壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

双生児

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双生児 クリストファー・プリースト
古沢嘉通 訳 早川書房 2007年 2500円

周到に準備され細部まで計算の行き届いた構成に、すっかり魅了されました。仕掛けのある本だとの認識を持っていましたのでかなり丁寧に読みましたが、計算された仕掛けのすべてを見通す事はできませんでした。また計算が故意に合わないように作られていたり、方程式の解が一つに定まらなかったりするところは、まさにSFの醍醐味です。

世界はどこでねじれてしまったのでしょうか。メビウスの帯クラインの壷の表面をなでていくような感触でこの物語を読みました。いつの間にか別の世界に入り込み、またいつの間にか戻ってくるのです。そういう意味でパラレルワールドが交差するような単純なつくりではありません。でもこの物語は仕掛けがなくても、第二次大戦中に空軍大尉として、また良心的兵役拒否者としてそれぞれに活躍したJL・ソウヤーの名をもつ双生児の青年の物語として充分に面白いのです。

あまりに面白かったので、半日かけて一気に読んでしまいました。プリーストの別の作品を探したら、初期の作品に「逆転世界」がありました。これは名前を知っている作品です。たぶん読んだ事はないので、このへんから読みましょうか、それともやはり「奇術師」かしら。図書館へいかなければ。