第二次大戦中フランスを占領したドイツ軍兵士と、フランスの女性とあいだの「戦争の落とし子」たちは、戦後60年を経てやっと父親探しができるようになったそうです。60年というあまりにも長いあいだ、偏見の中で両親の罪を背負うようにして、ひっそりと暮さなければならなかったというのは、とても驚きでした。
この作品は、その当事者の自伝です。フランスの片田舎で育った貧しい少女は「ボッシュの子」として、心無い差別を受けて育ちました。そのころの様子が素朴な言葉で語られていて、つらい生活の様子が素直に伝わってきます。
子供が生まれ、息子の名前をKで始まる「カール」(ドイツ風の名前)にしたころから、著者が積極的に社会に出て行く様子がうかがえました。母親となったことが、この女性の人生の転機だったようでした。探し出した父親はすでに亡くなっていましたが、ドイツにいた義理の兄弟たちとの交流に心の安らぎを見出しました。
「戦争の落とし子」たちの問題は、戦争がある限り、どの時代にもどの場所にも存在すること。そしてまず苦しむのは、子供たちです