蘇る「王家の谷」近藤二郎
新日本出版社 2007年 1400円
トリノエジプト展が国内巡回の最後に
静岡県立美術館にやってきたので、ちょっと勉強。死後の再生と復活のための遺体保存としてのミイラ造りの変遷などが簡単に説明されていました。
エジプトの発掘が、宝探しの域を出なかった時代を経て『
エジプト学』として成立した現在、それでも『エジプト熱』は下火にならず、世界のどこかでいつもエジプト展が開催されていますよね。
古代エジプトといっても初期王朝~
古王国時代から
プトレマイオス時代までおよそ三千年という長期にわたるもので、まだまだ新しい発掘と発見があるんですね。発掘の方法もハイテク化し、ミイラも非破壊的にCT撮影するのだとか。
そういえば、昔々(1960年代半ば、たぶん中高生だったころに)上野で開催された『
ツタンカーメン展』に行ったことを思い出しました。ものすごい数の観客が上野公園に行列して、「立ち止まらないで見てください」なんて、理不尽なことをいわれながら見物したものでした。黄金のマスクの青と金の取り合わせだけがとても印象的でした。
今回の
トリノエジプト展では、大きな石像ももちろん迫力がありましたが、テーベ西岸のディール・アル=マディーナという遺跡のものが多く出品されています。ディール・アル=マディーナは王家の谷と王妃の谷を造営する職人たちの町だそうで、その墓の副葬品の中にあった日常品に興味がわきました。(たぶん
中流階級の)男女の木棺の表面や内部に、びっしりと書き込まれた
ヒエログリフや模様は迫力があります。とんちんかんにも、
耳なし芳一を思い出してしまいました。護符や魔よけのような意味合いがあるのでしょうね。