壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

死体は笑みを招く   ネレ・ノイハウス

死体は笑みを招く   ネレ・ノイハウス

酒寄進一訳   創元推理文庫

オリヴァー&ピア・シリーズの二作目。動物園で見つかった切断死体。被害者は高校教師で過激な環境活動家。彼は周囲の大人たちには疎まれていましたが、若者には人気がありました。相変わらず、登場人物が多すぎ、ドイツ名が覚えられずに四苦八苦でした。誰が誰の家族、友人、隣人???。

フランクフルトに近いタウヌス地方の高級住宅地には、道路開発に絡んだ収賄疑惑に関与する金持ち連中が住んでいます。環境問題に関する軋轢なのか、若者たちのIT関連の事業の企みなのか、何が事件の背景なのかが、ちっとも見えてきません。

捜査が進むにつれて、関連する事件が次々に起きて、容疑者がどんどん増えていき、やっと登場人物の名前と関係性が理解できた頃には、捜査は手に汗握る最終展開でした。最後のケーニヒシュタイン古城での場面は絵になりますね。

 

前作『悪女は自殺しない』では冷静で落ち着きのある女性だと思っていたピアが、本作ではなぜか情緒不安定。事件の容疑者に惚れたり惚れられたりで、キャラ変しているみたい。危なっかしくて、ハラハラ。捜査チームのいけ好かない同僚フランクにもイライラしていました。オリヴァーも家庭の問題でイライラしている様子で、それもまた面白い。

2006年にドイツで開催されたサッカーワールドカップで、ドイツが決勝トーナメント出場を決めた6月15日に最初の事件が起き、準々決勝が行われた6月30日に事件が解決しているので、皆サッカーの試合と勝敗に振り回されている感があります。

日付順に描かれているので叙述トリックを心配することもなく、犯人は誰でしょう?みたいな読者への挑戦もないミステリです。一応社会問題を扱っているけれど、エンタメ性が強く、ただただ楽しんで読み終えました。次作の第三作は、最初に邦訳された評判の高い『深い疵』です。楽しみ!