壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

2007-09-01から1ヶ月間の記事一覧

千年の祈り

千年の祈り イーユン・リー 篠森ゆりこ訳 新潮クレストブックス 2007年 1900円 文革の後期北京に生まれ、大学卒業後に渡米した著者が、英語で書いたという短編集です。短文の、ポキポキと折れるような硬い文章がリズミカルに続く不思議な味わいでした。 『あ…

本泥棒

本泥棒 マークース・ズーサック 入江真佐子訳 早川書房 2007年 2200円 たまには新刊本を読もうと、「本」や「図書」に関連する作品を読み始めて四冊目に“当り”が出たみたいです。 語り手は死神、ナチス政権下のミュンヘンに近い小さな町モルキングに暮らす少…

ケプラーの憂鬱

ケプラーの憂鬱 ジョン・バンヴィル 高橋和久/小熊玲子訳 工作舎 1991年 2500円 17世紀の天才天文学者、ヨハネス・ケプラーの伝記的小説のようなのですが、バンヴィルは自在に時間を遡行して読者を惑わせます。ひねりにひねった叙述形式が訳者によるあとが…

図書館の誕生 古代オリエントからローマへ

図書館の誕生 古代オリエントからローマへ L・カッソン 新海邦治訳 刀水書房 刀水歴史全書76 2007年2300円 図書館の興亡や読書の歴史に引き続き、図書の歴史に関する本を見つけました。メソポタミアからエジプト、ギリシャ、ローマ、ビザンチンまで、紀元前…

災いの古書

災いの古書 ジョン・ダニング 横山啓明訳 ハヤカワ・ミステリー文庫 2007年 900円 古本や古書をキーワードにして新刊本を探していたら、こんな面白いミステリーに行き当りました。元警官の古書店主クリフ・ジェーンウェイのシリーズ第四作だそうです。ちょっ…

黄砂の科学

黄砂の科学 甲斐憲次 気象ブックス018 成山堂書店 2007年 1600円 黄砂の季節ではありませんが、今年の春に黄砂がひどいというニュースを聞いて気になっていました。この本によれば、西暦2000年を境に黄砂が増加し、東アジアでの大規模な黄砂発生は社会問題と…

古本暮らし

古本暮らし 荻原魚雷 晶文社 2007年 1700円 先日、所用で神田に出かけた折、本当に久しぶりに神保町の古書店を少し覗いてみました。本はもう買わないといちおう決めているので見るだけです。帰宅して図書館でこの本を見つけてなんとなく借りてしまいました。…

解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯

解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯 ウェンディ・ムーア 矢野真千子訳 河出書房新社 2007年 2200円 久しぶりに、手放しに面白いといえるノンフィクションを読みました。近代外科医学の先駆者であるジョン・ハンターの奇想天外な人生を描いた作品です。煩雑…

ボッシュの子

ボッシュの子 ナチス・ドイツ兵とフランス人との間に生まれて ジョジアーヌ・クリュゲール 小沢君江訳 祥伝社 2007年 1300円 第二次大戦中フランスを占領したドイツ軍兵士と、フランスの女性とあいだの「戦争の落とし子」たちは、戦後60年を経てやっと父親探…

海に帰る日

海に帰る日 ジョン・バンヴィル 村松繁 新潮クレストブックス 2007年 1900円 妻アンナを亡くして間もない美術史家のマックス・モーデンは、子どもの頃に住んでいた、海岸近くの下宿屋に滞在しています。そこは、かつて親しくしていたグレース一家との思い出…

掠奪美術館

掠奪美術館 佐藤亜紀 平凡社 1995年 1、アーニョロ・ブロンツィーノ「時と愛の寓意」 2、ジャック=ルイ・ダヴィッド「ナポレオンの戴冠」 3、ジャンバティスタ・ティエポロ「アントニウスとクレオパトラの出会い」 4、ロレンツォ・ロツト「書斎の男」 5、パ…

いつか王子駅で

いつか王子駅で 堀江敏幸 新潮社 2001年 1300円 年に数回、京浜東北線で通り過ぎる王子駅は、飛鳥山の緑が目の前にあって、新幹線も首都高もすぐそこを走っているのに、なぜか周りに見える景色は未だに昭和のものです。通り過ぎるたびに、いつかこの駅で降り…

熊の敷石

熊の敷石 堀江敏幸 講談社 2001年 1400円 白水社のユルスナールコレクションの解説をしていた堀江敏幸氏は、難解な解説だったので、文芸評論家だとばかり思い込んでいたのですが、フランス文学者で、かつ芥川賞作家だったことをようやく知りました。図書館で…

剣闘士スパルタクス

剣闘士スパルタクス 佐藤賢一 中公文庫 2007年 743円 15歳でトラキアから奴隷として連れてこられ、養成所で剣闘士に仕立て上げられたスパルタクスは、持ち前の美貌と群を抜いた実力で人気ナンバーワンでした。しかし、女パトロンに呼び出され、意に反すれば…

す-そ

す 酔郷譚 倉橋由美子 彗星の核へ グレゴリイ ベンフォード , デイヴィッド ブリン 水晶内制度, 笙野頼子 数学で犯罪を解決する キース・デブリン, ゲーリー・ローデン 数式に憑かれたインドの数学者(上・下) デイヴィッド・レヴィッド スカイラー通り19番…

た-ち

た 退屈姫君これでおしまい 米村圭伍 退屈姫君恋に燃える 米村圭伍 退屈姫君海を渡る 米村圭伍 退屈姫君伝 米村圭伍 大腸菌―進化のカギを握るミクロな生命体 カール・ジンマー タイムスリップ・コンビナート, 笙野頼子 ダ・ヴィンチ・コード ダン・ブラウン …

つ-と

つ 追憶のハルマゲドン カート・ヴォネガット 追伸 真保裕一 追想五断章 米澤穂信 痛快化学史 A・グリーンバーグ 通訳 ディエゴ・マラーニ 通訳/インタープリター スキ・キム 通訳ダニエル・シュタイン リュドミラ・ウリツカヤ 月が昇るとき グラディス・…

ローマ人の物語6,7 勝者の混迷 上下

ローマ人の物語6,7 勝者の混迷 上下 塩野七生 新潮文庫 2002年 マケドニアとカルタゴを滅ぼし地中海の覇者となったローマが、外部の敵を失ったために国内の統一に欠け、いわば内臓の疾患を病んだ時代です。 第一章 グラックス兄弟の時代 (紀元前133年~前12…

モンティニーの狼男爵

モンティニーの狼男爵 佐藤亜紀 朝日新聞社 1995年 1600円 モンティニーの若き男爵は、たった一人の身寄りである叔父の薦めで奥方を迎えたのですが、いってみれば持参金目当ての政略結婚。でも男爵は、この奥方を心から愛してしまったのです。この奥方が美貌…

移民たち

移民たち 四つの長い物語 W・G・ゼーバルト 鈴木仁子訳 白水社 ゼーバルト・コレクション 2005年 2200円 「土星の輪」と比べると、ずっと読みやすい作品でした。これを先に読んでいたら、ドキュメンタリーのように思ってしまったかもしれません。しかし、「…

ブルータスの心臓

ブルータスの心臓 東野圭吾 光文社文庫 1993年 571円 三人の男たちの、あまりにも身勝手な犯行計画が頓挫したその裏に、さらに別の計画があるらしい。犯人が犯人を追う趣向が面白い。ブルータスは産業用ロボットの名前。最後はやはり「ブルータス、おまえも…

ヒューマン・ステイン

ヒューマン・ステイン フィリップ・ロス 上岡伸雄訳 集英社 2004年 2200円 71歳のユダヤ系アメリカ人コールマン・シルクは、学部長として辣腕をふるい、また教室で古典学を教えていました。ところが、黒人学生に対して人種差別発言を行ったと非難されて、大学…

系統樹思考の世界 すべてはツリーとともに

系統樹思考の世界 すべてはツリーとともに 三中信宏 講談社現代新書 2006年 780円 系統樹という考え方は、なにも生物の世界に限った事ではない。言語も、古写本も、暖簾を分ける蕎麦屋も、時間と共に変化していくすべてのものが、系統樹の対象になるのだ。で…

バーチウッド

バーチウッド ジョン・バンヴィル 佐藤 亜紀; 岡崎 淳子訳 ハヤカワepi ブック 2007年 1800円 まずは、佐藤亜紀氏の翻訳ということで読み始めました。語句の選択が佐藤さん独特のものなのに、“記述の運動”のリズムが佐藤さんのものではないので、初めちょっ…

ローマ人の物語3,4,5 ハンニバル戦記 上中下

ローマ人の物語3,4,5 ハンニバル戦記 上中下 塩野七生 新潮文庫2002年 全編戦争の場面でしたが、ハンニバルとスキピオという二人の名将の話が面白くて、一気に読んでしまいました。以下あらすじ。 第一章 第一次ポエニ戦役(紀元前264年~前241年) シラクサ…