壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

封印の島 ピーター・ディキンスン

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封印の島 ピーター・ディキンスン
井伊順彦訳 論創海外ミステリ 2006年 2000円

こちらの「封印の島」を読んでいるときに見つけた本ですが、たまたま邦訳の題名が同じというだけで何の関係もありません。でもせっかくなので読みました。ピーター・ディキンスンは、ミステリだけでなく、SF、ファンタジー、児童文学の著作もあるイギリスの作家で、本書はジェイムズ・ピブル警視シリーズ三作目です。

かつての父の上司であったフランシス卿から呼び出されて、ビブル警視が向かった先は、スコットランドの西にある孤島クラムジー。そこには「永遠の都」設立を目指している教団があった。フランシスは92才で、ノーベル賞を2回受賞した偉大な科学者だった。

ずいぶんと変わった雰囲気のミステリで、ビブル警視のシリーズ物だということを知らなければ、ミステリと言えるかどうかさえわかりません。フランシス卿の著作を盗んだのは誰かということはたいした謎ではなく、フランシス卿がなぜビブルを呼び出したのか、ビブルが子どものころに亡くなった父親との間に何があったのか、という方がメインテーマのようですが、結局のところはっきりとした結論は出ていません。

前半部分は分かりにくい記述が多くてちっとも読み進むことができなかったので途中放棄しようかと思いました。ところが後半になると一転冒険小説となり、教団に拘束されたビブルがフランシス卿と女教団員二人を連れて島から船で脱出するところから面白くなりました。読み終われば妙に印象的な作品ではありました。シリーズ六作品のうち、①②④⑤は翻訳されているが絶版で、本書③はずっとミッシングリンクだったそうです。最終作⑥は未翻訳。イギリスにはホント、個性的なミステリが多いです。