たまには新刊本を読もうと、「本」や「図書」に関連する作品を読み始めて四冊目に“当り”が出たみたいです。
語り手は死神、ナチス政権下のミュンヘンに近い小さな町モルキングに暮らす少女リーゼルの物語です。養子に出される旅の途中で幼い弟を亡くし、字を読むことを知らなかった少女は、盗んだ本を読みながら言葉を覚えていきます。
養父母や隣の少年ルディ、ユダヤ人の青年マックスたちのと交流を通し、何故かあたたかい死神の眼差しに見守られて、戦争の混乱と極貧の中でも明るく生き生きと毎日を送ります。中でも彼女の慰めは本を読むこと。でも本を手に入れるためには盗むという手段しかありませんでした。
墓場から、焚書の焼け残りから、町長夫人の図書室から、そこにあった本を手に取っただけです。しだいに言葉の力を知り、その素晴らしさと恐ろしさの両方を知った少女は、自ら物語を紡ぎはじめました。
語り手の死神は物語に先立って結末を私たちに教えてしまうし、物語を中断するようなメモを入れたりするので、初めのうちは読みにくいのですが、中ほどからは夢中で読みました。マックスの作った本など、ドイツ語と英語の不自然な部分も、読み終えるころには気にならなくなりました。哀しいけれど暖かい余韻の残る本です。