「有機化学美術館」というHPが本になっていたのを図書館で見つけました。めずらしい化合物のエピソードなど楽しい話題がいっぱいで、よく読んでいたHPでした。日本名をもつたくさんの化合物がありますが、一番笑えたのが徳島大の研究者が合成命名したシクロアワオドリン。食品添加物としても使われるシクロデキストリンの仲間ですが、立体構造が輪になって阿波踊りをしているようだというのです。たしかに突き出た側鎖が阿波踊りの手足のようにも見えました。
なんの役に立つのか分からないけれど、とにかく面白い形、美しい形をした分子を有機化学者が作ろうとする情熱は芸術の領域に近いようです。イグノーベル賞の有力候補はナノ世界の人間型分子。レゴでいろいろな形を組み立てるように、原子を使って分子の小人に王冠や帽子をかぶせます。
1930年代に書かれた「レンズマン」シリーズに、「純粋に窒素のみからできていて、核に次ぐ威力を持つ爆薬」の話が出てくるそうですが、窒素が蜂の巣状につながったポリ窒素が110万気圧という条件で実際に作られ、核を除く既存の最強爆薬の5倍の威力を持つとか。SF作家の想像力は凄いとありましたが、レンズマンの作者ドク・スミスは化学の博士号を持っていたはず。想像力だけじゃかけないでしょうね。