壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

あずかりやさん 大山淳子

あずかりやさん 大山淳子

ポプラ文庫 2015年6月

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商店街の片隅にある元和菓子屋が「あずかりやさん」。年若い店主が1日百円でどんなものでもあずかる。持ち込めるものならどんなものでもOK。ただし期限を過ぎて取りに来ないと、店主の物になってしまう。店主は目が不自由だけれど、記憶力抜群で一度聞いたお客様の声も決して忘れない。穏やかな店主は物だけでなく、お客様の心もあずかってしまうようだ。各編の語り手が毎回ちがって、人物だったり物だったりと、物語の全体像がいっぺんに理解できないところもまた魅力です。

 

『あすかりやさん』 語り手は店の「のれん」だから、店に来る人のことはみんな知っています。小学生の女の子、点字本を作って持ってきてくれる相沢さん、夜中に何やら物騒なものをあずけに来た男、見知らぬ女性に頼まれて鞄をあずけに来た男の子と、盛りだくさんな内容であずかりやさんの謎が膨らんでいきます。

『ミスター・クリスティ』 語り手は高級自転車。高校入学祝に、別れて暮らす父に買ってもらった自転車を、母に内緒にするために預ける高校生の話です。

トロイメライ』 語り手は店のガラスケース。訳ありの封筒を何度もあずけに来るおじいさんや、生まれたばかりの子猫をあずけに来た三毛猫で結構忙しい。さらに50年もオルゴールをあずかることになり…。

『星と王子さま』 この語り手は、ああ、あの時の少女? 持っていた封筒をあずけ、代わりにあずかった本が「星の王子さま」。「たいせつなことは目に見えない」って。

『店主の恋』 『エピローグ』 あの時の子猫は「社長」という名前の白猫になって、物語を語ります。石鹸のにおいのする女の人は一冊の本をあずけます。この本は、あの本?

『ひだりてさん』 語り手は「社長」です。あずかったのは何か丸いコロンとしたもの。ひだりてをあげているのは、これも猫?。骨壺とか盲導犬とかいろいろあずかって、それぞれの物語がそれなりに解決していきます。