壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

家康、江戸を建てる  門井慶喜

家康、江戸を建てる  門井慶喜

祥伝社  電子書籍

「どうする家康」というドラマを見た。史実に忠実でないという批判があるようだが、どうせフィクションなんだから、史実から乖離していてもいいじゃなの。

ドラマの方は、江戸に国替えをされた家康が利根川の治水に手をつけるあたりだった。江戸をどのように作り替えていくのか、以前から気になっていた本を読んだ。

読み始めて、既視感がある。検索したら、同名のNHKドラマを見たらしいが、ドラマを見た記憶がうっすらある。ずいぶんとソフトな感じの小説で、一冊前に読んだゴリゴリの歴史小説と比べて、歯ごたえがない。……と思ったのだが、読むうちに引き込まれていった。

家康を描くのではなく、家康の大雑把な構想のもとに、現場で汗水たらして働くエンジニアたちの物語だった。五話はそれぞれ、利根川東遷の治水事業を成した伊奈忠次、小判の貨幣事業に取り組んだ橋本庄三郎、江戸に飲み水を供給した大久保藤五郎と内田六次郎、江戸城の石垣積みに挑んだ石切りの吾平たち、江戸城の白一色の天守閣を建造した大工の中井正清たち。

今はない江戸城の白一色の天守閣に込めた家康の思いは、過去への鎮魂と未来への願いだという。なかなか感動的だった。ま、フィクションだと思うけど……。