壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

封印の島 ピーター・ディキンスン

封印の島 ピーター・ディキンスン 井伊順彦訳 論創海外ミステリ 2006年 2000円 こちらの「封印の島」を読んでいるときに見つけた本ですが、たまたま邦訳の題名が同じというだけで何の関係もありません。でもせっかくなので読みました。ピーター・ディキンス…

孕むことば 鴻巣友季子

孕むことば 鴻巣友季子 マガジンハウス 2008年 1500円 とても面白く読みました。40歳で子どもを孕み出産した翻訳家・鴻巣友季子さんが、子育てを縦軸に、文学を横軸にして語ったエッセーです。一歳から四歳までの娘のことばの成長がほほえましく綴られていま…

信じぬものは救われる 香山リカ×菊池誠

信じぬものは救われる 香山リカ×菊池誠 かもがわ出版 2008年 1400円 暑い日が続くので、厚い本は読めそうにありません。薄い本を新刊コーナーで探してみました。「疑似科学入門」の参考図書にあった「超常現象をなぜ信じるのか」という本の著者の菊池聡氏と…

なぜ絵版師に頼まなかったのか 北森鴻

なぜ絵版師に頼まなかったのか 北森鴻 光文社 2008年 1500円 お雇い外国人が登場するらしいということと、「なぜ絵版師に頼まなかったのか」という駄洒落につられて読みました。 天涯孤独で松山出身の葛城冬馬は、明治と同じ年の13歳。ひょんなことから東京…

封印の島 (上下) ヴィクトリア・ヒスロップ

封印の島 (上下) ヴィクトリア・ヒスロップ 中村妙子訳 みすず書房 2008年 2800円、2600円 アレクシスの母ソフィアは、結婚前の生活について夫にも子どもにも語ったことがありませんでした。25歳になったアレクシスは、母の故郷であるクレタ島を訪れ、一族…

ナチの亡霊(上下) ジェームズ・ロリンズ

ナチの亡霊(上下) ジェームズ・ロリンズ 桑田健訳 竹書房 2008年 各2200円 コペンハーゲンの古書店が爆破され、「シグマ」の隊員グレイは謎の暗殺者に命を狙われる。ネパールの僧院で調査していたペインター司令官は謎の奇病に感染して、医師であるリサと…

疑似科学入門 池内了

疑似科学入門 池内了 岩波新書 2008年 700円 新書ですので数時間で読めてしまう、とても読みやすい本です。前書きにあるように、欧米、特に宗教色の強いアメリカには、科学と宗教の対立関係があってマーティン・ガードナーやカール・セーガンをはじめとする…

氷 アンナ・カヴァン

氷 アンナ・カヴァン 山田和子訳 バジリコ 2008年 1800円 「本棚の中の骸骨」で紹介されていた本書は、かつてのサンリオ文庫が、改訳復刊されたものです。40年前にかかれ、25年ぶりに復刊というかなりの年代物ですが、年月による熟成は進行していなくて、瞬…

動物たちの日本史 中村禎里

動物たちの日本史 中村禎里 鳴海社 2008年 2400円 「日本のルイセンコ論争」の著者、科学史家である中村禎里さんはいつの間にか「民俗生物学」者として河童の研究をしていると知って、読んでみたいと思っていたのが「河童の日本史」や「日本人の動物観」だっ…

さよなら渓谷 吉田修一

さよなら渓谷 吉田修一 新潮社 2008年 1470円 どこまでも不幸になるためだけに、私たちは一緒にいなくちゃいけない……。 きっかけは隣家で起こった幼児殺人事件だった。その偶然が、どこにでもいそうな若夫婦が抱えるとてつもない秘密を暴き出す。取材に訪れ…

数学で犯罪を解決する キース・デブリン, ゲーリー・ローデン

数学で犯罪を解決する キース・デブリン, ゲーリー・ローデン 山形浩生, 守岡桜 訳 ダイアモンド社 2008年 1900円 ホームズの時代から犯罪を解決するには化学は欠かせませんでした。DNA分析や薬物の特定など、証拠の品いわゆる「ブツ」を調べるための現代科…

またの名をグレイス (上下) マーガレット・アトウッド

またの名をグレイス(上)(下) マーガレット・アトウッド 佐藤アヤ子訳 岩波書店 2008年 各2800円 図書館で上巻しか借りられなかったのは、岩波書店のせいでした(下巻は二ヶ月も遅れて刊行)。何とか下巻も確保できて読み始めました。 1843年にカナダ…

ナイフ投げ師 スティーヴン・ミルハウザー

ナイフ投げ師 スティーヴン・ミルハウザー 柴田元幸訳 白水社 2008年 2000円 まず『ナイフ投げ師』、これが凄い。気が付かずに幻想世界へ引き込まれ、わくわくドキドキなんてものではなくて、読みながら息苦しくなるほどです。この物語の町で、ナイフ投げの…

ぼくのミステリな日常 若竹七海

ぼくのミステリな日常 若竹七海 東京創元社 1991年 1750年 べるさんに教えていただいた、若竹七海デビュー作です。短編連作にして、枠物語の構造を持つ凝った造りに、すっかりほれ込んでしまいました。 建設コンサルタント会社のOL若竹七海は、社命により月…

怖い絵2 中野京子

怖い絵2 中野京子 朝日出版社 2008年 1800円 「怖い絵」続編です。怖い絵に隠されたもっと怖くて面白い事実。描かれた小道具一つ一つの意味を知り、まじまじと絵を眺め、ネットで検索して、何倍も楽しめました。 例えばレンブラントの『テュルプ博士の解剖学…

ウォンドルズ・パーヴァの謎 グラディス・ミッチェル

ウォンドルズ・パーヴァの謎 グラディス・ミッチェル 清野泉訳 河出書房新社 (KAWADE MYSTERY) 2008年 2310円 ミセス・ブラッドリーシリーズとしては、二作目。1927年に書かれたものです。 イギリスの田舎では、今日も殺人が起きています。屋敷の主人ルパー…

ポドロ島 L.P.ハートリー

ポドロ島 L.P.ハートリー 今本渉訳 河出書房新社 (KAWADE MYSTERY) 2008年 2310円 レスリー・ポールズ・ハートリー(1895-1972)はイギリスの怪奇幻想小説家。短編は個々に邦訳されているけれど、短編集が単行本として出たのは本邦初のようです。ミステリー…

サウスバウンド 奥田英朗

サウスバウンド 奥田英朗 角川書店 2005年 1700円 小学生の男の子の視点からの語りですが、現代の大人のためのお伽話です。わくわくする楽しい話の結末は、全開のハッピー・エンドではないにしても、南の海への旅立ちは、いつもユートピアへの予感です。平成…

なつかしい本の記憶 岩波少年文庫の50年

なつかしい本の記憶 岩波少年文庫の50年 岩波書店編集部編 岩波少年文庫別冊 2000年 640円 この文庫を最近何冊か読むチャンスがあり、文庫の全貌を調べていたところこの本の存在を知りました。先ごろ101歳でなくなられた翻訳家の石井桃子さんは、岩波少年文…

若い兵士のとき ハンス・ペーター・リヒター

若い兵士のとき ハンス・ペーター・リヒター 上田 真而子訳 岩波少年文庫 1995年 700円 「あのころはフリードリヒがいた」と「ぼくたちもそこにいた」に続く第三部完結編です。でも語り手が同一の「ぼく」かどうかは、今回もはっきりはしません。 空襲が激し…

ぼくたちもそこにいた ハンス・ペーター・リヒター

ぼくたちもそこにいた ハンス・ペーター・リヒター 上田 真而子訳 岩波少年文庫 1995年 700円 「あのころはフリードリヒがいた」の続編にあたります。「フリードリヒ」では1925年から1942年までが、本編では1933年から1943年までが描かれています。ですから…

ワトスンの選択 グラディス・ミッチェル

ワトスンの選択 グラディス・ミッチェル 佐久間野百合訳 長崎書店 2008年 2200円 TVドラマとして日本に紹介されたブラッドリー夫人シリーズをまったく知りませんでした。グラディス・ミッチェル(190l-1983)は英国の作家で、クリスティーと比較されるけれ…