壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

水車小屋のネネ  津村記久子

水車小屋のネネ  津村記久子

毎日新聞出版  図書館本

一年間の毎日新聞連載だそうだ。でも、毎日毎日、新聞で読むなんて耐えられない。この先どうなるのだろうと知りたくて、待ちきれなくて、我慢しきれないだろうから。あまりの面白さに二日で読み、真夜中に読み終わって、幸せな気持ちのまま寝入った。

 

理佐(18歳)と律(8歳)の姉妹は、シングルマザーの母とその婚約者にないがしろにされていた。高校を卒業したばかりの理佐は、小学三年になる妹の律を連れて家を出た。理佐は小さな町の蕎麦屋で働きながら、水車小屋で蕎麦粉を挽き、そこに居るネネという名のヨウムの世話をする。

手荷物だけで引っ越してきた姉妹を気遣って、周りの人々は、姉妹の負担にならない程度にそれとなく手助けしてくれる。人と人の間にある距離感が心地よい。姉妹同士だって、思っている事をそっと呑み込んでいる。

1981年から10年毎にエピローグの2021年まで、姉妹の物語が進行していく。40年の長い間に、少しずつ人々の善意の輪が広がっていく。理佐や律たちも、周りの人々へ援助の手を差し伸べるようになる。

ヨウムはとても長生きで40年、この物語に寄り添っている。水車小屋のヨウムのネネは、人間関係の潤滑剤だ。物まねが上手で賢い鳥のおかげで、皆がどんなに救われたか。そして、水車小屋という空間がどんなに心地よい居場所だったか。

 

人間の良心によって支えられている物語で、若者たちの不幸な背景を深追いすることはない。嫌なことはあえて書いていないのだ。私たちは世の中がこんなにうまくいくわけがないと知っているからこそ、人々の良心と善意で出来ている物語を読んで幸せな気分になれる。

 

人気本らしく図書館の予約の列が長かった。早めに返却しようと思ったら、市の全図書館がシステム更新のために休館中だった。リニューアルオープンで、来月から電子書籍をインターネットで借りられるらしい。楽しみ!だけど、どんなコンテンツがあるのか?