壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

交換教授 デイヴィッド・ロッジ

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交換教授 デイヴィッド・ロッジ
高儀進訳 白水Uブックス 1984

「屈辱」というゲームでつとに有名な『交換教授』。1969年、英米のそれぞれの大学で英文学を教える教師が、『交換教授』という制度で互いのポストを交換するという設定です。この二人、最後には妻まで交換するはめになりますが、文化や習慣の違いに戸惑いながらも、しだいに互いの状況に同化し、さらに過剰に反応していくところが実に愉快に描かれています。

イギリス人フィリップ・スワローとアメリカ人モリス・ザップというかけ離れた二人のキャラクターが、全く違う状況に置かれながら根本的に同じような行動をとるという人間観察の面白さ、風刺的に描かれた当時の時代背景(ウーマンリブとか大学紛争とか)、小説の技法に関する試みとか、今まで読んだいわゆる英国のユーモア小説(「コミック・ノヴェル」というらしいのですが)とは一味違うようで、突き抜けて面白いです。

「屈辱」ゲーム(グループで、自分がまだ読んでいない有名な本を一冊づつ各人が挙げ、すでにそれを読んだほかの者一人につき一点獲得するというもの)で、『ハムレット』を読んでいないと主張して高得点を取り、かわりに英文学科の終身在職権を失ったハワード・リングボームの悲喜劇はやっぱり印象的でした。