壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

モンティニーの狼男爵

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モンティニーの狼男爵 佐藤亜紀
朝日新聞社 1995年 1600円

モンティニーの若き男爵は、たった一人の身寄りである叔父の薦めで奥方を迎えたのですが、いってみれば持参金目当ての政略結婚。でも男爵は、この奥方を心から愛してしまったのです。この奥方が美貌のジゴロに心を奪われてしまい、男爵は嫉妬のあまり狼になってしまいます。

読み終わって、もう一度冒頭の場面に戻ってみると、なるほどね~。佐藤さんの作品の中では、最も分かりやすくて、笑いがあるのではないでしょうか。狼に変身しているはずなのに、正体がばれているあたりの笑いのツボは、いいな~。

フランスの極上の滑稽譚にも似て、佐藤さんの筆運びは軽妙洒脱。狼狩りの腕前だけが秀でた、ちょっと情けない男爵に肩入れして、奥方となんとか縁りを戻してほしいと、ハラハラドキドキでした。その他の登場人物もなかなかの存在感で、とっても魅力的です。