壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

2007-07-01から1ヶ月間の記事一覧

神は妄想である

神は妄想である -宗教との決別 リチャード・ドーキンスThe God Delusion Richard Dawkins垂水雄二訳 早川書房 2007年 2625円 人はなぜ神という、ありそうもないものを信じるのか? なぜ宗教だけが特別扱いをされるのか? 「私は無神論者である」と公言するこ…

遠い山なみの光

遠い山なみの光 カズオ・イシグロ 小野寺健 訳 ハヤカワepi文庫 2001年 660円 今は英国で暮らす悦子と、ロンドンから帰ってきたニキという娘の会話と、戦後の長崎で暮らしていたころの悦子の回想を唯一の手がかりに、元の絵柄が分からないジグソーパズルのピ…

21世紀の文学(1)現代世界への問い

21世紀の文学 (1) 現代世界への問い 筒井康隆編 岩波書店 2001年 2200円 佐藤亜紀氏の文章を読んでいると、筒井康隆を思い出してしまうので、二つの名前をキーワードに本を探したら、これに行き当りました。全十冊の全集の一冊です。分かり易くかかれた文…

小説のストラテジー

小説のストラテジー 佐藤亜紀 青土社 2006年 1900円 図書館の蔵書になかったのでリクエストを出してみました。図書館で購入するのかと思ったら、県下の遠い公立図書館からのお取り寄せ(相互貸借)でした。他に読む人もいないだろうし、購入に値しないという…

火 マルグリット・ユルスナール ユルスナールセレクション4 より 多田智満子 訳 白水社 2001年 3400円 パイドラーあるいは絶望 アキレウスあるいは嘘偽 パトロクロスあるいは運命 アンティゴネーあるいは撰択 レナあるいは秘密 マグダラのマリアあるいは救…

青の物語

青の物語 マルグリット・ユルスナール ユルスナールセレクション4 より 吉田加南子 訳 白水社 2001年 3400円 作者の死後に出版された唯一のフィクションだそうで、短編集としてのまとまりはあまりありません。 「青の物語」 幻想的な詩のような一編。サファ…

流れる水のように

流れる水のように マルグリット・ユルスナール ユルスナールセレクション4 より 岩崎力 訳 白水社 2001年 3400円 三つの中篇よりなり、読者は何もいえなくなるくらいの作者自身の長い解説が付いています。流れる水のように生きた者たちの物語です。 「姉ア…

東方綺譚

東方綺譚 マルグリット・ユルスナール ユルスナールセレクション4 より 多田智満子訳 白水社 2001年 3400円 ユルスナールのとらえる東方(オリエント)も多くの西洋人のように、バルカン半島からインド、中国、日本まで大まかに括られていますが、地域にま…

奇術師

奇術師 クリストファー・プリースト 古沢嘉通 訳 早川書房 2004年 940円 ビクトリア朝後期、同じような演目で競い合う二人の奇術師、アルフレッド・ボーデンとルパート・エンジャの間には長い確執がありました。百年後、それぞれが残した本と日誌を、曾孫で…

バルザックと小さな中国のお針子

バルザックと小さな中国のお針子 ダイ・シージエ 新島進 訳 早川書房 2002年 1700円 文化大革命のさなか、山奥の村に下放された2人の少年たちは、禁書であった西洋文学と出会います。その物語が少年たちを、そして一人の少女の人生を、変えていきました。 19…

ダーウィンのブラックボックス

ダーウィンのブラックボックス マイケル・J・ベーエ 長野敬 野村尚子訳 青土社 1998年 2800円 シマウマの縞 蝶の模様で言及していた創造論者に歓迎されたという本を読んでみました。筆者は生化学の専門家で、生化学に関する記述は非常に分かりやすく、かつ正…

双生児

双生児 クリストファー・プリースト 古沢嘉通 訳 早川書房 2007年 2500円 周到に準備され細部まで計算の行き届いた構成に、すっかり魅了されました。仕掛けのある本だとの認識を持っていましたのでかなり丁寧に読みましたが、計算された仕掛けのすべてを見通…

1809

1809 佐藤亜紀 文藝春秋 1997年 1714円 ナポレオンによって神聖ローマ帝位を奪われたカール大公は、スペインでの混乱に乗じて反撃に出るのですが、1809年ナポレオン軍はウィーンに再入城し、対岸に陣取ったオーストリア軍を殲滅すべくドナウに橋をかけます。…

寂しい声 西脇順三郎の生涯

寂しい声 西脇順三郎の生涯 工藤美代子 筑摩書房 1994年 2200円 須賀敦子さんの本に読まれてで本書の紹介があり、もう40年も前に、高校の国語の教科書と受験参考書で西脇順三郎の“(覆された宝石)のやうな朝/何人か戸口にて誰かとささやく/それは神の生誕…

巨船ベラス・レトラス

巨船ベラス・レトラス 筒井康隆 文藝春秋 2007年 1200円 佐藤亜紀の作品を読んでいるうちに何故か筒井康隆を連想した。思えば中学時代にSFマガジンで「お紺昇天」を読んで以来「士農工商犬SF」の時代からずっと作品をコンプリートしたがツツイストではなく…

古代ローマの食卓

古代ローマの食卓 パトリック・ファース 目羅公和 訳 東洋書林 2007年 3800円 「ハドリアヌス帝の回想」で、ハドリアヌスは死の床において、“ローマ式の饗宴には嫌悪と倦怠でうんざりしていて、アピキウスが作るような手の込んだ料理は素材の味が失われる”と…

蛇行する川のほとり

蛇行する川のほとり 恩田陸 中公文庫 2004年 590円 久しぶりに書店に行き、素敵な表紙と恩田陸の学園ものということで、つい買ってしまいました。 少女漫画というのは、萩尾望都辺りしか読んだ事がないのですが、ああいう少女漫画の雰囲気を持った作品です。…

アレクシス/とどめの一撃/夢の貨幣

アレクシス/とどめの一撃/夢の貨幣 マルグリット・ユルスナール ユルスナールセレクション 3 岩崎 力 訳 白水社 「アレクシス」 “自らの性向に忠実に生きるため妻に宛てて別れる理由を書き送る書簡体の処女作”なのだけれども、とにかく分かりにくくて、ユ…

雲雀

雲雀 佐藤亜紀 文藝春秋 2004年 1619円 佐藤亜紀三連発。「天使」の前後の話。数日前に「天使」を読んだばかりなのに、登場人物の名前を忘れていて、我ながら驚きます。東欧系の名前になじみが薄いためというより、短期記憶が定着しないということでしょう。…

鏡の影

鏡の影 佐藤亜紀 新潮社 1993年 1500円 宗教改革と農民戦争の時代、ヨハネスは、錬金術師である叔父がもっている、世界を変える秘儀が記述されているという本を見ました。しかしそれは白紙で、以来彼は、“世界を覆す一点”を求めて探求の旅にで出かけます。 …

天使

天使 佐藤亜紀 文藝春秋 2002年 1800円 物語の舞台となる時代や世界の状況が分からなくても、その「感覚」が何なのか説明がなくても、冒頭から物語に引き込まれてしまいました。余分な言葉をそぎ落としたそっけない文章だからこそ、イメージが次々わきあがる…

有機化学美術館へようこそ

有機化学美術館へようこそ 分子の世界の造形とドラマ 佐藤健太郎 技術評論社 2007年 1580円 「有機化学美術館」というHPが本になっていたのを図書館で見つけました。めずらしい化合物のエピソードなど楽しい話題がいっぱいで、よく読んでいたHPでした。…

五瓶劇場―からくり灯篭

五瓶劇場―からくり灯篭 芦辺 拓 原書房 2007年1800円 りぼんさんに紹介いただいて、芦辺 拓を初めて読みました。上方歌舞伎を江戸に持ち込んだ戯作者並木五瓶が作り出す奇想天外な世界。舞台と現実と芝居の構想と妄想が境界無く入り乱れて、江戸戯作者の物語…

シマウマの縞 蝶の模様

シマウマの縞 蝶の模様 エボデボ革命が解き明かす生物デザインの起源 ショーン・B・キャロル Endless Forms Most Beautiful: The New Science of Evo Devo and The Making of the Animal Kingdom Sean B. Carroll 渡辺 政隆/経塚 淳子 訳 光文社 2007年 230…