壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

図書館の誕生 古代オリエントからローマへ

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図書館の誕生 古代オリエントからローマへ L・カッソン
新海邦治訳 刀水書房 刀水歴史全書76 2007年2300円

図書館の興亡読書の歴史に引き続き、図書の歴史に関する本を見つけました。メソポタミアからエジプト、ギリシャ、ローマ、ビザンチンまで、紀元前3000年から紀元6世紀まで、図書館がどのように変わっていったかを概観したものです。

第1章 西アジア―粘土板の保管
第2章 ギリシア―書物の収集
第3章 アレクサンドレイアの図書館
第4章 公開図書館の始まり
第5章 ローマ人の蔵書
第6章 皇帝たちの図書館
第7章 ローマ帝国の地方図書館
第8章 巻子本から綴じ本へ
第9章 中世へ

図書館の建築様式や書棚の構造、蔵書の材質や数、閲覧の方法、人々の識字率など、古代の図書館の様子が数少ない資料を基に丹念に再現されています。アッシリアの粘土板の時代から蔵書の盗難と未返却に手を焼いていた有様もうかがえます。

プトレマイオス家の名高いアレキサンドリア図書館の向こうをはって建設されたアッタロス家のペルガモン図書館では、エジプトからのパピルスの供給を止められたため皮革紙が多く使われるようになったとか、ギリシャの熱烈な崇拝者であったスキピオ・アエミリアヌス(小スキピオ)は、彼の父がマケドニアを滅ぼした時に戦利品としたマケドニア王家の図書館を受け継いだとか、面白い話がたくさんありました。

スッラはアテネからアリストテレスの蔵書を持ち帰り、多くの戦利品を獲得した部下のルクルスは莫大な富に任せて豪華な図書館を設立したように、この時代までは個人図書館が主だったようです。皇帝の時代になって初めて公立図書館が建設されました。

ユリウス・カエサルは公立図書館建設を果たせぬまま殺されましたが、歴代の皇帝によって次々と図書館が建設されました。ローマ式図書館では、ギリシャ語作品とラテン語作品のための二つの部屋を持ち、壁一面に壁龕が作られそこに木製の書架が掛けられて、表紙の絵のように巻子本が並べられていたそうです。ハドリアヌス帝がアテネに贈った立派な図書館の平面図も掲載されていました。

後二世紀を境に、巻子本は冊子本に置き換わっていきました。後500年ころにはすでに九割が冊子本になったそうです。巻物よりも持ち運びにも保管にも便利で、録音/録画テープが、ランダムアクセスのCDやDVDになっていくのと同じですね。現在我々が使用している冊子本はこの先どのように変化していくのかしら。