壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

白雪姫には死んでもらう  ネレ・ノイハウス

白雪姫には死んでもらう ネレ・ノイハウス 酒寄進一訳 創元推理文庫 ドイツミステリ、オリヴァー&ピア・シリーズの四作目は、さらに厚くなって文庫本570頁。題名もキャッチ―だが、これは原題Schneewittchen muss sterbenに近い。 11年前の少女連続行方不明…

飛族  村田喜代子

飛族 村田喜代子 文春文庫 電子書籍 『蕨野行』でも『エリザベスの友達』でもそうだったが、村田さんの描く婆さんたちの魅力的なこと! 生死の境を軽々と乗り越えて、身体は動かなくなりつつも、海と空を自由に羽ばたくような精神を持っている。面白くて、わ…

脳はなにを見ているのか   藤田 一郎

脳はなにを見ているのか 藤田 一郎 角川ソフィア文庫 電子書籍 15年ほど前に書かれた本だがわかりやすい(六割引きで安かった)。目で見たものが脳で処理されて、初めて「見えた」と知覚する。カメラに写し取られた映像とは異なり、私たちが「見ている」映像…

百年と一日  柴崎友香

百年と一日 柴崎友香 筑摩書房 電子書籍 不思議なのか、普通なのか、どちらなんだろう・・・という事はやはり不思議なのだろうか、30余りの短編集。すべてのタイトルがとても長い。第一話は「一年一組一番と二組一番は、長雨の夏に渡り廊下のそばの植え込み…

叔母との旅  グレアム・グリーン

叔母との旅 グレアム・グリーン 小倉多加志訳 早川書房 グレアム・グリーン全集22 電子書籍 前回読んだ『ベルリンは晴れているか』からの連想でたどり着いたグレアム・グリーン。前世紀にずいぶん流行ったらしく、全集が出ていた。電子化されていて、気楽に…

ベルリンは晴れているか  深緑野分

ベルリンは晴れているか 深緑野分 ちくま文庫 電子書籍 4国分割統治下のベルリン。ドイツ人の娘17歳のアウグステは、米軍憲兵に突然連行され、ソ連管轄下の警察に連れていかれた。遺体検分させられたのは、アウグステの恩人ともいえる男性だった。歯磨き粉に…

哀惜  アン・クリーヴス

哀惜 アン・クリーヴス ハヤカワ・ミステリ文庫 電子書籍 アン・クリーヴスの新シリーズ第一作。アン・クリーヴスの小説は初読みですが、ドラマ化された作品「ヴェラ・スタンポープ」シリーズを現在視聴中です。荒野の続くノーサンバーランドを舞台にしたド…

薬屋のひとりごと  日向夏

薬屋のひとりごと 1/2/3 日向夏 ヒーロー文庫 Kindle unlimited 夜中に目が覚めて、眠れないままテレビを付けた。半分寝ぼけながら見たアニメが面白そうだったので原作を探した。ヒーロー文庫というレーベルを初めて知った。14巻もある人気のライトノベ…

佇む人  筒井康隆

佇む人 リリカル短篇集 筒井康隆 角川文庫 電子書籍 リリカルと銘打っているだけに、筒井毒が薄目な短編が20。奇妙な設定の中で情感があふれる表題作の「佇む人」、「母子像」は、切ないまでの家族愛を描いている。数十年ぶりに読み返してみると、より一層胸…

みちくさ道中  木内昇

みちくさ道中 木内昇 集英社文庫 電子書籍 初のエッセイ集だそうです。身辺雑記の中にも自分の生き方、小説に対する姿勢などが盛り込まれていて、一本筋の通った人柄が感じられました。若い時は超体育系だったとか、どちらかというとオトコマエな感じで、子…

黄金蝶を追って  相川英輔

黄金蝶を追って 相川英輔 竹書房文庫 kindle unlimited kindle unlimitedで、初読み作家の短編集。日々の暮らしの中に紛れ込んでくる不思議な事に戸惑ううちにいつの間にかそれを受け入れる。そして、自分が抱えていた心の疵をそっと手放して、癒されていく……

人はどう老いるのか  久坂部洋

人はどう老いるのか 久坂部洋 講談社現代新書 電子書籍 老いの真っただ中にいる私。「上手に楽に老いている人」と「下手に苦しく老いている人」がいるといううたい文句を見て、読んでみました。ざっくりまとめると…… ・老人の場合、身体の重症度と心の幸福度…

火星のオデッセイ/夢の谷  スタンリー・G・ワインボウム

火星のオデッセイ スタンリー・G・ワインボウム 大山優訳 グーテンベルグ21 電子書籍 夢の谷 スタンリイ・G・ワインバウム 奥増夫訳 青空文庫 私的火星シリーズでSFを読んでいます。ワインボウムの二作品は1934年に出版された短編SFです。ワインボウム自身…

深い疵  ネレ・ノイハウス

深い疵 ネレ・ノイハウス 酒寄進一訳 創元推理文庫 ドイツミステリ、オリヴァー&ピア・シリーズの三作目は、文庫本500頁越えの大作です。オリヴァーとピアをはじめ警察のメンバーとは顔なじみになったのですが、相変わらず登場人物の多さとなじみのない人名…

家康、江戸を建てる  門井慶喜

家康、江戸を建てる 門井慶喜 祥伝社 電子書籍 「どうする家康」というドラマを見た。史実に忠実でないという批判があるようだが、どうせフィクションなんだから、史実から乖離していてもいいじゃなの。 ドラマの方は、江戸に国替えをされた家康が利根川の治…

火定 澤田瞳子

火定 澤田瞳子 PHP文芸文庫 電子書籍 天平九年の天然痘流行を描いたパンデミック小説。(コロナ禍で話題になり購入したのに、読み忘れていた。) 施薬院と悲田院を舞台に、疫病の蔓延を食い止めようと力を尽くす人々を中心に描かれている。しかし貧しい民を…

火星年代記  レイ・ブラッドベリ

火星年代記〔新版〕 レイ・ブラッドベリ 小笠原豊樹訳 ハヤカワ文庫SF 電子書籍 私的火星シリーズでSFを読むにあたって、欠かせないのが『火星年代記』です。1950年に出版されていますが、私が読んだのは1960年代でした。中学生の頃か……あまりにも大昔の事な…

明治日本散策  エミール・ギメ

明治日本散策 東京・日光 エミール・ギメ フェリックス・レガメ(挿絵) 岡村嘉子訳 角川ソフィア文庫 Kindle unlimited パリ国立東洋美術館(前身はギメ宗教博物館)の創始者であったエミール・ギメが、明治9年に日本を旅した際の紀行文の新訳が、手に入り…

ヘーゼルの密書  上田早夕里

ヘーゼルの密書 上田早夕里 光文社 電子書籍 著者の上海シリーズは、『夢みる葦笛』の中の「上海フランス租界祁斉路三二〇」、『破滅の王』に続く三作目です。SF的な要素はすっかり消えて、骨太の歴史小説になっています。満州事変、上海事変を経て日中戦争…

帝都一の下宿屋   三木笙子

帝都一の下宿屋 三木笙子 東京創元社 Kindle unlimited 初めての作家の見知らぬ本でしたが、表紙の雰囲気がいいので、読み放題でゲット。 明治時代後期なのだろうか、京橋川沿いの下宿屋〈静修館〉の大家は、年若いのに料理上手で世話好きの梨木桃介だ。桃介…

死体は笑みを招く   ネレ・ノイハウス

死体は笑みを招く ネレ・ノイハウス 酒寄進一訳 創元推理文庫 オリヴァー&ピア・シリーズの二作目。動物園で見つかった切断死体。被害者は高校教師で過激な環境活動家。彼は周囲の大人たちには疎まれていましたが、若者には人気がありました。相変わらず、…

エリザベスの友達  村田喜代子

エリザベスの友達 村田喜代子 新潮文庫 電子書籍 『蕨野行』が衝撃的でしたので、同作家の高齢者小説をもう一冊、続けて読みました。『蕨野行』とはうって変わって、老人ホームに暮らす現代の認知症の老人たちを描いた、ごく普通の小説ですが、やはり感動的…

蕨野行  村田喜代子

蕨野行 村田喜代子 文春文庫 電子書籍 読み終えて呆然とするほどのインパクトがありました。こういうすぐれた作品が電子書籍で読めるようになって、ありがたいことです。姥捨(棄老)伝承を題材にしていますが、倫理的に善悪を問うようなものではありません…

浮世女房洒落日記  木内昇

浮世女房洒落日記 木内昇 中公文庫 電子書籍 江戸の小間物屋のおかみさんが綴ったという日記を通して、庶民の生活が描かれています。四季折々の風物、行事しきたり、祭りなど、貧しいけれど楽しそうな長屋の暮らし。子育ての悩み、亭主への愚痴、近所の付き…

嘘と正典  小川哲

嘘と正典 小川哲 ハヤカワ文庫JA 電子書籍 作者の直木賞受賞作『地図と拳』が面白そうだけれど、まだ高いので、半額になっていた短編集を読んだ。いくつかはSF風ではあるが、それにとどまらない、バラエティのある六つの短編。父との関係を描いた家族小説と…

悪女は自殺しない  ネレ・ノイハウス

悪女は自殺しない ネレ・ノイハウス 酒寄進一訳 創元推理文庫 刑事オリヴァー&ピア・シリーズの第一作。気になっていたドイツミステリですが、読む順番が分からず手を出せないでいた9冊のシリーズでした。日本では第三作『深い疵』から翻訳出版されたために…

老ヴォールの惑星  小川一水

老ヴォールの惑星 小川一水 早川書房 Kindle unlimited 読み放題につられて初読みの作家のSFを読みました。ハードSFなのにわかりやすくて面白く、深みもありました。「ギャルナフカの迷宮」「老ヴォールの惑星」「幸せになる箱庭」「漂った男」の4編です。中…

少年/単独飛行  ロアルド・ダール

少年/単独飛行 ロアルド・ダール 永井淳 訳 早川書房 電子書籍 ロアルド・ダールの自伝を二冊。『少年』は長い間本棚にあったのだが、蔵書処分で手放している。『単独飛行』は未読だった。電子書籍がお手頃価格になっていたので、懐かしさで二冊とも手に入…

海洋プラスチック汚染  中嶋 亮太

海洋プラスチック汚染 中嶋 亮太 岩波科学ライブラリー Kindle unlimited プラスチックによる海洋汚染の問題については、断片的な知識しかなかった。深刻な環境問題だとは聞いていたが、その問題点と解決策について、改めて考えさせられた。著者はJAMSTECの…

キュレーターの殺人  M・W・クレイヴン

キュレーターの殺人 M・W・クレイヴン 東野 さやか訳 ハヤカワ・ミステリ文庫 『ストーンサークルの殺人』『ブラックサマーの殺人』に続く三作目。二本の指が切断された事件が連続三件、前半は犯人の意図も何も分からず、右往左往してどこへ行くのか予想が…