壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

風と行く者 上橋菜穂子

風と行く者 上橋菜穂子

守り人シリーズ電子版 2018年11月

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「守り人」の外伝もこれで最後なのだろうか。バルサとジグロの物語は、13歳のバルサ(『流れ行く者』)、15歳のバルサ(『炎路を行く者』)に続く物語だ。サダン・タラム〈風の楽人〉という旅芸人の一団の護衛をするのはこれで二度目。40歳近くになったバルサの今と、ジグロと一緒だった16-17歳頃の回想を交互に行き来しながら、ロタ王国の北部地方にある氏族間の因縁が明らかになってくる。

 

氏族間の争いの経緯に潜む秘密がだんだんに明らかになっていくところはもちろんスリリングで面白いが、それ以上に感慨深いのはバルサのジグロに対する思いである。若いときには見えなかったものがある時ふと見えてくるという話は前作の「15の我には」という詩とつながるものがあり、このシリーズに通底するもう一つの「流れ行く者」としての心情と相まって物語に深みをもたらしているのだと思う。

 

ところで、若いうちに見えなかったものが年を重ねると見えてくるものがありますが、見えなくなるものもたくさんでてきます。細かい事がだんだん面倒になり、できないことが増えてきて大雑把になって、「まあ、いいか」の連続です。一番見えなくなるのは細かい字なので、電子書籍は便利です。紙の本を買ったけれど、字が小さすぎて読めず積読している本が増えました。