壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

悔恨の日  コリン・デクスター

悔恨の日  コリン・デクスター

大庭忠夫訳  ハヤカワミステリ文庫 電子書籍

モース警部(Inspector Morse)シリーズの最終巻です。まさにモースの悔恨の日(The Remorseful Day)でした。

一年前のイヴォンヌ・ハリスン殺人事件は未解決のままでしたが,テムズ・バレイ警察署に匿名電話があったことから,捜査が再開されます。体調不良で休んでいたモース主任警部は,友人であり上司であるストレンジ主任警視に促されて,捜査を始めます。例によって,ルイス部長刑事を混乱させながら,モースの迷走する推理が展開されます。錯綜する筋書きに少々うんざりしながら,読みました。

モース警部シリーズは第一作『ウッドストック行最終バス』を読んだだけで,第十三作目にして最終作の本書を読んでしまいました。順番を間違えたわけではありません。テレビドラマで『主任警部モース』のシリーズ全部と,さらに後日譚である『ルイス警部』,前日譚である『刑事モース』を見ているので,原作を全部読むのが面倒になったからです。

ドラマの『悔恨の日』はすこし覚えていたので,本を読みながら既視感ばかりで,犯人も知っていたし,あまり面白くありませんでした。ところが最後の最後,ドラマと違うところがありました。ストレンジの告白で,モースがストレンジに抱いていた友情が明らかになります。ルイスがモースの誠実な人柄を思って静かに涙を流す場面に,一緒に感動してしまいました。

シリーズ未読の11冊も,死ぬまでに読めたらいいなあ。でも他にも読みたい本がたくさんあるのね。死ぬときに「あの本が読みたかったなあ」と悔恨しないように。