壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

2020-01-01から1年間の記事一覧

ぼぎわんが、来る 澤村伊智

ぼぎわんが、来る 澤村伊智 角川ホラー文庫(電子書籍) 映画をアマプラで居眠りしながら見てよくわからず消化不良となり,原作を読む。第一章の語りは知紗の父である田原秀樹。家族思いのイクメンであるらしいが,実は勘違いパパであることがかすかな違和感…

夢見る帝国図書館 中島京子

夢見る帝国図書館 中島京子 文藝春秋 2019年5月 フリーライターの”私”が国際子ども図書館の取材の帰りに上野公園のベンチで知り合った初老の喜和子さんは,不思議な人物だった。喜和子さんとたまに出会って話をするたびに,彼女のこれまでの人生の謎の部分が…

鈴木家の嘘 野尻克己

鈴木家の嘘 野尻克己 ポプラ社 2020年6月 鈴木家の長男・浩一が引きこもりの末自死し,母はショックで意識不明になった。49日に意識を取り戻したが,浩一に起きたことを一切覚えていない。父と長女は,「浩一は引きこもりをやめてアルゼンチンで働いている」…

ウインター・ホリデー 坂木 司

ウインター・ホリデー 坂木 司 2014年 文春文庫 電子書籍 ワーキング・ホリデーの続編。元ヤン・ホストの宅配配達員のヤマトと息子進の親子関係がどんな風に進展していくのか楽しみなところ。夏休みの初めての出会いから数か月,冬休みに入った進とやっと会…

ワーキング・ホリデー 坂木 司

ワーキング・ホリデー 坂木 司 2020年 (文春文庫) Kindle版 元ヤンキーのホストのヤマトが,突然訪ねてきた小学五年の息子進と暮らし始める。ホストをくびになって,宅配の配達員として働き始めるヤマトと,料理も掃除も一人前にできるしっかり者の進。登場…

霧が晴れた時 小松左京

霧が晴れた時 小松左京 角川ホラー文庫 電子書籍 小松左京の自選恐怖小説集です。、どれも相当前に読んだ覚えがあるのですが、再読でも楽しめました。「昭和」の世相を背景に、伝承や神話も題材に、SF風味も加えて盛りだくさんです。文庫本換算400ページ越え…

笹の船で海をわたる 角田光代

笹の船で海をわたる 角田光代 毎日新聞社 2014年9月 電子書籍 64歳の佐織の回想から始まる、昭和を生きた「女の一生」(角田版)。あの時代にあってごく平凡な生き方をしてきた佐織と、学童疎開先でであったという少し年下の風美子は結婚によって義理の姉妹…

風と行く者 上橋菜穂子

風と行く者 上橋菜穂子 守り人シリーズ電子版 2018年11月 「守り人」の外伝もこれで最後なのだろうか。バルサとジグロの物語は、13歳のバルサ(『流れ行く者』)、15歳のバルサ(『炎路を行く者』)に続く物語だ。サダン・タラム〈風の楽人〉という旅芸人の…

炎路を行く者 上橋菜穂子

炎路を行く者 上橋菜穂子 偕成社軽装版ポッシュ 2014年 完結したと思っていた守り人シリーズのうれしいオマケがもう一つ。 守り人の登場人物には、本編で語られなかったけれど確かな物語がそれぞれにある。十代半ばのヒュウゴとバルサのそれぞれの成長が、深…

黄金列車 佐藤亜紀

黄金列車 佐藤亜紀 角川書店 2019年10月 第二次世界大戦末期のハンガリー、敗色の濃いブタペストからユダヤ人の没収財産を積んだ列車がドイツに向けて出発した。四十数両に及ぶその列車の運営と管理を任されたハンガリー大蔵省の官吏たちの物語だ。一見ドラ…

海辺の王国 ロバート・ウェストール

海辺の王国 ロバート・ウェストール 徳間書店 1994年6月 1942年夏の英国で、ドイツ軍の空襲によって家族と家を失った12歳のハリーは、迷い犬ドンを道連れに北海に面した海辺を北に向かって放浪をはじめました。 親戚のおばさんの所には行きたくないし、避難…

アウシュヴィッツのタトゥー係 ヘザー・モリス

アウシュヴィッツのタトゥー係 ヘザー・モリス 双葉社 2019年9月 収容所で生きのびるため同胞に番号を刺青するタトゥー係の男性が、そこで出会った女性との愛を貫く物語。実話をもとにしたフィクションということで、アウシュヴィッツから生還したユダヤ人か…

あずかりやさん 桐島くんの青春 大山淳子

あずかりやさん 桐島くんの青春 大山淳子 ポプラ文庫 2018年7月 あずかりやさんの二作目です。 『プロローグ』『あくりゅうのブン』 文机が語る作家志望の男の話。長い間あずけられて文机がぼやきます。 『青い鉛筆』 中学一年生の女の子が、思い余って青い…

あずかりやさん 大山淳子

あずかりやさん 大山淳子 ポプラ文庫 2015年6月 商店街の片隅にある元和菓子屋が「あずかりやさん」。年若い店主が1日百円でどんなものでもあずかる。持ち込めるものならどんなものでもOK。ただし期限を過ぎて取りに来ないと、店主の物になってしまう。店主…

ピアノ・レッスン アリス・マンロー

ピアノ・レッスン アリス・マンロー 小竹由美子 訳 新潮クレストブック 2018年11月 マンローの処女作を含む初期短編集。その描写の精緻で辛辣な特徴は晩年まで一貫していたらしい。心に刺さった棘は、長い間忘れていればそう痛むものではなくなっているが、…

占(うら) 木内 昇

占(うら) 木内 昇 2020年1月 新潮社 1800円 十年以上前に読んだ、この作者の『茗荷谷の猫』 は印象深かった。同じ連作短編だが、雰囲気はだいぶ違う。女たちの心情がより明確に描かれていてとてもいい。 大正の末期頃なのだろうか、職業婦人も専業主婦も家…