壊れかけたメモリーの外部記憶

70代の読書記録です。あとどれくらい本が読めるんだろう…

ぼぎわんが、来る 澤村伊智

ぼぎわんが、来る 澤村伊智

角川ホラー文庫電子書籍

 f:id:retrospectively:20200831171631j:plain

映画をアマプラで居眠りしながら見てよくわからず消化不良となり,原作を読む。第一章の語りは知紗の父である田原秀樹。家族思いのイクメンであるらしいが,実は勘違いパパであることがかすかな違和感として示されている。第二章の語りは知紗の母である田原香奈。サイコホラーの定番として,イクメン秀樹の語ったエピソードは次々にひっくり返されていく。第三章の語りはライターの野崎。比嘉姉妹と一緒に知紗を助けようと行方を追っていく。秀樹も香奈も野崎も心の闇を抱え,そこに“あれ”が忍び寄ってくるのだ。

 映画では“あれ”としか呼ばれなかったものが“ぼぎわん=○○○(欧米か!)”として認知され,伝承の中での位置付けがなされたことで,オカルト初心者としては納得がいった。映画にしても原作にしても,“あれ”の怖さよりも人間の心の闇の怖さのほうが印象的だった。

 魔導符というのをはじめて聞きましたが,怖いよ~。たくさん護符が貼ってあるのも怖いけど,その中に魔導符が混ざっているって,どうしよう。

 映画と原作は多くの違いがあるが,矛盾は感じなかった。テクストと映像のそれぞれに適した表現方法があるのだなと思う。原作を読み終えてもう一度映画を見ました,今度は居眠りせずに。三度楽しめたかな。