壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

さよなら渓谷 吉田修一

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さよなら渓谷 吉田修一
新潮社 2008年 1470円
どこまでも不幸になるためだけに、私たちは一緒にいなくちゃいけない……。
きっかけは隣家で起こった幼児殺人事件だった。その偶然が、どこにでもいそうな若夫婦が抱えるとてつもない秘密を暴き出す。取材に訪れた記者が探り当てた、15年前の“ある事件”。長い歳月を経て、“被害者”と“加害者”を結びつけた残酷すぎる真実とは――。『悪人』を超える純度で、人の心に潜む「業」に迫った長編小説。___新潮社
吉田修一さんの作品を読むのは初めてです。なぜだか予約してあった本が来ました。たぶん「悪人」がとても面白いという評判を聞いて、どうも新しい本を読もうと思ったらしいのです(このごろ自分の行動に自信が持てない)。

舞台となるさびれかけた市営住宅と近くの自然の残る渓谷との対比、若い夫婦の微妙な関係を描写する筆の確かさに引きずられ、あっという間に最後まで一気に読んでしまいました。

若い夫婦(名前忘れました。本も手元にないので)の関係はかなり早い段階で察しがつくのですが、そのあとの息詰まるような人間関係に物語の重点があります。二人の生活に対する好ましさと、こういった犯罪に対する嫌悪感とがないまぜになって読後感はかなり複雑なのですが、読み応えのあることは確かです。