壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

エクソダス症候群  宮内悠介

エクソダス症候群 宮内 悠介 創元SF文庫 電子書籍 「火星シリーズ」の6冊目は初読み作家の作品。また面白いものに出会った。切れのよい文章で、精神医学の歴史と問題点を探りながら、主人公の出生の秘密を追うミステリ仕立てでもある。舞台は未来の火星で…

脳釘怪談  朱雀門 出

脳釘怪談 朱雀門 出 竹書房怪談文庫 Kindle Unlimited 著者のデビュー作『今昔奇怪録』を15年近く前に読みました。ホラーだけれど、読者を怖がらせる意図がない、あまり怖くない怪談でした。『脳釘怪談』はシリーズ7冊で、表紙がおどろおどろしいので敬遠し…

破滅の王  上田早夕里

破滅の王 上田早夕里 双葉文庫 電子書籍 第二次大戦中の上海、満州を舞台にした歴史小説で、生物兵器の開発にかかわる科学者と、それを阻止しようとする者たちの物語だ。 1936年、満州事変から五年後、上海にある上海自然科学研究所に赴任した宮本敏明は、国…

ハイ・ライズ   J・G・バラード

ハイ・ライズ J・G・バラード 村上 博基 訳 創元SF文庫 電子書籍 前冊のマンション繋がりで………タワマン文学というのがあるそうだが、1975年に書かれたバラードの『ハイ・ライズ』は元祖タワマンSF小説だろう。 ロンドン郊外の40階建ての新築高層マンショ…

サハマンション   チョ・ナムジュ

サハマンション チョ・ナムジュ 斎藤真理子訳 筑摩書房 電子書籍 韓国に寄ってみました。フェミニズム小説『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者、チョ・ナムジュの二冊目は『サハマンション』。 極端な格差社会の中で、ライフラインもおぼつかない、荒廃した…

夢みる葦笛  上田早夕里

夢みる葦笛 上田早夕里 光文社文庫 電子書籍 上田早夕里さんの三冊目は10編の短編集です。広義にはSFですが、音楽、宇宙、怪奇、歴史、人工知能などをテーマとして、思索的な深みもある作品ばかりでした。短編とはいえ、読み始めてすぐに物語の背景世界が浮…

鳥肌が  穂村弘

鳥肌が 穂村弘 PHP文芸文庫 電子書籍 インパクトのある表紙で、「ジャケ買い」しました。電子書籍だってジャケ買いすることはあります。初読みの作家の作品なので、すごく怖いホラー小説だと思い込んでいました。歌人にしてエッセイストの作者にはたくさんの…

モーリス  E・M・フォースター

モーリス E・M・フォースター 加賀山卓朗 訳 光文社古典新訳文庫 電子書籍 フォースターが生前には出版できなかったといういわくつきの本です。『ハワーズ・エンド』『眺めのいい部屋』で主題だった、20世紀初頭のイギリスの中流階級の人間模様という点には…