壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

熊の敷石

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熊の敷石 堀江敏幸
講談社 2001年 1400円

白水社ユルスナールコレクションの解説をしていた堀江敏幸氏は、難解な解説だったので、文芸評論家だとばかり思い込んでいたのですが、フランス文学者で、かつ芥川賞作家だったことをようやく知りました。図書館で二冊借りてきましたが、ゼーバルト「移民たち」の解説もしていることから、ユダヤ人関連のテーマを扱った2000年受賞作「熊の敷石」を手始めに読みました。

表題の「熊の敷石」は、フランスで出会ったという写真家ヤンとの交流を描いた、紀行文のようなエッセイのような小説で、昔こういう”芥川賞受賞作”を読んだ気がする、というような作品です。

ヤンのユダヤ系という出自に、必要以上のこだわりというか遠慮のようなものを抱いてしまう様子がなんとなく語られるのです。文章は美しいし、モン・サン・ミシェルの風景はとても印象的です。プリモ・レーヴィが飛び降り自殺を図った話が出てきて、読もうと思っていた本を思い出しました。

その他 亡き友人の妹との交流を描いた「砂売りが通る」、ノルマンディーの「城址にて」。

淡々と美しい文章は嫌いじゃないし、あっさりとした読後感は心地よいですが、あらすじも感想もどう書いていいものやら。私にとっては、読書感想文が全く書けないタイプの本です。