久しぶりに書店に行き、素敵な表紙と恩田陸の学園ものということで、つい買ってしまいました。
少女漫画というのは、萩尾望都辺りしか読んだ事がないのですが、ああいう少女漫画の雰囲気を持った作品です。主人公は美少年ではなくて美少女たちです。設定された状況やミステリーのトリックはそれほど新鮮なものではありませんが、そのほうがかえっていいのでしょう。あの年頃の少女たちの情感と、少女たちの目を通してみた「蛇行する川のほとり」の情景がみごとに表現されています。
あの夏の封印された過去の記憶の欠片をそれぞれに持ち、それぞれの思いが重なり合って、少しずつ真実が見えはじめるのです。その過程で少女たちは変容していきます。たどり着いた真実もまた一つの真実に過ぎないのかもしれません。でも用意された終章によって、読者は心の安寧を得る事ができます。宙ぶらりんで放り出されるとそればかり気になって、この物語のよさを味わえないかもしれません。
高校の演劇祭で上演されるという、女子高の中庭で起きた事件を題材にした「藪の中」のような劇が出てくるのですが、このイメージは恩田さんのお気に入りなのでしょうね。「中庭の出来事」では三人の女優はよく描けていたように、女性の描きかたの上手な作家です。「木曜組曲」も好きです。