1970年前後の文革による粛清の時代、私たちが中国にいたらどうなっているだろうかと、当時学生仲間で雑談した事を思い出しました。毛語録を振りかざしているのか下放されているのかそれとも虐殺かと、半ば冗談を言いながらも、同世代としてうそ寒い思いをしたものです。
その暗い時代の実体験をもつ作者が、青春時代を軽みと笑いのある語りで表現しています。閉塞した状況で、また悪夢のような重労働の中で、精神の自由をもたらす力を物語が持っているということを感じさせる、いい作品でした。
ところで、この本に出て来るバルザックの「ユルシュール・ミルエ」は、たぶん読んだ事がありません。探してみましょう。ダイ・シージエは現在フランスの映画監督で、この本は映画化されているそうです。いつか見るチャンスがあるといいなと思います。