壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

海外文学

マーロー殺人クラブ  ロバート・ソログッド

マーロー殺人クラブ ロバート・ソログッド 高山祥子訳 アストラハウス 図書館本 英国コージーミステリでは、探偵が老婦人であることが定番なのだ。テムズ河畔のマーローに住む77歳のジュディスは、頭脳も体力もなかなかのもの。ある夜、自宅前のテムズ川で泳…

十三の物語 スティーヴン・ミルハウザー

十三の物語 スティーヴン・ミルハウザー 柴田元幸訳 白水社 図書館本 読み逃していたミスハウザーの2008年の短編集。ミルハウザーを読むたびに、その濃密な世界に驚き、沼に足を取られて引きずり込まれる。奇想天外な幻想の世界を描き続けるという意味では“…

何があってもおかしくない  エリザベス・ストラウト

何があってもおかしくない エリザベス・ストラウト 小川高義訳 早川書房 図書館本 『私の名前はルーシー・バートン』で、ルーシーと母親の会話の中に断片的に出てきた人々が、たくさん登場する。本作の導入として『ルーシー・バートン』が書かれたのかと思う…

潜水鐘に乗って  ルーシー・ウッド

潜水鐘に乗って ルーシー・ウッド 木下淳子訳 東京創元社 図書館本 コーンウォールは神話や民間伝承の豊かなケルトの土地だそうだ。古代から棲む精霊や巨人、人魚などが、現代のコーンウォールの人々の日常生活と交差している。人々の物語は現実のリアルな感…

大仏ホテルの幽霊  カン・ファギル

大仏ホテルの幽霊 カン・ファギル 小山内園子訳 白水社エクス・リブリス 図書館本 《韓国社会の〝恨〟を描くゴシックスリラー》だという。出版されたばかりだからネタバレなしでいきたい。 三部構成の枠部分(第一部)は、怨恨のようなものにとり憑かれて小…

ああ、ウィリアム!  エリザベス・ストラウト

ああ、ウィリアム! エリザベス・ストラウト 小川高義訳 早川書房 図書館本 作家であるルーシー・バートンは二番目の夫を亡くしたが、前夫ウィリアムとの友人関係はそのままだ。ウィリアムの亡き母キャサリンの秘密を知ったウィリアムは、母の故郷であるメイ…

人間の彼方  ユーリ・ツェー

人間の彼方 ユーリ・ツェー 酒寄進一訳 東宣出版 図書館本 ロックダウン下のドイツでベストセラーになった小説。コロナは背景であり、書かれているのは人間そのものです。日常が姿を変えたときに人間の本質があぶりだされていくというのが,パンデミック小説…

火星にいった3人の宇宙飛行士  ウンベルト・エーコ

火星にいった3人の宇宙飛行士 ウンベルト・エーコ E・カルミ 絵 海都洋子訳 六曜社 図書館本 火星を舞台にしたSF小説は1960年代前後にたくさん出ています。前回読んだ『火星のタイム・スリップ』は1964年でした。この時代、ウンベルト・エーコさえ、火星に行…

火星のタイム・スリップ  フィリップ・K・ディック

火星のタイム・スリップ フィリップ・K・ディック 小尾芙佐訳 早川書房 電子書籍 火星の話をたくさん読んできたが、今世紀に近くなると、多くはテラフォーミングされた火星に集団移住している。しかし1980年代以前の火星は、薄い空気があって呼吸ができ、原…

ハイランド・クリスマス / ゴシップ屋の死  M・C・ビートン

ハイランド・クリスマス M・C・ビートン ゴシップ屋の死 マクベス巡査シリーズ1 M・C・ビートン 松井光代訳 文芸社 Kindle unlimited クリスマスまでに読み切れなかった『ハイランド・クリスマス』は英国のベストセラー作家によるコージーミステリです。ハイ…

ラストマイル  デイヴィッド・バルダッチ

完全記憶探偵 エイモス・デッカー ラストマイル 上/下 デイヴィッド・バルダッチ 関麻衣子訳 竹書房文庫 Kindle unlimited 完全記憶探偵エイモス・デッカーの二作目。脳障害により完全記憶を持ったエイモス・デッカーは、第一作目で自身の家族を殺害された…

穢れた風  ネレ・ノイハウス

穢れた風 ネレ・ノイハウス 酒寄進一訳 創元推理文庫 月一回、オリヴァー&ピア・シリーズの5冊目は、風力発電に絡んだ利権争いを背景に起きた殺人事件。ドイツでは、海岸地方や洋上の風力発電が主力なのでしょう、本書の舞台のような内陸の山地にタービンを…

クララとお日さま  カズオ・イシグロ

クララとお日さま カズオ・イシグロ 土屋政雄訳 早川書房 図書館本 移動図書館の本棚で見つけた。出版から二年近くたって、ようやく読むチャンスができた。その間、《ノーベル文学賞 受賞第一作 カズオ・イシグロ最新作、2021年3月2日(火)世界同時発売! AIロ…

地下鉄道  コルソン・ホワイトヘッド

地下鉄道 コルソン・ホワイトヘッド 谷崎由依訳 ハヤカワepi文庫 電子書籍 南北戦争の少し前、ジョージアの農園で生まれた黒人少女コーラは、北部への逃亡を決めました。サウスカロライナ、ノースカロライナ、テネシー、インディアナを通り、自由州である北…

完全記憶探偵  デイヴィッド・バルダッチ

完全記憶探偵 デイヴィッド・バルダッチ 関麻衣子訳 竹書房文庫 上下合本版 Kindle unlimited 『火星の人類学者』では驚異的な記憶力を持つ人々が取り上げられていました。そのような超記憶症候群の探偵が主人公のアメリカンミステリーです。ドラマを見てい…

火星の人類学者  オリヴァー・サックス

火星の人類学者 --脳神経科医と7人の奇妙な患者-- オリヴァー・サックス 吉田利子訳 ハヤカワ文庫NF 電子書籍 人生の終わりに近づき、何回目かの蔵書整理をしています。残り少ない紙の本に決別し、どうしても捨てられない本だけ電子書籍に買い直そうかとも考…

白雪姫には死んでもらう  ネレ・ノイハウス

白雪姫には死んでもらう ネレ・ノイハウス 酒寄進一訳 創元推理文庫 ドイツミステリ、オリヴァー&ピア・シリーズの四作目は、さらに厚くなって文庫本570頁。題名もキャッチ―だが、これは原題Schneewittchen muss sterbenに近い。 11年前の少女連続行方不明…

叔母との旅  グレアム・グリーン

叔母との旅 グレアム・グリーン 小倉多加志訳 早川書房 グレアム・グリーン全集22 電子書籍 前回読んだ『ベルリンは晴れているか』からの連想でたどり着いたグレアム・グリーン。前世紀にずいぶん流行ったらしく、全集が出ていた。電子化されていて、気楽に…

哀惜  アン・クリーヴス

哀惜 アン・クリーヴス ハヤカワ・ミステリ文庫 電子書籍 アン・クリーヴスの新シリーズ第一作。アン・クリーヴスの小説は初読みですが、ドラマ化された作品「ヴェラ・スタンポープ」シリーズを現在視聴中です。荒野の続くノーサンバーランドを舞台にしたド…

火星のオデッセイ/夢の谷  スタンリー・G・ワインボウム

火星のオデッセイ スタンリー・G・ワインボウム 大山優訳 グーテンベルグ21 電子書籍 夢の谷 スタンリイ・G・ワインバウム 奥増夫訳 青空文庫 私的火星シリーズでSFを読んでいます。ワインボウムの二作品は1934年に出版された短編SFです。ワインボウム自身…

火星年代記  レイ・ブラッドベリ

火星年代記〔新版〕 レイ・ブラッドベリ 小笠原豊樹訳 ハヤカワ文庫SF 電子書籍 私的火星シリーズでSFを読むにあたって、欠かせないのが『火星年代記』です。1950年に出版されていますが、私が読んだのは1960年代でした。中学生の頃か……あまりにも大昔の事な…

明治日本散策  エミール・ギメ

明治日本散策 東京・日光 エミール・ギメ フェリックス・レガメ(挿絵) 岡村嘉子訳 角川ソフィア文庫 Kindle unlimited パリ国立東洋美術館(前身はギメ宗教博物館)の創始者であったエミール・ギメが、明治9年に日本を旅した際の紀行文の新訳が、手に入り…

死体は笑みを招く   ネレ・ノイハウス

死体は笑みを招く ネレ・ノイハウス 酒寄進一訳 創元推理文庫 オリヴァー&ピア・シリーズの二作目。動物園で見つかった切断死体。被害者は高校教師で過激な環境活動家。彼は周囲の大人たちには疎まれていましたが、若者には人気がありました。相変わらず、…

悪女は自殺しない  ネレ・ノイハウス

悪女は自殺しない ネレ・ノイハウス 酒寄進一訳 創元推理文庫 刑事オリヴァー&ピア・シリーズの第一作。気になっていたドイツミステリですが、読む順番が分からず手を出せないでいた9冊のシリーズでした。日本では第三作『深い疵』から翻訳出版されたために…

少年/単独飛行  ロアルド・ダール

少年/単独飛行 ロアルド・ダール 永井淳 訳 早川書房 電子書籍 ロアルド・ダールの自伝を二冊。『少年』は長い間本棚にあったのだが、蔵書処分で手放している。『単独飛行』は未読だった。電子書籍がお手頃価格になっていたので、懐かしさで二冊とも手に入…

キュレーターの殺人  M・W・クレイヴン

キュレーターの殺人 M・W・クレイヴン 東野 さやか訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 『ストーンサークルの殺人』『ブラックサマーの殺人』に続く三作目。二本の指が切断された事件が連続三件、前半は犯人の意図も何も分からず、右往左往してどこへ行くのか予想が…

後悔するイヌ、嘘をつくニワトリ ペーター・ヴォールレーベン

後悔するイヌ、嘘をつくニワトリ 動物たちは何を考えているのか? ペーター・ヴォールレーベン 本田雅也訳 ハヤカワ文庫NF 電子書籍 動物は好きだけれど自分では飼えないから,動物の写真や動画で癒されています。叱られてバツが悪そうな表情のイヌ,ガッカ…

プロジェクト・ヘイル・メアリー   アンディ・ウィアー

プロジェクト・ヘイル・メアリー(上・下) アンディ・ウィアー 小野田和子訳 早川書房 電子書籍 アンディ・ウィアーの三作目。面白かったので,映画化されたらぜひ見たい。 太陽エネルギーが指数関数的に減少して,地球があっという間に氷河期になるという…

アルテミス  アンディ・ウィアー

アルテミス(上・下) アンディ・ウィアー 小野田和子訳 ハヤカワ文庫SF 電子書籍 『火星の人』の面白さにつられて、アンディ・ウィアーの第二作『アルテミス』を読んだ。(半額セールにもつられた。) 舞台は月面の都市アルテミスは、建設されて間もない。…

娘は娘  アガサ・クリスティー

娘は娘 アガサ・クリスティー 中村妙子訳 クリスティー文庫 電子書籍 メアリ・ウェストマコット名義の六冊のロマンス小説のうち、三冊目です。未読だと思っていたのにKindleのマイライブラリーに入っていて、読了となっていました。誰が読んだの? 私? 読み…