壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

アウシュヴィッツは終わらない

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アウシュヴィッツは終わらない―あるイタリア人生存者の考察 プリーモ・レーヴィ
竹山 博英 訳 朝日選書 1980年 1200円

「周期律 元素追想」 を書いたプリーモ・レーヴィの「これが人間か」(原題)の邦訳です。原書は1946年、収容所より帰国してすぐに書かれました。自分の目で見た事実のみを語るという科学者らしい姿勢がつらぬかれています。

1943/12/23 レジスタンス運動に参加しファシスト軍に捕らえられる。
1944/2/24 650人のイタリア系ユダヤ人と共に貨車でポーランドに向けて出発。うち、96人の男と29人の女のみが選別され収容所に入れられた。アウシュヴィッツにて囚人番号174517の入墨を施される。
     
1945/1/11 猩紅熱で伝染病室に隔離。
同年 1/18 夜、ドイツ軍は収容所より撤退した。病人は遺棄される。
同 1/27 ロシア軍到着。同 10/19 帰国。

収容所での約一年間の体験が、非常に冷静に客観的に書かれています。感情を抑えた表現が、極限の状況で人間性を失っていくことの恐怖を伝えています。人間性を失うのは加害者被害者の区別がないこと、人間がどちらの側にも立つ可能性があること、歴史的事実は決してなかった事にはできないということを改めて心に留めておきたいと思います。