壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

2009-01-01から1年間の記事一覧

江戸切絵図貼交屏風 辻邦生

江戸切絵図貼交屏風 辻邦生 文藝春秋 1992年 1600円 元旗本の絵師歌川貞芳が美人画の像主(モデル)に選んだ女たちは皆、どこか翳りがある武家の出だった。女たちの内に秘めた想いを手繰り寄せるうちに、幕藩体制の矛盾が生み出す藩の内部抗争の犠牲となった…

パイド・パイパー 自由への越境  ネビル・シュート

パイド・パイパー 自由への越境 ネビル・シュート 池央 訳 創元推理文庫 2002年 700円 『渚にて』が良かったので、もう一つネビル・シュートの作品を読みました。映画にもなっているそうです。古き良き英国の冒険小説ですが、主人公たちはは老人と子供。活劇…

プリーモ・レーヴィは語る―言葉・記憶・希望 プリーモ・レーヴィ

プリーモ・レーヴィは語る―言葉・記憶・希望 プリーモ・レーヴィ マルコ・ベルポリーティ編 多木陽介訳 青土社 2002年 2400円 本書は1960年代初めから亡くなる前の年1986年までの対談が数多く集められています。レーヴィにとって語ることは書くことと同じく…

一応の推定 広川純

一応の推定 広川純 文春文庫 2009年 570円 JR膳所駅で轢死した老人。彼には心臓を患う幼い孫娘がいた。死の三ヶ月前に加入していた傷害保険の支払いを巡り保険会社から調査を依頼されたベテラン調査員・村越の執念の調査が始まる。果たして老人の死は事故…

三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人 倉阪鬼一郎

三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人 倉阪鬼一郎 講談社ノベルス 2009年 800円 ごめんなさい。以下、超ネタバレです。未読の方は要注意です。 読書予定の方(少ないとは思いますが)は見ないでくださいね。 バカな事をしてしまいました。後できっと後悔すると思い…

儚い羊たちの祝宴 米澤 穂信

儚い羊たちの祝宴 米澤 穂信 新潮社 2008年 1400円 青春ミステリはもう無理。だけど本書や「遠回りする雛」など心惹かれる題名で以前から気にはなっていました。ほんの少しのホラーとブラックユーモアがいいですね。 「ラスト一行の衝撃」に徹底的に拘った連…

渚にて ネヴィル・シュート

渚にて ネヴィル・シュート 佐藤龍雄訳 創元SF文庫 2009年 1000円 「人類の終焉」というのはSFの主要なテーマ。現在の流行は「気候変動」なのかと思っていたら、「惑星直列」なんていうのがリバイバルしています。「新人類の誕生(進化)」「地球外生命体の…

CO2と温暖化の正体 ウォレス・S・ブロッカー、ロバート・クンジグ

CO2と温暖化の正体 ウォレス・S・ブロッカー、ロバート・クンジグ 内田昌男監訳 東郷えりか訳 河出書房新社 2009年 2400円 地球温暖化関連本は数多くあるけれど、面白く読めてその上偏っていない本は少ない。偏りと面白さは一体となっていることが多いからだ…

見えない都市 イタロ・カルヴィーノ

見えない都市 イタロ・カルヴィーノ 米川良夫訳 河出書房新社 世界文学全集II-06 2009年 2400円 これはまさに「都市の博物誌」というべきものなのでございましょうか。海上より近づけば砂漠のオアシスのように見え陸路にて近づけば駱駝乗りたちには港町のよ…

数式に憑かれたインドの数学者(上・下) デイヴィッド・レヴィッド

数式に憑かれたインドの数学者(上・下) デイヴィッド・レヴィッド 柴田裕之訳 日経BP社 2009年 各1600円 図書館の新着コーナーで見つけた本です。『素数の音楽』に出てきたインドの数学者ラマヌジャンについては興味がありました。上巻に「ラマヌジャンの…

あまりに騒がしい孤独   ボフミル・フラバル

あまりに騒がしい孤独 ボフミル・フラバル 石川達夫訳 東欧の想像力2 松籟社 2007年 1600円 低調な読書生活を打破しようと、県立美術館に行ったついでに隣にある県立図書館(めったにいかない)で借りてきました。以前に須賀敦子さんの書評にあった『東欧怪…

名犬ラッド A・P ターヒューン

名犬ラッド A・P ターヒューン 岩田欣三訳 岩波少年少女文学全集15 1961年 380円 前回読んだ本『犬の帝国』に戦後TV放送された「名犬ラッシー」(1957年より放送)も話題に出てきて懐かしかったので、たぶん同じ頃に読んだ『名犬ラッド』を再読しました。 …

犬の帝国 アーロン・スキャブランド

犬の帝国 アーロン・スキャブランド 幕末ニッポンから現代まで 本橋哲也訳 岩波書店 2009年 3200円 新着コーナーで見つけた本です。『王を殺した豚 王が愛した象』で興味を持った「歴史の中で動物がどんな役割を演じ(させられ)てきたか」というテーマに沿…

神を見た犬 ディーノ・ブッツァーティ

神を見た犬 ディーノ・ブッツァーティ 関口英子訳 光文社古典新訳文庫 2007年 720円 『クマの王国の物語』に続き、ブッツァーティの短編集です。古典新訳文庫が出た頃に気になっていたのを、やっと読みました。(長編は未読ですが)ブッツァーティは短編の名…

ある秘密 フィリップ・グランベール

ある秘密 フィリップ・グランベール 野崎歓訳 新潮クレストブックス 2005年 1600円 父さんと母さんは何か隠してる…。ひとりっ子で病弱なぼくは、想像上の兄を作って遊んでいたが、ある日、屋根裏部屋で、かつて本当の兄が存在していた形跡を見つける。1950年…

茗荷谷の猫 木内昇

茗荷谷の猫 木内昇 平凡社 2008年 1400円 何処かの書評で見かけて気になっていた本を図書館でたまたま見つけました。 九編の連作短編集。 江戸の終わりから昭和三十年代まで東京という都市の一角でさびしく暮らす普通の人たちの、でも普通とも言い難い浮世離…

アーサー王ここに眠る フィリップ・リーヴ

アーサー王ここに眠る フィリップ・リーヴ 井辻朱美訳 東京創元社BOOKLAND 2009年 2500円 児童書の新着コーナーで見つけた本。あのシリーズもこのシリーズもまだ読みかけの、フィリップ・リーヴが描く歴史ファンタジーでした。これまでのリーヴの中ではイチ…

壊れやすいもの ニール・ゲイマン

壊れやすいもの ニール・ゲイマン 金原瑞人・野沢佳織訳 角川書店 2009年 2800円 図書館の新着コーナーで見つけ、表紙がキレイなので「ニール・ゲイマン」って誰だっけ?というくらいの興味で借りてきました。短編集なので気軽に読み始めたところ、一番目『…

読まず嫌い 千野帽子

読まず嫌い 千野帽子 角川書店 2009年 1700円 「千野帽子」という名前だけは知っていても、「ガーリー」なんていう物からいちばん遠い所にいるおばさんとしては、読まず嫌い。でも冒頭のこの文句↓があまりにツボにはいってつい吹き出し、図書館の新着コーナ…

シチリアを征服したクマ王国の物語 ディーノ・ブッツァーティ

シチリアを征服したクマ王国の物語 ディーノ・ブッツァーティ 天沢退二郎/増山暁子訳 福音館文庫 2008年 650円 このところ読書が思うように進まないのは、老化現象かな。老眼が進行し眼鏡の度が合わなくなったので、行間の広い大きな活字の本を選んでいます…

マルコヴァルドさんの四季 イタロ・カルヴィーノ

マルコヴァルドさんの四季 イタロ・カルヴィーノ 関口英子訳 岩波少年文庫158 2009年 680円 1963年出版、1968年に翻訳され久しく絶版となっていたものが、今年復刊されました。 マルコヴァルドさんは大家族を抱えた貧しい労働者です。都会の真ん中で暮らしな…

インターセックス 帚木蓬生

インターセックス 帚木蓬生 集英社 2008年 1900円 続けて帚木蓬生を読みました。『聖灰の暗号』は歴史サスペンスでしたが、これは医学サスペンス。 生殖と移植では「神の手を持つ名医」と評判の岸川卓也院長が率いる、贅沢な施設と高度な医療を誇るサンビー…

聖灰の暗号(上・下) 帚木蓬生

聖灰の暗号(上・下) 帚木蓬生 新潮社 2007年 各1500円 『ダヴィンチコード』の亜流だなどと勝手に思い込んで、貰った本を長いこと放置してありましたが、読んでみたらなかなか面白い! 歴史学者の須貝は、異端としてローマ教会から激しい弾圧を受けたカタ…

チャイルド44 トム・ロブ・スミス

チャイルド44(上・下)トム・ロブ・スミス 田口俊樹訳 新潮文庫 2008年 各700円 一年前に話題になった時には読みたくてたまらなかったのに、貰って自分のものになった途端に積んでいました。続編も出たようなので、やっと読み始め・・・一日で読んでしまいま…

匂いの人類学 鼻は知っている エイヴリー・ギルバート

匂いの人類学 鼻は知っている エイヴリー・ギルバート 勅使河原まゆみ訳 ランダムハウス講談社 2009年 2000円 オルファクトグラム 匂いの帝王 匂い-その分子構造 匂いと香りの科学 香水-ある人殺しの物語- 匂いたつ官能の都 香りの愉しみ 匂いの秘密 これら…

女中譚 中島京子

女中譚 中島京子 朝日新聞出版 2009年1400円 昔女中や女給やダンサーをしていたという九十歳のすみばあさんは、秋葉原のメイド喫茶にたむろして、自身のしたたかな人生を軽妙に語る。 昭和初期の「女中小説」をトリビュートした連作短編集だそうです。元の作…

ジャングル アプトン・シンクレア

ジャングル アプトン・シンクレア大井浩二訳 松柏社アメリカ古典大衆小説コレクション5 2009年 3500円 映画化に伴って再版されたシンクレアの『石油!』を読んだ後、食肉業界の実態を赤裸々に描いて世論を動かし、ルーズヴェルト大統領による食品薬品管理法…

人情裏長屋 山本周五郎

人情裏長屋 山本周五郎 新潮文庫 1980年 520円 山本周五郎作品は昔、新潮文庫でたくさん読みましたが、物置に残っていたのはこの一冊だけでした。処分する前に再読。片付けはいっこうに捗らない・・・。 「長屋」と言えば山本周五郎を思い出すくらい…

エッシャー宇宙の殺人 荒巻義雄

エッシャー宇宙の殺人 荒巻義雄 中公文庫 1986年 420円 昭和五十八年刊『カストロバルバ』の改題。 庭の物置にある多量の本の片付けを再開しました。原則として「B○○K○FF」か「古紙回収」かの「二択」を自分に課していますが、うまくいきません。「取って置…

ペンギンの憂鬱 アンドレイ・クルコフ

ペンギンの憂鬱 アンドレイ・クルコフ 沼野恭子訳 新潮クレストブックス 2004年 2000円 リュドミラ・ウリツカヤの「ソーネチカ」と「それぞれの少女時代」の沼野恭子さんの翻訳がとても読みやすかったので、現代ロシア文学に興味がわいてます。 キエフで新聞…