壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

漱石とあたたかな科学

漱石とあたたかな科学 文豪のサイエンスアイ 小山慶太 文藝春秋 1995年 1400円 「我輩は猫である」で椎茸を齧って前歯が欠けた水島寒月君は、学者をカリカチュアライズしたような浮世離れした人物でしたが、どこか憎めないところがありました。モデルである…

チベットの七年―ダライ・ラマの宮廷に仕えて

チベットの七年―ダライ・ラマの宮廷に仕えて ハインリヒ・ハラー 福田 宏年訳 白水社 1989年 3800円 “西洋人の見たアジア”というテーマ(今思いついただけですが)で、イザベラ・バードの次に読みたいと思ったのが、映画「Seven years in Tibet」 の原作です…

きつねのはなし

きつねのはなし 森見 登美彦 新潮社 2006年 1400円 「夜は短し歩けよ乙女」で森見さんの妄想力に魅せられ、二作目はテイストの違う物語を読んでみました。にぎやかな青春の滑稽譚「夜は短し**」は軽妙な文体と奇怪な発想がまずは見立ってしまうのですが、そ…

日本奥地紀行

日本奥地紀行 イザベラ・バード 高梨健吉訳 平凡社 東洋文庫 1973年 明治維新間もない頃に英国の婦人が日本人の通訳を一人連れて北日本を旅行するというだけでも、他に類を見ないことですが、イザベラ・バードの紀行文が率直でかつ巧みで面白いものですから…

カンガルー日和

カンガルー日和 村上春樹 講談社文庫 1986年 440円 村上春樹は、三十代のころに「羊をめぐる冒険」「世界の終わり**」「ノルウェーの森」を発売と同時によんだような覚えがあります。それ以降読みたいと思わずにいましたが、今になって少し気になります。手…

朝鮮 紀行

朝鮮紀行 英国婦人の見た李朝末期 イザベラ・バード 時岡敬子訳 講談社学術文庫 1998年 1500円 明治維新後の日本を旅したイザベラ・バードの「日本奥地紀行」を読もうと思いたったのですが、図書館の本は貸し出し中で、こちらの本を先に読みました。 1894年…

バルタザールの遍歴

バルタザールの遍歴 佐藤亜紀 文春文庫 2001年 600円 双子の物語には、心惹かれるものがあります。初めて読んだのはもちろんケストナーの「二人のロッテ」です。二人が入れ代ってそれぞれの生活を始めた時にどんなにドキドキしたか、半世紀たった今でも覚え…

妊娠カレンダー

妊娠カレンダー 小川洋子 文春文庫 1994年 400円 不用本の戴き物です。確か、小川洋子作品は「密やかな結晶」に次いで二作目のはずです。女性らしい繊細な静けさが印象的でした。「妊娠カレンダー」「ドミトリイ」「夕暮れの給食室と雨のプール」の三編は、”…

めぐらし屋

めぐらし屋 堀江敏幸 毎日新聞社 2007年 1400円 「蕗子さん」は、長い間離れて暮らしていた父親が遺したノートをみつけました。表紙に筆ペンで大書きされた「めぐらし屋」とはいったいなんでしょうか。流れるように自然な文章は、「蕗子さん」の静かな日常を…

アウシュヴィッツは終わらない

アウシュヴィッツは終わらない―あるイタリア人生存者の考察 プリーモ・レーヴィ 竹山 博英 訳 朝日選書 1980年 1200円 「周期律 元素追想」 を書いたプリーモ・レーヴィの「これが人間か」(原題)の邦訳です。原書は1946年、収容所より帰国してすぐに書かれ…

冬の犬

冬の犬 アリステア・マクラウド 中野恵津子訳 新潮クレストブックス 2004年 1900円 ケープ・ブレトン島に暮らす人たちの、平凡にして数奇な日々が語られます。静かに胸に迫る物語は、カナダ東海岸の厳しい冬の風に立ち尽くす灯台のように、かすかに温かくて…

陽気なギャングが地球を回す

陽気なギャングが地球を回す 伊坂 幸太郎 祥伝社文庫 2006年 660円 たまには流行り物を!と、少し無理して、初めて伊坂作品を読んでみました。というか、ちょっと貸してもらっただけなのですけれど。 4人の銀行強盗はそれぞれに個性的で、7~8割は会話からな…

夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女 森見 登美彦 角川書店 2006年 1500円 「中庭の出来事」と同時に山本周五郎賞を受賞した作品ということで、一度は読んでみようかと思っていました。図書館での人気は高くいまだに数十人の予約待ちですから、当分読むのをあきらめていまし…

灰色の輝ける贈り物

灰色の輝ける贈り物 アリステア・マクラウド 中野恵津子訳 新潮クレストブックス 2002年 1900円 31年間に書かれた16編の短編のうち、半分が収められています。「彼方なる歌に耳を澄ませよ」ですっかりマクラウドのファンになってしまいました。 スコットランド…

迷惑な進化

迷惑な進化 ーー病気の遺伝子はどこから来たのか シャロン・モアレム/ジョナサン・プリンス 矢野真千子訳 NHK出版 2007年 1800円 サイエンス系の新刊本を図書館で見つけました。ある種の病気は、進化上のトレード・オフだという事を面白く、わかりやすく説…

ヴォイス 西のはての年代記Ⅱ

ヴォイス 西のはての年代記Ⅱ アーシュラ・K・ル グウィン 谷垣 暁美訳 河出書房新社 2007年 1600円 「ギフト」に続く物語です。オレック・カスプロは語り人となって妻グライ・バーレと共に、遥か南の地アンサルを訪れます。そこはかつて商業都市として栄えた…

悪い時

悪い時 他9編 ガブリエル・ガルシア=マルケス 高見英一 他訳 新潮社 ガルシア=マルケス全小説 2007年 2800円 「百年の孤独」以前に書かれた短編と、それらの短編で描かれる断片的なエピソードがはめこまれた長編「悪い時」。同じエピソードが繰り返し語ら…

幻夜

幻夜 東野圭吾 集英社文庫 2007年 1000円 不用本をたくさん頂いた中に、東野圭吾作品がありました。多作のミステリー作家の作品は、未読、既読がわからなくなってしまいます。「変身」を読み始めたら、途中で既読であることに気がつきがっかり。 「幻夜」「…

彼方なる歌に耳を澄ませよ

彼方なる歌に耳を澄ませよ アリステア・マクラウド 中野恵津子訳 新潮クレストブックス 2005年 2200円 スコットランドのハイランド地方から、カナダ東海岸ケープ・ブレトン島に移住した一族の物語です。いくつもの素晴らしいエピソードが積み重なって、一族…