須賀敦子さんの本に読まれてで本書の紹介があり、もう40年も前に、高校の国語の教科書と受験参考書で西脇順三郎の“(覆された宝石)のやうな朝/何人か戸口にて誰かとささやく/それは神の生誕の日”などの「ギリシャ的抒情詩」という詩を知り、「Ambarvalia」をふくむ詩集を読んだことを思い出しました。
そのころは、日本の詩によくあるウエットなセンチメンタリズムが肌に合わなくて詩には全く興味がなかったのに、西脇順三郎の詩はドライでシュールな感触が心地よかったのですが、西脇順三郎とはどのような詩人なのかというところまで思い至りませんでした。
明治の中ごろに小千谷の実業家の家系に生まれ、語学の才能に恵まれイギリスに留学したときには、現地で英語の詩集も出版したそうです。昭和8年に初めて日本語の詩集「Ambarvalia」を出版した後、14年間も詩作を中止していたそうです。日本的なものから逃れたかった詩人にとってつらい時代だったようです。