壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

2010-01-01から1年間の記事一覧

ひとりの午後に 上野千鶴子

ひとりの午後に 上野千鶴子 NHK出版 2010年 1300円 『スカートの下の劇場』を読んで恐れをなし、ジェンダー論にはついていけず、シングルアゲインになって『おひとりさまの老後』を本屋で立ち読みしただけ。思い込んでいたイメージとは全く違う題名『ひとり…

神父と頭蓋骨 アミール・D・アクゼル

神父と頭蓋骨 アミール・D・アクゼル 北京原人を発見した「異端者」と進化論の発展 林大訳 早川書房 2010年 2200円 敬虔なイエズス会の司祭であったピエール・テイヤール・ド・シャルダン(1881-1955)は、地質学・古生物学を研究する科学者でもありました。…

生物の驚異的な形 エルンスト・ヘッケル

生物の驚異的な形 エルンスト・ヘッケル 小畠郁生監修, 戸田裕之訳 河出書房新社 2009年 2800円 「ヘッケルの系統樹」と「個体発生は系統発生を繰り返す」という言葉で有名なエルンスト・ヘッケルは、科学者であると同時に芸術家でもありました。その代表的…

新・御宿かわせみ 平岩弓枝

新・御宿かわせみ 平岩弓枝 文春文庫 2010年 600円 やっと、文庫版が出ました。御宿かわせみから通算35巻目になります。 舞台は明治六年、江戸を舞台にした最後の「かわせみ」から、もう何年も時が過ぎたようです。英国に留学したという神林麻太郎が帰国した…

薔薇の家、晩夏の夢 倉阪鬼一郎

薔薇の家、晩夏の夢 倉阪鬼一郎 創元クライム・クラブ 2010年 1900円 『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』で衝撃的な出会いをしてしまった倉阪さんの最新作を見つけました。耽美!? 最初のエピグラフは、ウイリアム・ブレイク。「薔薇と暗号に満ちた幻想的ミス…

精霊の守り人 上橋菜穂子

精霊の守り人 上橋菜穂子 偕成社軽装版ポッシュ 2006年 900円 こういう長いシリーズ物は、何かきっかけがないと、読み始めるのが難しいですね。少し前にアニメ化されたものを数話見たのですが、それ以上見る気にも読む気にもなれませんでした。ところが『精…

観光 ラッタウット・ラープチャルーンサップ

観光 ラッタウット・ラープチャルーンサップ 古屋美登里訳 ハヤカワepiブック・プラネット 2007年 1800円 たった今、世界から鮮やかに切り取られた、したたるようなみずみずしさを持つ作品ばかり、っていうのはちょっと言い過ぎかしらん。でも、アメリカ生ま…

ランポール弁護に立つ ジョン・モーティマー

ランポール弁護に立つ ジョン・モーティマー 千葉康樹訳 河出書房新社 (KAWADE MYSTERY) 2008年 2400円 リーガル・サスペンスといえば、古いところでガードナーのペリー・メイスン、最近のではスコット・トゥローやジョン・グリシャムなど、思い浮かべるのは…

マーチ家の父 もう一つの若草物語 ジェラルディン・ブルックス

マーチ家の父 もう一つの若草物語 ジェラルディン・ブルックス 高山真由美訳 武田ランダムハウスジャパン2010年 2200円 大昔に『若草物語』『続若草物語』『第三若草物語』『第四若草物語』は読みましたが、そういえばマーチ家の父親の影はごく薄かったと思…

月が昇らなかった夜に ダイ・シージエ

月が昇らなかった夜に ダイ・シージエ 新島進訳 ハヤカワepiブックプラネット 2010年 1700円 フランス語で小説を書くダイ・シージエの長編小説第三作です。青春小説であった『バルザックと小さな中国のお針子』や喜劇的風味の『フロイトの弟子と旅する長いす…

サラの鍵 タチアナ・ド・ロネ

サラの鍵 タチアナ・ド・ロネ 高見浩訳 新潮クレストブックス 2010年 2300円 1942年7月、ヴィシー政権下のパリで一万人を越えるユダヤ人の一斉検挙が行われました。ヴェロドローム・ディヴェール(ヴェルディヴ)という屋内競技場に連行監禁され、その後アウ…

スカーペッタ パトリシア・コーンウェル

スカーペッタ パトリシア・コーンウェル 池田真紀子訳 講談社文庫 2009年 各880円 シリーズ第16作だそうで、もういい加減にやめようかと思いつつ、前作『異邦人』でのマリーノやローズの事が気になって、やはり読んでしまいました。事件そのものは猟奇性が少…

交換教授 デイヴィッド・ロッジ

交換教授 デイヴィッド・ロッジ 高儀進訳 白水Uブックス 1984年 「屈辱」というゲームでつとに有名な『交換教授』。1969年、英米のそれぞれの大学で英文学を教える教師が、『交換教授』という制度で互いのポストを交換するという設定です。この二人、最後に…

流転山脈 梓林太郎

流転山脈 梓林太郎 幻冬舎ノベルス 1997年 群馬・月夜野町で、東京からの客を乗せたタクシーの運転手が殴殺されて見つかった。車内のメーターは東京‐群馬の二倍の料金。それから七日後、北アルプスでは遭難を偽装した男性の殺人事件が発生。長野・豊科署の道…

不等辺三角形 内田康夫

不等辺三角形 内田康夫 講談社 2010年 1700円 内田康夫デビュー30周年記念の第三弾、浅見光彦の事件としては109番目の作品だそうです。名古屋の旧家に伝わる仙台箪笥のなかから出てきた五言絶句。旅情と人情と歴史がからみあい、例によって例のごとく三十三…

リヴァトン館 ケイト・モートン

リヴァトン館 ケイト・モートン 栗原百代訳 ランダムハウス講談社 2010年 3000円 老人ホームで暮らす98歳のグレイスが語り始めるのは、かつてメイドとして仕えたリヴァトン館での出来事でした。二つの大戦を経て変っていくイギリス階級社会、時代に翻弄され…

蘇る「王家の谷」近藤二郎

蘇る「王家の谷」近藤二郎 新日本出版社 2007年 1400円 トリノエジプト展が国内巡回の最後に静岡県立美術館にやってきたので、ちょっと勉強。死後の再生と復活のための遺体保存としてのミイラ造りの変遷などが簡単に説明されていました。 エジプトの発掘が、…

ケンブリッジ・サーカス 柴田元幸

ケンブリッジ・サーカス 柴田元幸 スイッチ・パブリッシング 2010年 1800円 柴田さんのエッセイというか、紀行文というか、ファクトとフィクションの境界が曖昧で、かつての自分の姿がいたるところに幻視のように現れ、「嘘だー」と声に出してしまった眉唾の…

かのこちゃんとマドレーヌ夫人 万城目学

かのこちゃんとマドレーヌ夫人 万城目学 ちくまプリマー新書 2010円 860円 かのこちゃんが小学校に上がる少し前、「ゴリラじゃないやつ」(ゲリラ豪雨のことだけど)が降った日に、マドレーヌ夫人は玄三郎の小屋に現れました。かのこちゃんによれば、犬の玄…

棟居刑事の凶存凶栄 森村誠一

棟居刑事の凶存凶栄 森村誠一 角川文庫 2010年 660円 「読む本が無い!」という恐怖を久しぶりに味わいました(笑)。出先で持っていた本を読み終えてしまい、早朝の新宿駅から本を持たずに三時間の高速バスに乗る羽目になりかけ、開店前の紀伊国屋書店を恨…

オーファーザー! 伊坂光太郎

オーファーザー! 伊坂光太郎 新潮社 2010年 1600円 高校生の由紀夫には四人の父親がいます。カルテットのような父親たちは、それぞれに個性豊か(・・・なはずなんだけれど、いまいちインパクトがない・・)と同居しているありふれた(・・・ありふれていな…

夜 エリ・ヴィーゼル

夜 エリ・ヴィーゼル [新版] 村上光彦訳 みすず書房 2010年 2800円 1944年、トランシルヴァニアの小さな町にドイツ軍が姿をあらわす。15歳の少年とその家族はゲットーへ移送され、さらにアウシュヴィッツへ……、そして強制収容所での選別、幼児の焼却、公開処…

乾隆帝の幻玉 劉一達

乾隆帝の幻玉 劉一達 老北京骨董異聞 多田麻美訳 中央公論社 2010年 3360円 久しぶりに読み応えのあるエンターテインメント小説でした。中国では連続テレビドラマ化されたそうで、それもうなずけます。 中華民国期の北京は清朝が滅亡し諸外国が侵入していた…

雑草の自然史 藤島弘純

雑草の自然史 藤島弘純 染色体から読み解く雑草の秘密 築地書院 2010年 2520円 田んぼの雑草であるキツネノボタンやツユクサ。日本全国どこにでも見られるけれど、決して単一な種類ではありません。染色体の核型を地域ごとに調査すると、その多様性に驚かさ…

生きるって人とつながることだ! 福島智

生きるって人とつながることだ! 福島智 全盲ろうの東大教授・福島 智の手触り人生 素朴社 2010年 1600円 以前に読んだオリバー・サックスの 『手話の世界へ』 は感銘深い本でした。原題は『Seeing Voice』。でもその手話が見えないときにはどうするのでしょ…

物理の散歩道 ロゲルギスト

・・・・・ただいま・・・・・ 長い間家出をしていて、そっと戻ってきたような、ちょっと後ろめたいような気分です。 この二ヶ月間、考えるところあって自分の生活を見直そうと無駄な努力をしたり、頭の中がとっ散らかっていました。そろそろ一周忌で納骨も…

私の家では何も起こらない 恩田陸

私の家では何も起こらない 恩田陸 メディアファクトリー 2010年 1300円 丘の上の小さなおうちの横にある一本のリンゴの木のたたずまいは、ゴールズワージーの『林檎の樹』ではなくて、デュ・モーリアの『林檎の木』のほうでした。でも、陰惨な事件ばかりが起…

南の子供が夜いくところ  恒川光太郎

南の子供が夜いくところ 恒川光太郎 角川書店 2010年 1400円 どこかにあるような、それでいてどこにもないような、無国籍の南の島トロンバス(地図あり!)。たくさんの言い伝えと、素朴な呪術が今も生きる島に暮らす人々の連作短編です。海の神話もまた島の…

カラスのおたく拝見! 宮崎学

カラスのおたく拝見! 宮崎学 神樹社 2009年2000円 うちのごく近くの木立には数年前からカラスが営巣していました。カラスの糞害には悩まされましたが、春になると抱卵して騒がしく野良猫を追い払い、幼鳥が巣立ちの練習をする姿を楽しみにしていました。で…

シンメトリーの地図帳 マーカス・デュ・ソートイ

シンメトリーの地図帳 マーカス・デュ・ソートイ 冨永 星訳 新潮クレストブックス 2010年 2500円 すっかりご無沙汰しました。年度末が忙しい・・・なんてことはもうないのに、気持ちだけ忙しくていました。こんな真夜中にやっとブログに向かえました。四月か…