壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

封印の島 (上下) ヴィクトリア・ヒスロップ

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封印の島 (上下) ヴィクトリア・ヒスロップ
中村妙子訳 みすず書房 2008年 2800円、2600円

アレクシスの母ソフィアは、結婚前の生活について夫にも子どもにも語ったことがありませんでした。25歳になったアレクシスは、母の故郷であるクレタ島を訪れ、一族の物語を知ることになりました。

クレタ島の東部にある小島スピナロンガには、1957年までハンセン病のコロニーがありました。ソフィアの祖母エレニはこの島で生涯を閉じたのでした。エレニの残された娘アンナとマリアは、それぞれの運命を生きてゆきます。第二次世界大戦を挟んだ時代、クレタ島に生きた三代の女性の物語です。

アンナとマリアの姉妹の物語はロマンス小説のようで、アンナは悪女として、マリアは聖女として、型にはまりすぎてちょっとありきたりだけど、ドラマチックなのでつい引き込まれてしまいました。

スピナロンガのコロニーの話は一部ドキュメントでもあり、この本のメインテーマといえるでしょう。差別され棄てられて悲惨な生活を強いられていた患者たちが、よい指導者を得て前向きに自分たちの生活を改善していく力強い物語になっています。

開発された化学療法剤によって多くの患者が治癒し、戦後速やかにコロニーが閉鎖されたスピナロンガは、今は観光地になっているそうです。日本では1996年にやっとらい予防法が廃止されたのとは大きく異なります。

現在のスピナロンガ ( Wikipedia )
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