壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

ぼくのミステリな日常 若竹七海

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ぼくのミステリな日常 若竹七海
東京創元社 1991年 1750年

べるさんに教えていただいた、若竹七海デビュー作です。短編連作にして、枠物語の構造を持つ凝った造りに、すっかりほれ込んでしまいました。

建設コンサルタント会社のOL若竹七海は、社命により月間社内報の編集を任されました。予算内でおさめるために、文芸部時代の先輩の知り合いという匿名作家に短編を毎月依頼することになりました。

四月 桜嫌い/五月 鬼/六月 あっという間に/七月 箱の虫/八月 消滅する希望/九月 吉祥果夢/十月 ラビット・ダンス・イン・オータム/十一月 写し絵の景色/十二月 内気なクリスマス・ケーキ/一月 お正月探偵/二月 バレンタイン・バレンタイン/三月 吉凶春神籤

匿名作家の12の短編小説は、語り手は「ぼく」ですが、本格風、ホラー風、学園物風、コージー風など様々な形式でなかなか凝っています。

どこかにヒントはないかと、掲載されている毎月の「社内報の目次」を穴の開くほど見つめたのに、毎度のことながら叙述トリックにはすべて引っ掛かりました。

この短編小説をくくる枠として、何通かの手紙と若竹編集長の「編集後記」があって、全体をまとめるエピソードが浮かび上がってきます。そして最後の最後まで気が抜けないのです。ナルホド巧いなぁと感心して、短編部分を拾い読みしなおして、○○という名まえは私も気が付いていたんだけれどなぁと悦に入ったり、もう一度楽しみました。

ここで出てくる夏見って「死んでも治らない」に出てきましたよね。若竹さんの作品は、どれもがなんとなくゆるくつながっているようです。ということは、もっと読まなければ!