壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

2010-01-01から1年間の記事一覧

シューマンの指 奥泉光

シューマンの指 奥泉光 講談社 2010年 1600円 朝六時に起きて、この本を開きながらテレビをつけると、シューマンのピアノ協奏曲が鳴っているではありませんか。その偶然に気をよくして読み始めました。そうか生誕二百年でしたか。「楽しき農夫」や「トロイメ…

原稿零枚日記 小川洋子

原稿零枚日記 小川洋子 集英社 2010年 1300円 原稿がちっとも進まない小説家の日記という形をとった小説です。日常が奇妙にねじれて、別の世界へ向かってなめらかに逸脱していくありさまに、期待感と不安感で心が騒ぎます。短編集『妊娠カレンダー』に共通し…

ズルい言葉 酒井順子

ズルい言葉 酒井順子 角川春樹事務所 2010年 1300円 「ある意味」、「おバカ」、「嫌いじゃない」、「していいですか?」、「どこか懐かしい」、「今度ご飯でも」「なかなか」、「普通に」、「もしアレだったら」・・・・・・断定的に言いたくない、責任を取…

東京の台所 北京の台所 ウー・ウェン

東京の台所 北京の台所 ウー・ウェン 岩崎書店 2004年 1300円 一人暮らしの食卓では、食べることへの喜びが少ないのが悩みです。毎食調理するのが無駄に思えて、作り置きの惣菜を毎食、食べ続けるという日が続きます。それはそれで、合理的だとは思うのです…

アイルランド・ストーリーズ  ウィリアム・トレヴァー

アイルランド・ストーリーズ ウィリアム・トレヴァー 栩木伸明訳 国書刊行会 2010年 2400円 悲喜こもごもの人間関係と、登場人物の心の襞が深く描かれているばかりか、軽やかな筋運びで読み終え、その余韻にじわっと感じ入ってしまう、そんな短編がアイルラ…

横道世ノ介 吉田修一

横道世ノ介 吉田修一 毎日新聞社 2009年 1600円 横道世ノ介、名前は変わっているけれど、ごくふつうの青年。大学入学のため上京したばかりの純朴な18歳。人懐っこくて、人がいい。断りきれずにサンバサークルに入ってしまう。東京の雑踏にもまれながらもマイ…

喋る馬 バーナード・マラマッド

喋る馬 バーナード・マラマッド スイッチ・パブリッシング 柴田元幸翻訳叢書 2009年 2100円 『レンブラントの帽子』でマラマッドに心惹かれて、二冊目はこの短編集。『ユダヤ鳥』は昔読んだことがあって、そのときはあまりよくわからなかったのですが、この…

パレード 吉田修一

パレード 吉田修一 幻冬舎文庫 2004年 560円 マンションの一室で共同生活を送る男女四人。親しそうに見えるけれども、善意のうわべだけでホンネでは付き合わない、奇妙なバランスができている。そこにサトルが加わっった。 杉本良介:21歳・H大学経済学部3年…

アホの壁 筒井康隆

アホの壁 筒井康隆 新潮新書 2010年 680円 いちおう筒井ファンなので新作は読むことにしています。 なぜそんなアホなことをするのか、そしてアホなことを言うのか? 無益な争いに血眼になり、破綻必至の計画を立て、互いに殺しあうに至るのは、いったいなぜ…

使命と魂のリミット 東野圭吾

使命と魂のリミット 東野圭吾 角川文庫 2010年 740円 一週間ほど家を離れているので、気軽なミステリが続きました。『プラチナデータ』に比べれば少し持ち重りのする人間ドラマ。 「医療ミスを公表しなければ病院を破壊する」突然の脅迫状に揺れる帝都大学病…

プラチナデータ 東野圭吾

プラチナデータ 東野圭吾 幻冬舎 2010年 1680円 読み始めは、犯罪捜査におけるDNAデータベースのコールド・ヒットと冤罪問題のような社会派ミステリかと思っていたのですが、SFタッチの軽いミステリで一気読みしてしまいました。 DNAという究極の個人情報を…

初陣 隠蔽捜査3.5 今野敏

初陣 隠蔽捜査3.5 今野敏 新潮社 2010年 1500円 8つの連作短編。中途半端な3.5というのは、隠蔽捜査シリーズの外伝もしくはスピンアウトということらしい。竜崎の幼なじみであるキャリア同期の伊丹が主人公にはなっているんですが、主眼は、あまり登場しない…

蒼路の旅人 上橋菜穂子

蒼路の旅人 上橋菜穂子 偕成社軽装版ポッシュ 2008年 900円 タルシュ帝国がせまり、不安がたかまる新ヨゴ皇国。皇太子チャグムは罠と知りながら、隣国の救援にむかう。海を越え、チャグムのはるかな旅がはじまる。 チャグムはさらに成長し、(いささか「デキ…

ウィルバーフォース氏のヴィンテージ・ワイン ポール・トーディ

ウィルバーフォース氏のヴィンテージ・ワイン ポール・トーディ 小竹由美子訳 白水社エクス・リブリス 2010年 2600円 酔っ払いも「信頼できない語り手」の一人であるわけで、冒頭のハッピーな語り口の裏に、語り手の危機的状況が透けて見えてきます。進行し…

レンブラントの帽子 バーナード・マラマッド

レンブラントの帽子 バーナード・マラマッド 小島信夫・浜本武雄・井上謙治訳 夏葉社 2010年 1680円 あちこちで紹介されていて、小さな出版社の第一冊目ということなので、珍しく購入しました。マラマッド、もう少し読みたいので、『喋る馬』の方は図書館で…

患者の孤独 柳澤桂子

患者の孤独 柳澤桂子 草思社 2003年 1300円 知り合いの方に久しぶりにお目にかかりました。実は具合が悪くて臥せっていらしたとの事、身体に痛みがあるのに医者にかかっても原因がわからないのだそうです。たぶん苦しいでしょうに元気そうに振舞っていらっし…

神の守り人<来訪編><帰還編>  上橋菜穂子

神の守り人<来訪編><帰還編> 上橋菜穂子 偕成社軽装版ポッシュ 2008年 各900円 バルサは人買いの手からチキサとアスラの兄妹を助けた。ロタ王国の「タルの民」である彼らは、ロタ人からもカシャルという王家の隠密たちからも追われる身だった。アスラが…

パズル・パレス(上・下) ダン・ブラウン

パズル・パレス(上・下) ダン・ブラウン 越前敏弥・熊谷千寿訳 角川文庫 2009年 各660円 NSA(国家安全保障局)の暗号解読用スパコン「トランスレーター」は秘密裡に全世界のEメールを傍受解読している。解雇された元NSA局員エンセイ・タンカドは、解読不…

暁英 贋説・鹿鳴館 北森鴻

暁英 贋説・鹿鳴館 北森鴻 徳間書店 2010年 1900円 『河鍋暁斎』つながりで、北森さんの未完の絶筆という小説を教えていただきました。べるさん、ありがとう。関連本をタイムリーに知る事ができるというのもブログの楽しみの一つです。 『暁英』は英国人建築…

コーデックス レヴ・グロスマン

コーデックス レヴ・グロスマン 三川基好訳 ソニー・マガジンズ 2006年 2000円 『古書の来歴』を返すついでに、図書館の開架書棚で見つけた本。古書ミステリらしいので借りてみたものの、どうも期待薄・・・でも、それを承知で読み始めました。 投資銀行のア…

虚空の旅人 上橋菜穂子

虚空の旅人 上橋菜穂子 偕成社軽装版ポッシュ 2007年 900円 『守り人』シリーズ四作目です。14歳になったチャグムは、父帝の代理として隣国サンガルの<新王即位ノ儀>に招かれました。海洋国サンガルに手を延ばす、南の強大なタルシュ帝国の陰謀に巻き込ま…

耳で読む読書の世界 二村晃

耳で読む読書の世界 二村晃 音訳者とともに歩む 東方出版 2010年 1500円 最近、勉強し始めた音訳関連の本です。耳で読書を楽しむようになって二十五年になるという著者は、下読みなしのぶっつけ本番の対面朗読のころからの長い経験をお持ちで、音訳者(朗読…

反骨の画家河鍋暁斎

反骨の画家 河鍋暁斎 狩野博幸 河鍋楠美 新潮社 トンボの本 2010年 1500円 幕末から明治にかけて活躍した絵師「河鍋暁斎(かわなべ きょうさい)」の没後120年記念の展覧会が三島の佐野美術館で開催中(9月4日から10月11日まで)。今週見に行く予定ですので…

古書の来歴 ジェラルディン ブルックス

古書の来歴 ジェラルディン ブルックス 森嶋マリ訳 ランダムハウス講談社 2010年 2300円 史実をエッセンスにフィクションを再構成した『マーチ家の父』が面白かったので、ラルディン・ブルックスの三作目の小説(邦訳としては最初)を読みました。美しい細密…

血統 ぺディグリー 門井慶喜

血統 ぺディグリー 門井慶喜 文藝春秋 2010年 1650円 『おさがしの本は』で知った門井さんの新刊です。幸運にも新着図書の棚で発見! 高名な日本画家を祖父と父に持つ三代目の時島一雅は、血統へのプレッシャーからか日本画を捨て、今はペット肖像画を生業と…

RETROの庭・・・園芸日記のインデックス

RETROの庭・・・園芸日記のインデックスを作りました。 ❀❀❀❀❀❀ RETROの庭 ❀❀❀❀❀❀ スローもロハスも縁遠く、雑草との戦いをさっさと諦めてプランター園芸をしている初心者です。たいした手間をかけなくても、季節が来れば咲く花の記録として不定期掲載。 ❀201…

夢の守り人 上橋菜穂子

夢の守り人 上橋菜穂子 偕成社軽装版ポッシュ 2007年 900円 人の夢を糧とする異界の“花”に囚われ、人鬼と化したタンダ。女用心棒バルサは幼な馴染を救うため、命を賭ける。心の絆は“花”の魔力に打ち克てるのか? 開花の時を迎えた“花”は、その力を増していく…

おそろし 宮部みゆき

おそろし 宮部みゆき 三島屋変調百物語事始 角川書店 2008年 1700円 第一話から第四話までが、最後話第五話の前置きのようです。そう考えないと、実に落ち着きが悪い。異世界の扉(=心の扉)の錠前を開けるのには、相当な力が要るんです。どれも結末のつけ…

フグはフグ毒をつくらない 野口玉雄

フグはフグ毒をつくらない 野口玉雄 成山堂書店 ベルソーブックス 2010年 1800円 今年の夏は暑かった、いやまだまだ暑いですが・・。温暖化なのか、海水温の上昇とともに、南の海に生息していた有毒ヒョウモンダコが北上しているというニュースを目にしまし…

闇の守り人 上橋菜穂子

闇の守り人 上橋菜穂子 偕成社軽装版ポッシュ 2006年 900円 『精霊の守り人』シリーズニ作目。 チャグムたちと別れて、養父ジグロの汚名をすすぐため、生国カンバルに向かったバルサ。でもそこで明らかになった事実は、バルサをさらなる闘いへと導きます。今…