壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

シンメトリーの地図帳 マーカス・デュ・ソートイ

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シンメトリーの地図帳 マーカス・デュ・ソートイ
冨永 星訳 新潮クレストブックス 2010年 2500円

すっかりご無沙汰しました。年度末が忙しい・・・なんてことはもうないのに、気持ちだけ忙しくていました。こんな真夜中にやっとブログに向かえました。四月からは、「読んだら書く」を実行したいと思います。時間がたつと、内容も感動もすっかり忘れています。

マーカス・デュ・ソートイは『素数の音楽』で読者に、素数リーマン予想の関連が理解できたような錯覚を与えてくれました。もちろんリーマン予想を理解するなんていう事は無理に決っているのだけれど、なんとなく親近感が持てたような気がしました。デュ・ソートイは、『シンメトリーの地図帳』を案内にして、今度はシンメトリーの世界(196883次元の空間)に住むモンスターを発見する旅に読者を誘い出そうとしています。

図形の対称性のような身近なシンメトリーを数学的に表すための正確な言葉が群論なのだそうです。新たなシンメトリー群を探求する数学者たちの冒険の旅について行こうにも、群論はあまりに抽象的過ぎて数学の世界では何度も迷子になってしまいました。迷子になっても戻ってこられたのは、数学以外の魅力的な話題、個性的な数学者たちの肖像、そしてデュ・ソートイの自伝が、目印のようにそこここに配置されていたためです。

アルハンブラ宮殿のタイル模様における平面埋め尽くしのパターンとエッシャーの版画、ゴールドベルク変奏曲と蟹行カノン、バックミンスター・フラーとウイルス外殻などの面白い話題と同じく興味深いのは、数学者たちの人間ドラマでした。奇妙で独特な振る舞いは相変わらずですが、『素数の音楽』に登場した数学者たちの方が飛びぬけて奇矯だったように思います。