壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

何があってもおかしくない  エリザベス・ストラウト

何があってもおかしくない  エリザベス・ストラウト

小川高義訳  早川書房   図書館本

私の名前はルーシー・バートン』で、ルーシーと母親の会話の中に断片的に出てきた人々が、たくさん登場する。本作の導入として『ルーシー・バートン』が書かれたのかと思うくらいだった。名前は覚えていなくても、「この人知ってる!」と思い当たる。キャラクターが印象的だったのだろう、確かめたくて『ルーシー・バートン』(電子書籍)を読み返してみたり人名を検索してみたりで、少し忙しい読書になったので再読したいと思う。

ルーシーの生まれ故郷である、アメリカ中西部のアムギャッシュという田舎町が主な舞台。何もないような貧しい土地で今も暮らす人々、成功を目指して都会へ出ていく人々の物語が9編。それぞれの人物に焦点があてられるが、狭い町なのでいろいろな人物があちこちにひょっこり顔を出す。視点となる人物が変わるたびに、断片的に語られる人物の印象が次第に明らかになってくる所が面白い。

のどかな田舎町のような風景の中で、人々は重苦しい記憶を抱えている。貧困、ネグレクト、家族、性的問題、戦争体験等に苦しんでいるが、日常生活の中にふと救われる瞬間がある。厚い雲から一すじの光が差すような気持にさせられたが、その光もすぐに消える。

意味の分からない絵を何枚も重ねているうちに、はっきりとした図柄が見えてくる。しかし、もっと重ねていくとわけがわからなくなる。いろんなものが見えてきたり、見えなくなったり、分かったと思ったものが分からなくなったりする。人生もさまざまで、何があってもおかしくない

 

 

図書館本なので、視点人物をメモっておく。

標識」トミー・ガプティルは所有していた酪農場を火事で失い、公立校で用務員の仕事を得た。♪家に居場所が無くて学校に居残りしていたルーシーに親切にしてくれた人だ! 実家に一人暮らしの兄ピートを気にかけている。

風車」パティ・ナイスリーは高校で進路指導をしている。ルーシーの姪ライラを面接する。パティはナイスリーの三姉妹。

ひび割れ」リンダ・ピーターソン=コーネルはパティの姉で、シカゴ近郊で裕福に暮らす。家に女流写真家を泊めることになった。

親指の衝撃論」マリリンと結婚したチャーリー・マコーリーは、辛い戦争体験に苦しんでいる。

ミシシッピ・メアリ」末っ子のアンジェリーナは、イタリアに住む年老いた母親に会いに行った。母メアリは昔、五人姉妹を捨てたのだった。

」ずっと疎遠だった実家を訪れたルーシー。兄パティと姉ヴィッキーと会う。

ティーの宿屋」ドティーは、ルーシーの母親の従姉妹の娘で、エイベル・ブレインの妹。B&Bを経営していて、客から女優アニー・アプルビイの話をきく。

雪で見えない」アニー・アプルビイは久しぶりに故郷のメイン州に帰り、家族の秘密を知ってしまう。

贈りもの」エイベル・ブレインは事業に成功して裕福に暮らしている。孫の失くしたオモチャをとりに、クリスマスの劇場に戻ったが・・・・あーあ。