にまつわる小説を2冊読みました。 七十歳死亡法案、可決 「七十歳死亡法」という点がインパクト大なのかと思ったら,70歳で死ぬという前提が無…

ホーム・ラン  スティーヴン・ミルハウザー

ホーム・ラン スティーヴン・ミルハウザー 柴田 元幸訳 白水社 図書館本 もう十年以上も前にミルハウザーの初期の作品『ナイフ投げ師』『バーナム博物館』を読んだ時の驚きを,いまだに覚えています。濃厚で過剰なミスハウザーの世界は最新作の短編集でも変…

変な家  雨穴

変な家 雨穴 飛鳥新社 電子書籍 高齢者でも動画をよく見る。引っ越しの予定はないが,面白い間取りの家の内覧をする「○○不動産」なんていう動画を見る。ミステリでもホラーでも家や間取りの謎は魅力的だ。この動画がおもしろいと教えてもらい,さらに本を買…

ホテル  エリザベス・ボウエン

ホテル エリザベス・ボウエン 太田良子訳 国書刊行会 図書館本 ボウエンの短編集『あの薔薇を見てよ』,『幸せな秋の野原』は手ごわかったけれど,非常に魅力的だった。わかりにくさは訳文のせいもあるけれど,それ以上にあいまいな描写や結末に戸惑った。で…

鋼鉄都市  アイザック・アシモフ

鋼鉄都市 アイザック・アシモフ ハヤカワ文庫 電子書籍 50年以上前にアシモフはたくさん読んだ記憶があるのですが,科学解説書だけで小説は読まなかったのかもしれません。続編の新訳版『はだかの太陽』を貰ってあるので,まずは『鋼鉄都市』から。1954年に…

羊は安らかに草を食み  宇佐美まこと

羊は安らかに草を食み 宇佐美まこと 祥伝社 図書館本 二十年来の友人だった益恵が認知症になり、俳句仲間の八十歳のアイと七十七歳の富士子は三人で最後の旅に出た。いつも穏やかで元気だった益恵が認知症になって時々見せる心の重荷を感じて,夫の三紀夫は…

与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記  澤田瞳子

与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記 澤田瞳子 光文社文庫 電子書籍 夏のKindleキャンペーンにつられて買った本です。 東大寺毘盧舎那仏鋳造の労役の為,平城京に召集された近江国の二十一歳の真壁の視線で,造仏所の労働とその人間模様が細かに描かれています。…

二年半待て  新津きよみ

二年半待て 新津きよみ 徳間文庫 電子書籍 セカンドライフがなかなか良くて,就寝前読書にもう一冊読んでみました。就活・婚活・恋活・妊活・保活・離活・終活をテーマにした7つの短編です。女たちの日常の話で読みやすく,最後に仕掛けがあります。一気に読…

ヨーロッパ退屈日記 / 女たちよ!  伊丹十三

ヨーロッパ退屈日記 伊丹十三 新潮文庫 女たちよ! 伊丹十三 新潮文庫 文庫本のあとがきで,関川夏央氏はこう書いています。 “『ヨーロッパ退屈日記』は,1965年の高校生にとって一大衝撃だった。” まさにこの言葉に尽きるのです。そのころに高校の級友に貸…