ビクトリア朝後期、同じような演目で競い合う二人の奇術師、アルフレッド・ボーデンとルパート・エンジャの間には長い確執がありました。百年後、それぞれが残した本と日誌を、曾孫であるアンドルーとケイトが読むことになります。
ボーデンとエンジャがそれぞれに描く物語をつき合わせてみると、二人の奇術の方向性が全く違うと同時に、事実は主観的な記述によってゆがめられている事に気がつきます。多くの叙述トリックを含む文章であり、最後まで二人の真実は完全に明かされません。曾孫たちの物語で多くの謎は解決するのですが、奇妙な後味が残ります。