壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

私の家では何も起こらない 恩田陸

イメージ 1

私の家では何も起こらない 恩田陸
メディアファクトリー 2010年 1300円

丘の上の小さなおうちの横にある一本のリンゴの木のたたずまいは、ゴールズワージーの『林檎の樹』ではなくて、デュ・モーリアの『林檎の木』のほうでした。でも、陰惨な事件ばかりが起きる家なのに、居心地の良い幽霊屋敷みたいで、不思議なんです。

はじめのうちはなんだかよく分からないのに、連作短編を読み進めるにしたがって、この家の来歴がだんだんに明かされ、じわじわと不気味さが増してきます。でも最後から二番目の『俺と彼らと彼女たち』のユーモアに救われ、『私の家へようこそ』のラストはとてもよい締めくくりでした。恩田さんの作品を思わせぶりなんていってごめんなさい。『付記』は「あとがき」というふうに読ませていただきましたので、いらないかな?なんて思いませんから、許してください。