空襲が激しくなったころ、「ぼく」は軍隊に志願し、新兵として訓練を受けます。上官からのひどいしごきに耐え、前線で負傷して左手を失います。除隊かと思ったら士官学校に入れられて、19歳の若き少尉として部隊を率いてフランスに駐留し、敗走しながら二十歳の誕生日を迎えることになりました。
この第三部は物語の形式をほぼ失い、短いエピソードで断片的に綴られるものになっています。固有名詞もほとんどありません。悲哀と滑稽がないまぜに語られる戦場の光景は、この戦争に限らない、どの戦場にもありそうなもので、こんなことのために戦わなければならない戦争とはいったいなんだろうと、ひたすらむなしく感じられます。この三部作を最後に、戦時中の話を一切書かなくなったという著者の痛みが感じられます。児童書にはなっていますが、大人向きの風合いです。