「中庭の出来事」と同時に山本周五郎賞を受賞した作品ということで、一度は読んでみようかと思っていました。図書館での人気は高くいまだに数十人の予約待ちですから、当分読むのをあきらめていましたが、たまたま貸してもらい急いで読みました。
現実は常に妄想と隣り合わせで、境目すらなく奇想天外な世界にスリップしていく様はかなり面白い。三階建ての電車の現れる夜の木屋町のイメージは、ちょうど千となった千尋が迷い込んだ夜の町のようにおどろおどろしく奇怪です。
古本屋の裏手で開かれる妖怪めいた人物たちの宴も、学園祭の狂気じみた騒乱状態も、四十年ほど若かったらもっと楽しめたでしょうね。青春ってなかなかたいへんだったのね。ご苦労様。