田舎のポルシェ 篠田節子
文藝春秋 図書館本
田舎には住んでいるが軽トラをもっていないので、「田舎のポルシェ」の事は知らなかった。『ハヤブサ消防団』でスバル製の軽トラの型式をそう呼ぶのだと聞いた直後に、移動図書館の本棚で本書を見つけた。何かの御縁でしょう。
ホラーやミステリにもSF的不思議さが加味されている小説が篠田さんに多いけれど、本書は軽快なロードノベルが三編。「田舎のポルシェ」で、360キロの米を八王子から岐阜まで運ぶことになった男女。「ボルボ」で北海道旅行に出かけた初老の男二人。「ロケバスアリア」では、コロナで格安の代金となったホールで趣味のオペラを歌おうと、孫の運転でロケバスで出かけたのは介護施設で働く70歳の女性と同じ歳の音楽ディレクター。
車での移動の途中の思いがけない困難 —読者にはユーモラスな出来事― を一緒に乗り越えて、全くの初対面もしくはそれほど親しくない人たちの関係性が変わっていく様子がとても面白かった。